第21話 この背中に

温泉では、女の子ふたりで一緒に入っている。

一緒に入ろうと言われたが、拒んだ。


瑠奈はまだ小さいのでともかく、見た目は女子高生のファエトンとは、抵抗がある。

それに、ひとりになりたかった。


ひとりで、温泉に入浴して、疲れを癒す。

誰もいない、貸し切りだ。

でも、油断は禁物・・・


周りを見る。

誰もいない。

深呼吸して、僕は唄った。


「♪酒が飲める、酒が飲めるぞ~」

気持ちがいい。


「こらー、未成年が酒、飲むな」

なんだ?なんだ?


「やあ、透くん、先程ぶり」

ファエトンがそこにいた。


しかも、生まれたままの姿で・・・


「ファエトン、ここは男湯」

「細かい事は気にしなの。男でしょ」

「いえ、細かくないです。それに、周りが気にします」

「誰もいないじゃない」

「これから来ます」

多分・・・


「大丈夫よ」

「なぜ?」

「貸し切ったから」

「それならいい・・・って、よくない。どうやって?」

「フロントの人に、お父さんとお母さんの名前出したら、OKだって」

「瑠奈は?」

「寝てるよ。だから、ふたりきり」

「あっ、そう・・・」

「嫌なの?」

こういう場合は、どう答えたら犯罪にならない。


誰か教えてくれ。


「いつも、お世話になってるから、背中流してあげる」

「いいです」

「流させなさい。わかった?」

「はい」

頷くしかなかった。


「透くん」

「何?」

「殿方なのに、背中、小さいね」

「生まれつきだ」

「でも・・・」

ファエトンは、僕の背中に顔をつけてきた。


「あったかい。これから、この背中に、たくさん背負うんだね。

私はわからないけど、応援してるね・・・」

「ファエトン?」

言いたい事はわかった。


僕は、これからやっていけるのか、不安になる・・・

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