第20話 日光

僕の家は東京都内にある。

で、近場となると関東近郊になる。


ファエトンと瑠奈が、共に指差した場所。

そこは・・・


「ファエトンさん、ここは?」

「日光じゃない。知らないの?」

「お兄ちゃん、無知だから・・・」

そういう意味ではなくて・・・


「年頃の女の子なら、世界一有名なネズミのいるテーマパークとかじゃないの?」

「混雑するでしょ」

「お兄ちゃん、無知だから」

確かに一理ある。でも・・・


「この混雑ぶりはなんだ?」

「この程度、混雑に入らないよ。さあ、行こう」

「どこへ?」

「決まってるじゃない、ねー、利瑠ちゃん」

「うん、お兄ちゃんに教えてあげよう」

「それは・・・」

生唾を飲み込む・・・


『日光江戸村』


確かに渋い。でも、女の子がチョイスするような場所ではないと思う。


「江戸時代の人は、ここに住んでいたんだね」

「住んでませんが、ファエトンさん」

「でも、テレビで見たよ」

「あれは、ドラマであって・・・」

「お兄ちゃん、無知だから・・・」

疲れる、突っ込みは止めておこう。


まあ、せっかくだし僕も楽しむか・・・


京都の映画村はあるのに、近場の江戸村は初めてというのは、

僕だけではあるまい・・・


しかし、悪くないな・・・


役者さんたちが、記念撮影に応じている。

外国人観光客が多いのは、あのふたりと似たような理由だろう。


「ねえ、透くん。宿泊先なんだけど・・・」

「わかってますよ。鬼怒川温泉ですね。予約入れておきました」

「凄い、でもよく取れたね」

「まあね」

両親が取材で何度か訪れて、顔がきくようになったのは、内緒だ・・・


「透くん、ご褒美あげようか?」

「お兄ちゃん、私も・・・」


「いらん」

見当はついた・・・

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