第12話  ホワイトデー

ホワイトデー前日。

家族もファエトンも寝た。


「よーし、チャンスだ」

何がチャンスかわからないが、クッキーを作ることにした。

男子がクッキーを作ってはいけないなどと、文句は言わせない。

こう見ても、女子力は、高いのだ。(多分)


「俺も手伝うよ」

振り返ると、父さんがいた。

「父さん、締め切りはいいのか?」

「ああ、今片付いた。ふたりの方が早い」

父さんの方が、やる気まんまんのようだ。


「母さんに、あげるのか?」

「誰がやるか、あんなババア」

自分の奥さんを、そういっていいのか?


「なら誰にあげるんだ?」

「ファエトンちゃんと、担当の女の子だ」

「母さんはいいのか?」

念を押してみた。


「市販のマシュマロを買っておいた」

間に合わせですか・・・


こうして、男2人で作ることとなった。

これも、父と子の交流なのか?


クッキーの本を見ながら、思考錯誤する。

作り方は・・・


割愛しておく。


翌朝、どうにかさまになったのが出来た。

ホワイトデー当日になった。


クッキーは、紙袋に入れた。

ラッピングの時間はない。


さあ、どうやって渡そう。

ファエトンが起きてきた。

朝食の準備だそうだ。


「透くん、お父さん、お早う」

「お早う、ファエトン早いね」

「お世話になってるからね。家事くらいはしないと・・・」

まだ寝むそうだが、とても楽しそうだ。


早いとこ済まそう。

「ファエトン、これあげる。じゃあ」

ファエトンは、袋を受け取る。


「あっ、クッキー、ホワイトデー?」

「まあ、形はいびつだけど、心だけはこめたから・・・」

「ありがとう。嬉しい」

ファエトンは、感激していた。

大袈裟なものかな・・・


「ファエトンちゃん、お父さんからも・・・」

「お父さん、ありがとう」

ファエトンは泣いていた。


だから、泣くほどの物でもないってば・・・


「それから、ファエトンちゃん、これ母さんに渡しておいてくれ」

もうひとつ、袋を渡した。


「お父さんが、仕事明けで疲れた。少し寝る」

そう言って、寝室に行った。


「なんだ。ちゃんと作っていたんじゃないか」

母さんは、父さんのシャイなところが気にいったらしいが、変わってないようだ。


夫婦円満の秘訣を見た。


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