第9話 初めてのバレンタイン

女の子らしい部屋とは言っても、多少の模様替え。

机とベットとタンスと鏡台。


絨毯とカーテンは「女の子だから」と、両親はピンクにしたが、

ファエトンは、緑系統を希望した。

無地で、柄物は好きでなないようだ。


この辺りは、僕と一致している。


しばらく経ったある日、ファエトンは朝から台所で何かをしていた。

母さんから、いろいろと教わっているようだ。

後ろから見ていると、本当の母娘のようだ。

とても、にこやかだ。


「母さん、締め切りはいいのか?」

「昨日仕上げた」

それだけ言うと、また2人で作り始めている。


僕は、それを横目に学校へと向かう。

瑠奈からは、「鈍感」と、言われた。


僕の高校は、共学。

当たり前だが、男子もいれば、女子もいる。


やけに、騒がしい。

そっか、あの日か・・・


しかし、女子はこの学校の男子には、あまり眼中がないようだ。

心の中で、「お前らが言うな」と悪態をつくが、口にはしない。

徒党を組んだ、女の恐ろしさは、知っている。


当然、収穫はなし。

僕だけでなく、もらった男子はいなかった。

少なくともクラスには・・・


そして、帰宅する。


「ハッピーバレンタイン。はいチョコレート」

ファエトンは、チョコレートを差し出す。

崩れてはいるが、明らかにハートの形をしていた。


やはり、これを作っていたか・・・

僕は、立ちつくしてしまった。

というか、茫然としてしまった。


ファエトンは、ニコニコしている。


「鈍感」

瑠奈の言葉に、ようやく我に帰る。


「ありがとう。フェアトン、すごく嬉しいよ」

「どういたしまして。いつも、ありがとう。大好きだよ」

それだけ言うと去って言った。


すっかり、溶け込んでいるようで、嬉しくなった。

最後の一言がなければ・・・


「ホワイトデー、楽しみにしてるね」、

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