Chapter1 椎名ゆり
椎名ゆりについて
椎名は家は中野にあるのに、電車数駅分の距離を毎日歩いて新宿にある学校まで通っていた。
お気に入りだった帰路は甲州街道を直進して、渋谷区に突入した辺りで適当な角を右折、本町の住宅地を突っ切って自宅へ進むルート。
距離的には近道な部類だが、通学ごときに割く時間と労力を鑑みれば電車使ってない時点で遠回りもいいところだ。
歩くのが好きらしい。歩きながらだと考え事が捗るんだとか。
変わってるっていうか、女子高生の頃からなんとも年寄り臭い感覚の持ち主だった。
ルックスはいいし、真面目そうだからデキる女っぽいけど、要領はあんま良くない。
勉強も運動も大したことなくて、人付き合いも悪い。
クールな印象と言えば聞こえはいいが、どちらかといえばちょっとボーッとしたところのあるヤツだった。
授業はだいたいいつも寝ていて、起きていてもうわのそらだ。
休み時間はいつもイヤホンを付けて音楽を聴いていて、誰かと会話をしたりもしてなかった。
基本的に生真面目だけどどっかズレている&マイペースな性格だから、相手にはどこか不遜で横柄な印象を与える。
切れ長の目はキリリと凛々しい。
けど目付きは悪いし、無愛想なところも相まってやたらと態度が悪く見える。
成績は良くないし、基本的に夜更かしだから遅刻も常習。
おまけに授業もマジメに聞いてないときてる。
だから、教師からの受けもサイアク。
大した悪事も働いていないのに不良扱いだった。
友達もいなかったね。
美人だけど地味だし暗いし、雰囲気怖いし。
ちょっと仲良くなっても、まあ変人だからすぐケンカとかするし。
加えて椎名自身もどっか抜けてて使えないから知り合ってもあんまり仲良くなっていかない。
そんな感じで、見た感じただのダメ子なんだけど、このわかりやすいまでのぐだぐだぶりには実はちゃんとした理由がある。
椎名ゆりは、日常生活の大半がおろそかになってしまうぐらい真剣に、「音楽」のことばかりを考え続けているからだ。
他の誰もが理解できないくらい恒常的に、
他の誰もが真似できないぐらい情熱的に、
椎名ゆりは、大好きな「音楽」のことだけを考え続けて、生きている。
……ん、それって結局はダメ子ってことじゃん。
まあ、そうかも。
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