第11話 インターホンと私(少女)

 インターホンからベルの音が流れる。

 家主が反応するのを待つ間、インターホンのカメラから自分が外れないようにしながら、屋敷の周りを観察することにした。

 屋敷の割には広大な庭は無く、玄関の扉の横に小さなプランターがあるのみだ。プランターには青い葉を持つ植物が植わっていた。つい最近人工的に作られた、「魔除け」の植物だ。大抵の神話に登場するのは天然の植物だが、ある神話では人工の青い葉を魔除けとするらしい。天然の青い葉は熱帯雨林にあるが、この神話に出てくるのは生物学的に青くするのが難しい種類で、長年の研究の末、最近作るのに成功した、とパトロンが言っていた。

 私のパトロンは様々な神話を研究している、銃士さんとの生活を保障してくれる気前のいい人だ。

 少し話し好きすぎるところはあるが。

 植物の植えられた土は乾燥しているわけではなく、適度に湿っている。家主が水を与えているのかもしれないし、ただ雨に打たれただけかもしれない。青い葉の植物だけでは、人がいるかの判断は難しい。

 玄関の扉には小さくツタの装飾が施されており、扉中央にあるライオンのドアノッカーも相まって、重厚な雰囲気をたたえている。少なくとも、狼の息で吹き飛ぶような豚の家ではないし、装飾の繊細さからある程度資金に余裕がある人物が建てたのだとわかる。ほんの少しの装飾でも、線の潰れはなく、逆に機械的に同じ太さで彫ったのでもない、味のある装飾だった。

 庭がないのも、この島にこの屋敷だけしかないとすれば、島全てが庭とも言えるか。

 窓から見えるのは白いカーテンのみで、窓際に花瓶が置かれてはいない。ここでもはやり、人がこの屋敷にいる証拠が見つからない。

 第一、このように分析できるくらい待って何の反応もないのだから人はいないのだろう・・・・・・。

 そう思ったとき、インターホンから声がした。

「お、どうして君がここに?」

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