第10話 島の観光のようなこと(少女)
私の考えが神様のご意向に沿っていたかわかるのに、そう時間はかからなかった。
海から顔を出す木の橋。船着き場があったのだ。船着き場の反対、島側には、若干ではあるが道が開けている気がする。
船着き場は簡易的なものではあったが、最近のものだろう、乗ってもまだ軋む音は立てない。
一見すると看板も何も建てられていないが、柱に所在地が書いてある可能性はないだろうか。海から突き出している丸太たちを入念に調べることにした。
私の街でよく使われている檜の香りがする。色味まではわからないが、私の住んでいる街からそこまで遠くない島なのかもしれない。
泳いで渡る・・・・・・のは、さすがに危険な橋だな。今、橋に立っているだけに。
結局丸太には、見える範囲では何も書いていないことがわかったので、今度は船着き場からまっすぐに島に入っていくことにした。人がいる可能性は随分出てきたと思う。足取りも少しだけ軽く、不安も一旦身を潜めたようだ。
人が通るというより、獣道のようだが一応、草を踏みしめた後はあった。毎日通るほどではなくとも、ここ最近通ったことはある、といった感じか。
木々がさわさわと、鳥がぴいぴいと、音を立てている。途中に赤くて指の幅くらいの木の実も見つけた。赤い木の実をいくつか手に忍ばせながら、歩いて行く。
食べ物を本当にお腹が空くまでとっておくくらいの自制心はあるが、屋敷を見つけた時は思わず駆け寄ってしまった。
手に握っている木の実と同じ、ピンクが混じった柔らかな赤。西洋瓦の一つ一つが木の実のように見えてくる。柱に使われているのは、この島に生えている木の色と似ている。木造の屋敷のようで、どこか温かみがある。この家の主人はこの島が好きなのかもしれない。
屋敷と言っても二階建てでここから見える窓の数は三つほどの、そこまで大きくないものだ。扉のほんの少しの装飾を見るのもほどほどに、ライオンのドアノッカーでこんこんと叩く。扉の横にはカメラ付きのインターホンがあったがドアノックをあえて取り付けているところに風情を感じる。
しかし、人の出てくる気配がない。
私はしかたなく、インターホンも押した。
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