第9話 生きて(少女)

 さざ波がほっぺを触り、まだ寝てるよ、と言おうとしたら喉を焼く海水が入ってきた。

 私は、がばっと起き上がり猛烈にむせた後、しょぼしょぼする目をこする。

 死ぬと思った。でもやっぱり、私は死なないのだ。

 起き上がり、とりあえず波が来ないところまでよたよたと歩いていく。

 どれくらいの時間寝ていたのか、太陽は昇り波が来ない砂浜は温かだ。

 砂浜の向こうにあるのは、整備されていない林。林から奥の方を伺っても、車どころか人っ子一人いない。

 船で起こったことはよく覚えている。銃士さんが私を助けに来てくれたのに、なにかの力で二人揃って海に落とされたのだ。

 私は波の隙間からその「なにか」を見た。今の時代「不格好」とも「構造の美」とも言われるであろう、鉄骨の塊。ロボットが生まれた初期に作られたと絵本で聞いた、昔の形式を踏襲した、ロボットの姿を、確かに見たのだった。

 見た目こそ古いが、使われる技術はよく見る・・・・・・私は理系ではないので、よくはわからない。銃士さんならぴたりと当てられるかもしれないが、そもそも銃士さんの位置ではあれは見えなかったか・・・・・・。


 食べ物があるのは林かと思って木々をかき分けてはいるが、もしここが無人島だとしたら、助かるにはたまたまここを通りかかった船になんとかして気づいて貰うしかなく、島の中心に近づけば近づくほど、船が見えなくなってしまうのではないか。この島に大きな山は、砂浜からみた限りでは、ない。

 方向転換して海の方に向かい直す。しかし、海に食べ物はあるか――。木を割いたものを用意して、魚に指した方が良いのではないだろうか。

 また方向転換する。

 私にどうしろと・・・・・・。

 こみ上げるものを必死に抑え、砂浜をいけるところまで巡ってみることにした。島の広さや作りがわかれば、何かがわかるかもしれない。何か、というのはきっと見つかったときにわかるはずだ。そうに違いない。

 

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