第6話 銃を無くした銃士(銃士)
窓から俺の様子が見えたから、放っておけなかったのだと、メイドは話した。
どれだけお人好しなのだ。
俺に依頼をしてくるような金持ちはむしろ凍える様子を楽しみさえするだろう。
ただ今回助けられたのは事実だ。手首についていた手錠は俺の元を離れメイドの知恵の輪になっている。
知恵の輪で遊んでいる、のか……。
物騒な世の中になったものだ。
銃を持っていれば彼女の命を飛ばすのも「からかさ1本」だ。
持っていないから飛ばさないだけ。
俺から銃を奪った野郎どもに一発ずつ腹に打ち込みたいが、それも出来ない。
銃士に銃がなければただの人間だ。
「今は何を考えてらっしゃるのですか」
メイドは問うた。
「この国の政治のあり方について」
適当に答えすぎて先程わけのわからない受け答えをした気がするが、そこに意識を割いても銃は戻ってこない。
「確かに、私もこの国のあり方については幼い頃から疑問に思っておりました。自動人形のような意志を持つAIが出てきても、頑なに政治の権利を渡そうとしない。人間か自動人形か、という分け方はそもそも間違っていますし、もしどうしても分けたいなら人間より優れていることを認めるべきです」
彼女は力説した。これらの会話は俺の右腕のチップに記録されているだろうから、有事の時に聞き直せば良い。異国の会話を聞くように聞き流す。
「もしご主人様なら、寒空の中あなたのようなか弱きお方を放り出すことは致しません!」
……さらりと貶された気がする。
しかしやはり、今回助けられたのは彼女のおかげである。この窓から俺を見たのか……。雪がふきつけている。どれだけ凝視して窓を眺めていたのだ。目を細くして窓の外を伺う。
唐突に甲板に続くドアが開いた。大きい人影一人が何かを甲板に投げる様子がわかった。大きい人影はすぐにドアを閉める。
幻覚を見ているのだと思った。先程の寒さで目や頭がやられたのかと。
しかしそれは、どこから見ても彼女だった。
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