第3話 銃士さんと私の今後(メイド)
私はほおづえとため息をつきながら、万年筆を滑らせる。
銃士さんはまだ、ハーブティーをすすっている。
銃士さんを投げ捨てた人たちは、甲板にいなくなっているのをもし確認してしまったら、何を考えるだろうか。
一つ、波にさらわれたと思う。
二つ、なんとか手錠を外して船内に隠れたと思う。
三つ、薬を飲んで子供サイズになり、知り合いの博士の家に転がりこんだと思う。
書き出してみると案外まともに思える、か・・・・・・? いや、思えないな。
雪こそごうごうと吹いているが、波自体はほとんどなく、さらわれたとは考えにくい。身投げしたならまだしも。
問題は二つ目の、船内に隠れたと考えられること。これを疑われると、殺人を疑われている人を匿ったとして、私も外に投げられる可能性が出てくる。全裸はごめんだ。
「今時紙を使うなんて、契約書でも書いているのか?」
銃士さんはハーブティーの入っていたカップを置き、横目にこちらを見ている。
「あなたも知っているでしょうに」
そろそろ銃士さんがよくわからない人だということがわかってきたので、大して感情を込めずに返す。銃士さんは懲りない。
「今時、チップを埋め込んでないなんて、大変だな」
チップは、生まれたときに二の腕あたりに埋め込まなければならないという法律がある。生涯を通して行動や感情を記録し、有事の時にそのデータを解析する。これを行うことで、事件の解決やささいなけんかの解決まで、すべて行ってくれる。
私は諸事情がありそのチップが埋め込めない。しかし生きた記録を残したくて、手記を書いている。勿論法的な根拠は何もないので、事件があった時などには使えない。
「あなたも知っているでしょうに」
手記に書き込みながら、私は言った。
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