第7話
「降参だ! なんで俺の事見てんだよ」
「なんでって……」
そう言われてもなぁと暫く考えて、俺は肩を竦めてみせた。
「うーん。お前が気付いてるとは思わなかったんだよ。そこまでジロジロ見てたつもりもないし。でも……なんだろう。松岡を見てるとさ、何かを、思い出しそうになるのかな。それがなんなのかは、俺にも判んない」
「そっかぁ。あれは何かを思い出そうとしてる顔かよ。難しいなぁ、まだまだ修行が足んねぇぜ」
眉を寄せる俺に、友也さんがクスクスと笑う。
「変な所だろう? このサ店は。――ああ、また。更にややこしいのが来た」
ドアの方を見て、友也さんが軽く首を振った。カランと鳴ったドアの方を振り返ると、俺達の学園の制服を着た少女が一人、
「こんにちは。あれ? 今日は依羅さんはいないの?」
キョロキョロと店内を見回して言う。そして俺に気付いた彼女は、目を見開いて微笑みを浮かべた。
「今日は珍しいお客が来てんのね。何? 松岡の友達?」
「だから――。まあ、いいや。そうそう、俺の友達だよ」
説明するのも面倒だと、松岡は等閑に頷いてみせた。
「ふーん。私、
近付いて来た少女が興味深げに俺を見る。肩までの少しクセのある髪を指先でかき上げて、再び人懐っこい微笑みを浮かべた。
「友也さんの妹だよ」
「えっ?」
驚いて見上げた俺に、友也さんがうんざりと頷く。
「恥ずかしながら、このやかましいのが私の妹だよ。名乗るのが遅くなったね。私は
「やかましいとは何よ! 私はお母さんから頼まれて、お兄ちゃんがちゃんと仕事してるか見に来てんじゃない。何かと大変なのよ、兄想いの妹としては」
これ見よがしに腕を組むと、得意げな視線を兄へと向ける。
「営業妨害って言うんだよ、お前の場合は。兄想いを公言するなら、来ないでもらえると有難いんだがね、妹よ」
本当にうんざりといった様子の友也さんに、松岡がケケッと笑う。その松岡の頭をバシリと
ニッコリと微笑みを浮かべ、兄に向かってグイッと身を乗り出す。
「女にそんな冷たい物言いをして。そのうち依羅さんに愛想をつかされましてよ、お兄サマ」
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