第6話
「ジョーダン! 依羅さんがいなかったから、あんくらいで済んだんじゃないか。友也さんだって、俺があーゆう事するって判っててパフェ作ってくれたんだろ」
「……期待に沿えず悪いね。私は、お前があそこまで言うとは思ってなかったよ」
苦笑いを浮かべたマスターに、俺はペコリと頭を下げた。
「すいません、雰囲気悪くしちゃって。――でも俺の方は、松岡のお陰で助かった……のかなぁ?」
首を傾げながら呟くと、松岡は「当然!」と自信満々に笑った。
「でも、依羅さんがいなくて残念だなぁ。あの人ならきっと、もっと面白いやり方してくれんのに」
うっとりとして言う松岡の頭を、マスターがコツンと軽く叩く。
「依羅なら、周りの人間に笑われるような、彼女に恥をかかせる真似はしないよ」
「でも、俺よりもっと精神的なダメージは与えるじゃん。これ以上ないってくらいにさ」
「まあ、否定はしないよ。只、どちらに思いやりがあるかの問題だ」
「――もちろん、俺」
自分の胸を親指で示す松岡に、ヒョイと眉を上げる事だけでマスターは応えた。
「よさみさん?」
「オーナーだよ、この店の。此処は依羅さんと友也さん、二人の店なんだ」
「へぇ。オーナーが二人」
こんな小さな店に? という疑問は声に出さずにおく。そっと見上げた俺を見下ろして、友也さんは見透かすように微笑んだ。
「広くてはいけないし、独りでは駄目なんだ。私達はね。――それにしても、保の友達が偶然入って来るとは思わなかったよ。いつになったら紹介してくれるんだ? 保」
「だから、友達じゃねーって。こいつとしゃべったのは、今日が初めてなんだぜ」
チラリと俺を見た松岡は、「只」と付け加えた。
「こいつ、俺の事よく見てんだよ。それも変な顔して」
「変な顔?」
どういう事? と友也さんが俺を見る。
そんな事言われても、俺だって困る。そもそも変な顔って……。
それに、俺自身まさか松岡に気付かれてるとは思ってもみなかったので、なんと答えていいか判らず曖昧に頷いた。それを見ていた松岡が、隣の席から不満げな声を出す。
「見てんだろ。あの表情は何だろなぁ。怒ってんでもないし、馬鹿にしてんでもない……。かといって好感を持ってる顔でもないし。――ああ、やっぱ駄目だ。依羅さんのように上手くいかねぇ」
両手で頭を抱え込んだ松岡は、ガッと勢いよく上げた顔を俺に向けた。
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