第4話魔法薬
「イサハヤ殿、そして他の英雄の方々よ、感謝する。それでは早速だが、1人につき1本ずつ魔法薬を支給する」
王様は安心した表情で言い、兵士に指示を出した。するとすぐに、控えていたうちの一人が大きな木箱を抱えて持ってくる。
中には小さな木箱がたくさん並べられていた。
気づいたら召喚者たちは諫早を先頭に一列に並ばされている。
いけない、ぼーっとしている隙に抜かされている。
僕は仕方なく最後尾に並び、一番最後に魔法薬を受け取った。
蓋を開けてみると、透き通った緑色の液体が入った試験管っぽい瓶が入っている。
すごいな、思ったより綺麗なガラス製の瓶だ。大きな歪みや偏りも少ない。
木箱の加工も丁寧なことからも、この世界の技術力は想像以上に高いみたいだ。
創作物ではファンタジー世界の文化レベルは大体低く描かれているから、気づかないうちにそのイメージが刷り込まれてしまっていたようだ。
なかなかやるじゃないか、異世界。
コラスル王が瓶を掲げて言う。
「これが件の魔法薬である。身体に害のある物ではないから、安心して飲むが良い。これを服用すると、頭の中に<ステータス詳細>と<適性
なるほど、ステータス画面が頭の中に現れるのか。
どんな原理かは全くわからないけれど、きっと魔法でどうにかしているのだろう。
いや、先程召喚“魔術”って言ってたし、魔法という呼称ではないかもしれない。
でも魔法薬は“魔法”ってついてるし……よく分からないな。
にしても、ステータスに職業《ジョブ》か。ゲームみたいだな。
ジャンルでいうとまんま職業ものの世界観だ。
まさか本当にこんな体験ができるとは夢にも思っていなかった。
何度も夢想はしていたが、いざ現実になるとなかなか興奮するものだ。
むしろこのシチュエーション、オタクでテンション上がらない奴はいないだろう。
「ヒロキ、準備はいいか?」
藍斗はすでにコルク栓を開け、いつでも飲める状態だ。
その呼びかけに頷き、僕も慎重に栓を開ける。甘いような渋いような、なんとも言えない香りが立ち上る。
周りを見ると僕たち以外の召喚者たちも次々と瓶の中身を飲み干している。
僕たちも早く飲まなければ。
「よし、じゃあせーので飲もう」
「オッケー、アイト」
「行くぞ、3……2……1……」
「「せーの!」」
一気に瓶を傾ける。透き通った綺麗な見た目に反し、ひどい味だ。これでもかと言うほど濃厚な青汁に、子供に飲ませるシロップの薬を混ぜたような味。しかもドロッとしていて、舌にまとわりついてくる。
あまりの不快感に脂汗が出てくるが、無理矢理嚥下する。
その瞬間。
頭の中にステータスパネルのようなものが現れた。
説明は難しいが、視界ではなく頭の中に文字が浮かんでいる感覚である。
王様のいう通り<ステータス詳細>と<適性職業一覧>のふたつのタブあり、それを任意で開けるようだ。
本気でワクワクしてきた。
口内の不快感も忘れ、早速<ステータス詳細>の方を開いてみる。
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<ステータス詳細>
来間 博樹(17) ♂ Lv 1
職業 なし
HP 110/110
MP 110/110
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日本語表記で助かった……。
なるほど。防御や攻撃と言った数値ステータスはなく、HPとMPのみの表示か。
まずHPとMPが何を表すのかもわからない。普通に考えればヒットポイントとマジックポイントだが……。
そして110という数値が高いのか低いのかもよくわからない。
とりあえずステータス詳細は置いておくとして、問題は適性職業だ。
さて、僕にはどんな適性があるのだろうか。《剣士》? 《魔術師》? 《武闘家》とかもあるだろうか。
さて、早速<適性職業一覧>を開いてみるとしよう。
==============================
<適正職業一覧>
《遊び人 Lv1》
《農民 Lv2》
《商人 Lv3》
《料理人 Lv33》
==============================
…………………え?
これだけ?
……………………………………まじで?
うっそぉ………………
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