第2話召喚の理由と王の頼み
静まり返る一同。
みんなあっけにとられた表情で謎の王国の国王と名乗った男を見つめる。
しかしざわめきが収まったのは一瞬のことで、次々に口を開き始めた。
「はぁ? 何言ってんのオッサン?」
「トチ狂ってんじゃねえのあいつ?」
「わけわかんないこと言わないでよ!」
「え、撮影だよね?」
「異世界? 何だよそれ!」
その場にいる王様と兵士以外の誰もが困惑している。
「まさかのビンゴみたいだな、ヒロキ……」
「ごめん、正直僕も驚いてる……」
まさか本当に異世界転移だとは……いや、この場合は異世界召喚か?
現実でラノベみたいな展開が起こるなんて、信じられない。
本当に異世界なんてあったんだな……
まあ、あったのだから仕方ない。
とりあえず、セオリーに則るとこれから王様が色々説明するはずだから、しっかり話を聞いておかなければ。
メタい? 知らん。先人の知恵と言ってくれ。
「まず、こちらの都合で召喚してしまったことを謝罪しよう。未だ混乱しているだろうが、どうか私の話を聞いてほしい。この世界とそなたらを召喚した理由に関する重要な話なのでな。
まず、この世界ユグドラに生息している生物は、魔物と呼称されている。我々人類はかつて、奴らを狩り、飼育し、時に使役していた。共に生活を営んでいた。……そう、1000年前までは。
およそ1000年前、突如として異常な力と能力を持つ特異な魔物たちが発生し始めたのだ。それと同時に、それ以外の魔物も次々と凶暴化していった。人類は奴らを狩るどころか、奴らの格好の獲物となり、使役していた魔物も我々に牙を剥いた。もちろん飼育などできるはずもなく、我々は奴らに追い詰められてしまった」
つまり、僕らで言う動物が魔物というわけか。
先ほどまで騒いでいた人たちも、黙って聞いている。しかし、その話に眉をひそめる人が大半だ。
そりゃそうだろう。
「凶暴化した魔物により人類の存続すら危ぶまれ始めた頃、とある科学者が奴らへの対抗策として魔法薬を開発した。科学者は当時生存していた人類全てにそれを投与し、そして投与された者は次々と魔物に対抗できるほどの力をつけ、程なくして侵略された領土の大部分を取り戻した。我々は以前の安寧を勝ち得た、そう思っていた」
コラスル王の話は続く。
「その薬は、人類の性質を変化させるものだった。投与された者は学習能力、身体能力が強化され、またレベルという強化段階を得た。薬の効果は投与した者の子孫にも反映され、レベルアップの恩恵により人類の存続は保証される、はずだった。……しかし、その効果は世代を重ねるごとに弱体化し、レベルアップでの肉体の強化率や学習能力が衰え始めたのだ。我々は再び全人類に投薬を行い、再度強化することを試みた。しかし、その計画は失敗に終わった。その子孫に投薬を行なっても、魔法薬の作用が現れなることはなかったのだ。いまや、魔物とまともに戦えるのは『先祖返り』と呼ばれる一部の者もしくは特殊な訓練を受けた者のみだ。しかし彼らもかつての第1世代ほどの力は持っていない。このままでは我々人類は間違いなく滅亡を迎えることだろう。
我々には新たに力を得られる者が必要だ。しかし、もうこの世界にはそのような者は存在しない。そなたらは、人類を救う英雄として召喚された。非常に身勝手なのは自覚している。しかし、この他に取れる手段がなかったのだ。どうか我々に協力していただけないだろうか!」
そう言って、コラスル王は頭を下げた。
…………何だかすごいことに巻き込まれてしまったようだ。
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