File1 つまらないゲーム
1
「まあ、俺の手に掛かればこんなもんだな」
少年の目前には無数の異形の生き物の亡骸。
「あ、あの……」
「ああ、怪我は無かったか? まったく災難だったな」
少年が振り返るとコトの原因でありその一部始終を見ていた少女がへたり込んでいた。
事態が動き出したのは、少年の死からだった。
彼はボールを追って道路に飛び出した子供を庇い、大型車両にはねられた。それで彼の人生は終わったはずだったのだ。
だが、彼は目を覚ました。しかし、目覚めた場所は彼の知る世界ではなかった。
はねられた道路上でもなく、病院のベッドの上でもない、あたり一面の荒野。
骨折どころかかすり傷一つ無い。
どういうことかと一人ごちに呟いてたとき、少年をさらに混乱させるコトが起きたのだ。
「だ、誰か助けてください~~!」
少年の生きる時代からすると、どうみても時代錯誤且つ、異国情緒溢れる衣装を身に纏った少女が大量の見慣れない『異形』としか言いようの無い、骸骨と皮膚が一体化してるような化け物を引き連れて来たのだ。
このシチュエーションに少年は心当たりがあった。
だから、その先にどうすればいいのか、そして、自分には何が出来るのか感覚的に察した。
「今の俺ならできるッ!」
そう言って少年は少女と異形の間に割って入り八面六臂の俊敏かつ豪快な動きでバッタバッタとなぎ倒し、一匹も動けなくなったところで今に至る――。
……しんどいし、きっつ……。
「まだ始まったばかりですよ。まだ本の一ページ分も埋まっていません。しかも、状況説明が途中投げやりになってますよ」
私の意識は見慣れない荒野から、少し慣れてきた屋敷に神様の部屋に引き戻される。
一体、私は何を見せられていたのか。
一体、この茶番はどこに着地するのか。わからない錨に括りつけられて底の見えない海底に放り込まれるような恐怖があって、ちょっとした拷問体験だった。
「執事長にお茶でも入れてもらって一息つくとしましょうか」
どうして私は『何もしない』をしていないのか。
その原因は少し前に遡る。
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