第2話「マリ・マトン」

俺は旅に出た。

斜め上から妖精も見てくれてる訳だし、別にいっか、イライラするけど……


町から出ると地面は草原から黄土色の砂へ変わっていった。


「は、初めての旅って、な、なんか緊張するよね」

メイベルよ、お前は旅よりこの雰囲気に緊張してそうだな

「無理して話しかけなくていいんじゃね、そこのイケメンだって沈黙じゃねぇか。」

今更思ったけど、客観的に見て俺めっちゃウザいじゃん


イケメン勇者は、爽やかな風を纏いつつ苦笑いしながら無理矢理喋る


「い、いや、そんなのじゃなくて緊張だよ、どう話し合ったら旅を楽しく出来るかとか初心者勇者の僕には分からなくて、ギクシャクしそうだし、こんな僕で本当にごめん」

えー、めっちゃいい奴じゃん、だが、その行き過ぎた良さが俺にとっては良いを通り越してウザく感じて来る。


こちらこそ、こんな雰囲気を和ませるのも仲間である私の役目の一環でもあるのに。


そう言いながらメイベルは馬原をチラッと睨み残念そうに長く瞬きをする。


「いえいえ、そんな」

勇者はまた爽やかな風を纏いつつ謙遜する


「あ、洞窟が見えてきました」

メイベルがそう言うと勇者と馬原はメイベルの向く方向に視線を合わせ黄土色の岩で出来た洞窟を見つける


「あ、あそこに誰かいませんか?抹茶色のフードを被った……」

勇者は洞窟の穴の方向に指を指した。


「誰か?見えないけど、というか勇者さん目めっちゃ良いんですねー」

馬原は乾いた笑顔で嫉みを含んで話し掛ける


「ありがとうございます。」

勇者は爽やかな笑顔で応える。


「私も見えます。何かこちらを見ていますね」

メイベルは手がさを目に被せ遠くを覗き込むような目つきで誰かを見つける。

「へ、へぇー」

この裏切り者!


「あれ、なんか走ってきますよ」

メイベルは顔を斜めに向け片目で覗き込むように遠くを見る


「敵かもしれないから、取り敢えず構えてください。」

爽やかな風を纏いつつ真剣な目付きで構える勇者、かっこいいねぇー


「はい」

従順なメイベルちゃん……


段々足跡が近づいて来るとともに少しづつ姿も視界に現れた


刹那フード越しから女性の怒りを込めたような力強くも薄暗い声が聞こえた


「勇者、お前よくも……」

「!?」

その言葉に俺は少し驚きつつ勇者の知り合いなのか?と思った。

「ん?」

勇者は物知らずな顔つきで顔を傾け、

「え!?」

メイベルは相変わらずの吃驚顔だ


そして、フードの女性は泣き叫ぶように怒鳴った

「私の村を……焼きやがって!」


刹那フードは剣を出し剣を振る

勇者は不意を突かれ斬られそうになるが、馬原が懐刀で受け止めそれを阻止した。


「邪魔するなー!」


フード女は壊れそうなくらいの大声で叫びながら、2本目の剣を服から取り出しコンマの速さで馬原に投げる


「危なっ」

馬原は咄嗟に避け、フード女は一本目の剣で縦にもう一度迅速な斬り裂きをしてきたが、それも馬原はヒラリとかわした。


「お前お前お前お前ー!」


勇者とメイベルは戦い経験が無いためかあたふたしている


そして女は泣き叫んだような声で怒鳴りながら剣を投げてきたが、馬原はそれもヒラリとかわし、次は拳で殴り出すフード女に馬原は情けなくなって、剣を捨て拳同士の戦いを始めた。

「私も応戦しなきゃ!」

メイベルはアタフタしつつも応戦しようとした。

「大丈夫、応戦しなくていい、ここはバトル経験のある俺に任せろ、勇者も俺を見直せよ」


「う、うん。」

目の端にチラッと見えた勇者の爽やかな顔も今は許せた。

「頑張って!」

メイベルの応援が一々可愛い


フード女は疲れているのか息を荒げてぜぇぜぇと息が聴こえてこんなやり取りにも声を荒げなかった。


そして馬原は問った。


「お前、勇者が村を焼いたと言ったな、それって本当だったら、そいつを仲間である俺が倒さなくちゃならなくなる」


「え!?」

フード女は息を荒げながら驚きつつ手を止めた


「そいつは勇者じゃなくて、誰かが勇者に化けたんじゃねぇか?それとも、こいつか?」


俺は単純な質問をぶつける事によって勘違いをしているならそれを解こうと試みた。


刹那、メイベルが突然声を上げる


「馬原うしろっ!」


防ごうと俺に飛び込もうとするメイベルに固まる馬原に二本の刃が刺さる


「がっ!はっ!」

俺は声を零しながら倒れる


「馬原! 馬原君!」


くらむ意識のなかぼんやりぼやけて来る視界メイベルや勇者の叫び声が小さく聴こえる。


冷たい地面に打ちつけられる身体、暖かいお湯?血か。血が顔や手を包み込む、顔は若干こそばゆい、掻きたいけど動かない。暖かい。


俺は「死んだ」


死んだと思う暇もなく溶けるように死んだ。


まぁ、別に勇者に嫉妬してたのも嫉妬と承認欲求が満たされなくなるかもしれないという不安とそこから沸き出る苛立ちからなんだろ。まぁ、俺なんてこんなもんよ。どうでもいっか。


「cause love than revives but,my revive since very you it it is permission because i love life because life without the thing cut die _not the your do of is lili.」


「!?」


美しい唄声が全体に響き渡る。


すると馬原の死体から剣が抜け身体が緑色の十字の光を発し、そして光が治ると体が起き上がる。


「!?」

皆が驚き言葉を飲み込む。


馬原は起き上がると背中から白い翼を生やし、頭上には白い輪っかが現れた。


フード女は驚く

「なんだこれは!?」


遠のいて行く空の雲、晴天の空かと思えば一瞬で夜のように真っ暗になり、かと思えば一瞬で晴天になったりした。


あまりにリアリティのない上に圧迫感を感じるこの状況に勇者達は恐怖面になり、メイベルと勇者は馬原を少し心配した。そして勇者は馬原を疑う。


「馬原、どうしたの……!?」


「馬原君……なのか……!?」


フード女は恐怖に息を飲み言葉を零した

「それにしても凄いな、空がコロコロ変わって……なんだか世界が壊れそうで怖い」


馬原の翼と輪っかは消え、馬原は再び倒れた


「ー!らー!馬原!馬原ー!」

勇者達の声だ。

意識が少しづつ戻ってくる

目が開いた、ボヤけてるけど炎石がある事と夜だという事だけは分かる。


「死んでない。そうか、俺は死なずに回復したのか……」


「おはよう」

馬原は思わず挨拶した。



「馬原ー!馬原君!」

いっぱい泣いたであろう掠れたメイベルの声といっぱい叫んだのか少し枯れた勇者の声が起きた俺の目をより覚ましてくれる。




「あれ?フードの女は?」

俺は気になった


「そこにいるよ。」

メイベルが顔の方向を変え、その方向を見るとそこにはフードの女がフードを外して座っていた。


金髪の短髪……目の色は赤か、可愛いな。


「あなたのその勇者の偽物かもしれないって事を聞いて、頷ける箇所があったからここに座っている。」

頷けるところ?


「一応聞いておこう、どこだ?」

馬原は顎に手を添え質問する。


「私が斬りかかった所、きっと貴方が懐刀出さなかったらこの人斬られてた、それと、今の今まで、襲える時はいつでもあったのに襲わなかった。それだけでも頷くには充分」


俺は何かと納得出来た。て襲える時ってどんな時だよ!?

「あー、なるほど、確かにこのバトル経験なしの初心者勇者だもんな、ありえないか」


メイベルは苦笑いしながらツッこむ。


「なんか何気に安心してないか?……敵じゃなかったからとかじゃなくて、その……別の所で……」


その被害妄想的なやつ何気に的確な所突いてくるから被害妄想乙的な事言えないー!

「まぁ、イケメンの上にいい奴で、強いとかなったら勇者完璧過ぎて俺の出番アレになるからさ。」


「やっぱりそういう奴かー」

メイベルは笑っている


「偽物は許さない、僕たちで倒しましょう、何せ、この人を傷付けた上に回り回って馬原をこんな目に遭わせたカスですから。」


勇者、こんなに熱いやつだったんか!?


「ま、勇者、取り敢えずお前はもっと強くなるべきだ、俺は手伝わないけどそこら辺の敵でも倒して勝手に強くなってから、アイツを倒そうぜ。」


俺は妬みがあるから手伝えねぇ


「はい!」


勇者は相変わらず爽やかだなー


そしてフードの女は俯きつつ指を前で組んで、言った


「そ、その件についてだけど、私も仲間に入れて欲しいです。私も村を襲われた事があるから、それの復讐したい。」


馬原は即答だった


そんなの、

「いいぜ、当たり前じゃねぇか。」


フードの女はバンザイしながら喜びの声を上げた


「やったー!」


そして自己紹介をした


「私は「マリ・マトン」宜しくね!」


マリたんかー。


そしてメイベルはある事を抜かす


「まぁ、勇者より仲間の方が強いとかいう謎設定のメンバーだけど宜しくねー」


俺は取り敢えず咎める


「主人公が仲間より強いという幻想はふざけてる!」


「とにかくそういう強さとか肩書きで人を偏見するのはやめて欲しいな」

ちっ、最後に良いまとめをする勇者に嫉妬しちまうぜ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る