勇者が選ばれし者とかいう幻想はふざけてる。
とうま
第1話「別の世界から来た勇者」
俺は中世風な異世界生まれ異世界育ちの馬原圭太(うまはら けいた)。
ここから愚痴が入ります。
俺はボソボソと小さい声で愚痴を呟く。
「あいつは俺から見たら只の異世界乱入者、なのに何故かあいつは主人公で、俺はそいつの補佐役。何故!?
この異世界出身の俺が主人公でも勇者でも無ければ只の仲間で、別の世界から来た関係ねぇ奴が主人公で勇者なんだよ!
ちくしょー!」
愚痴終了。
この異世界には異世界転生してくる奴がいる。
そいつがよく言われる主人公。
勇者とも呼ばれている。
俺たちはそいつのサポートやらメンタルヘルスケアやら、色々やらなきゃならない。
「貴方が仲間になってくれる人ですか!僕、我原 星矢(がはら せいや)と言います。こんな僕ですが末永く宜しくお願いします。」
勇者は爽やかな風を纏ってニッコリと爽やかな笑顔で挨拶して来た。
「はぁめんどくさいなああ!」
俺は勇者を斜め上目遣いで、服を舐め上げるように見上げながら怒りを露わにした。
「す、すいません。」
勇者は肩幅を狭めて謝って来るが俺は容赦なく攻める。
「すみません、ですよー?俺がどれだけ貴方の為に~貴方の世界の言語を勉強したと思ってます~なのに、ね~、そんな事も分からないとは、まるで俺の努力は何処へやらって感じなんですけどー?」
勇者はより小さくなって謝る。
「す、すみません!」
もう一人の仲間が割り込む。
「言語は異世界であろうが別の世界であろうが習う所は大体共通でしょ、嘘はやめんかい。」
黒髪短髪でダークレッド色の目……知り合いの、メイベルだった。
「すみません……」
俺は少し謝る。
メイベルは勇者を宥めつつ俺の事を嫌いにならないように諭す。
「まぁ、こ奴はただ君に慣れていないだけだ、そう疎んじることは無いよ勇者よ。」
勇者は相変わらず爽やかな顔で応答する。
「大丈夫ですよ。僕だって突然ここに来て、皆と仲良くなろうだなんてそんなに甘くないって事は知っています。」
メイベルは安心した表情で応える。
「しっかりしているんだな。」
勇者は爽やかに謙遜する。
「いえいえ、僕なんてアレですよ。異世界に来たからには、いえ、勇者になったからにはもっと頑張らくちゃ。」
うん、全面的にイケメンですね。爽やかだし。
「ああ、ちょっと日陰に行ってくるわ。」
メイベルは少し心配そうに声を掛ける。
「戻って……くるんだぞ?」
可愛いが、そんなの置いといて。
「はいはい。」
その場限り的な返事をした。
そして俺は大きい異世界樹の木陰の下の草むらの上に手を広げて寝っ転がりながら目を瞑った。
「勇者ね、ここに来た瞬間勝ち組ですか。ハーレムですか、俺なんか生まれた時から、そんな保証どころか生きて行けるのかすら分かんないくらいだったぞ。」
鳥の声が楽しそうに聴こえる、樹を揺らす風は……いつも通り落ち着いている。
「俺って何だろう……あ、そういえばアイツは俺の世界に来て勇者となった、て事は俺がアイツの世界に行けば……て、そんな事……」
「ねぇーねぇー」
妖精の様な可愛い声が聴こえる
「ん?」
薄目を開けてぼんやりとした視界
ボヤけた色彩で判断出来るのは金髪ふわふわロングのエメラルドグリーンの眼、エメラルドグリーンの服も着ているな……
視界がはっきりして来た……見えたのはボッチ妖精のリリだった。
「黄昏てるのは別にいいけどー、貴方が居なくなったら話す相手聞く相手、遊び相手が居なくなって寂しいんだからねー?」
毎回思うが相変わらず可愛い妖精だな。
そしてリリは除き込むような仕草で尋ねてくる。
「でー、どうしたの?」
俺は前髪を指先で掻きながら視線を斜め上に動かして誤魔化す。
「ど、どうしたのって……何が?」
リリは可愛い顔を更に近づける
「貴方が大体ゲームのデータ紛失した後みたいな顔してする話は大体! 絶望気味てるよ、それに〜嫉み妬みとかばっーかり! 後は悩み事。だからまたかーめんどくせっ! て感じにどうしたの? て聞いてみる事にしてるの!」
俺は聴きながら取り敢えず頷いた。
「あぁね納得納得、じゃあ答えますよ」
はっきり言って例え話突入した時いつも長い、言ってないか、思ってるだけだったわ。
「あーめんどくせっ!、で、どうしたの?」
「勇者の奴、この世界に来た乱入者なのに選ばれしものってなんだよ!それもイケメンでハーレムで、俺によるサポートもあってそれに……あーー!ずるいずるいずるいずるい!勇者の何もかもがずるい!俺も勇者だったらなーって思うわ」
「ちっ嫉みかよー、でも私にとって私を助けてくれた貴方が、私の勇者ですよ?それはダメなの?」
リリは少しめんどくさそうな表情だが、どこか楽しげだ、きっとこの何気無いやり取りが楽しいんだろう、顔を見ていて大体分かる気がした。
俺は嬉し紛れに妬ましい感情を剥き出しにする。
「充分だせっ!でも、勇者にはそれ以上の十充分って奴が、あるんだよ。くそっ!妬ましい!」
リリは呆れ顔をしながら適当に応える。
「マジかー」
「だからな、なんか嫌になっちまって、旅立ちの間近から、抜け出して来た。」
リリは呆れ顔に目を細めながら例えで応える。
「なんか思春期でよくあるママへの反抗期みたい……」
俺は一瞬場が凍り滑ったとあえて言わず例えの事をツッコンだ。
「何その例え……」
リリはグーパンチの仕草をしながら適当に応える
「いこーぜいこーぜー私が見張っといてあげるからー」
「そういう問題なのか?」
リリはめんどくさそうな表情で言い放つ
「めんどくせっ!」
「あー」
「まぁ、でも、仲間は勇者の代わりにはなれないし、勇者も仲間の代わりになれない、そう例えどんな勇者だったとしても、あなたの代わりにはなれない」
リリは急に目を逸らして誤魔化すように旅立ちの案を出す。
「いや、さ、旅に出てみようよ」
「私今多分、あたふたして訳の分からない事を言ってる。」
「でもさ、旅に出たら、もしかすると、私が言ってる事以上に訳の分からない事実に巡り会えるかも!いいや、私も手伝うから!一緒にもっと訳の分からない事実に巡り会うから!ね?旅立ちましょう?」
適当かもしれない、でもその中に多少の必死さをリリに感じ、俺はその場限りではあるが決心する。
「まぁ、そうだな、やる気出たよ、ありがとな
俺は旅に出る!勇者達と、嫉妬、妬み、もしかしたらそれ以外の感情にも襲われるかも知れない。でも、お前がいる、俺は頼るよ、その時はすぐ来るかもしれないが頼んだぞ、リリ。」
「はーい、めんどくせっ!」
リリはめんどくさそうな表情だったが、その表情の中にどこか嬉しそうな笑みが含まれていた。
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