第4話:妖精剣を手に……
「どわあっ!」
慌てて避けようとした晴人だったのだが、その動きは先程までとは明らかな違いを見せていた。
一歩踏み出しただけで数メートル先に体があり、更に一歩踏み出せば一瞬にしてエミリアのところに辿り着いたのだ。
「エ、エミリアさん、大丈夫?」
「ハ、ルト。あなたは、いったい?」
「そんなことよりこれ、光を浴びていたら傷が治ったんだ! エミリアさんもどうかな?」
「……す、すごい。これ、何なの?」
「俺にも分かんない。でも、これが現れる前に変な声が聞こえたんだ」
「声?」
「なんか、幼い子供みたいな声だった。その声が、これは
「エ、
「これって、そんなに凄い剣なの?」
「
気になることは多くある。だが、そのことを考えさせてもらえるほど
鼻息荒く、二人を赤く染まった双眸で睨みつけながら、
「剣術は?」
「できません!」
「なら、私が
「えっ! で、できないって言ってるのに!」
「大丈夫よ。
「そ、そんなこと言われても——」
「任せたわね!」
「ちょっと、エミリアさん!」
エミリアは晴人の答えを待つことなく駆け出した。
エミリアはそこで撃ち止めとはならず、新たな弾丸を撃ち出した。
「
青い軌跡を作り出した
「こ、ここかな?」
「まだよ!」
晴人が駆け出そうとしたところでエミリアから声が掛かる。
その直後、自由な両腕が激しく振るわれて
このタイミングで晴人が突っ込んでいれば、先ほどの二の舞になっていただろう。
「次で、決めるわよ!」
満を持してエミリアが撃ち出した
その軌跡を目で追うこと叶わず、いかに
だが、
まさかの不発——かに思われたが、
『ブモ! ブ、ブモオオオオォォッ……』
着弾したら最後、麻痺耐性を持つ相手でなければ数秒間は体の自由が奪われる。
ならば——ここしかない。
「ハルト!」
「おうっ!」
エミリアの合図で駆け出したハルト。
燃えるような双眸で睨みつけてくる
彼我の距離が
素人が振るう袈裟斬りは、エミリアの助けがあって初めて
刀身は一切の抵抗を受けることなく左肩から右脇腹へと抜けて両断した。
『ブ……ブモゥ…………』
何が起きたのか分からなかったのだろう。
地面を赤く染めた
「はあ、はあ、はあ、はあ……お、終わった、のか?」
振り返りエミリアを見ると、その顔は満面の笑みを浮かべていた。
「終わったのよ、ハルト!」
「……そうか——どわあっ!」
いまだ呆けていた春人めがけて、エミリアが飛び込んでくる。
目の前を埋め尽くすのは大きく弾む二つの山。
恥ずかしがることもなくエミリアは春人を抱き締めて、豊満な山の谷間に顔を埋める結果になった。
「はふっ! ちょっと、エミリアさん、く、苦しい!」
「あっ……ご、ごめんなさい!」
顔を真っ赤にして体を離すエミリア。
苦しいと口にしたものの、少しもったいないことをしたと後悔してしまう春人だったが、すぐに気持ちを切り替えた。
「これから、どうしたらいいんですか?」
春人の疑問に、エミリアは少し頬を朱に染めて答える。
「
「ほ、崩壊!?」
「でも安心して。私達は自動的にダンジョンの入口に転移するから」
「て、転移ですか」
安全に帰れるのなら問題はないかと思い直した春人だったが、何故かエミリアは俯いている。そして——
「ご、ごめんなさい!」
突然謝ってきた。
何事かと首を傾げていると、その理由を教えてくれた。
「き、金銀財宝が、このダンジョンには無かったから……」
そういえば、一番最初にそんなことを言っていたなと今更ながらに思い出す。
「……気にしてないよ」
「えっ?」
「こんな非日常を体験することなんて、普通ならあり得ないからさ。まあ、楽しかったよ」
頬を掻きながら、明後日の方向を見ながらそう答える春人。
エミリアは顔をあげると、少し潤ませた瞳で一言——
「ありがとう」
そして満面の笑みが向けられると、二人の体が光に包まれた。
「これが、転移なのかな?」
「……これで、お別れね」
「えっ?」
エミリアが小さく呟いた直後——春人は玄関の前に一人で立ち尽くしていた。
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