取りに行く・会いに行く
長い距離などを旅して必要なもの、大切な人に会いにゆくことです。
●コンセプト
離ればなれになった大切な人に会いにゆく。(母をたずねて三千里)
価値のあるものや知識を取りに行く。(宇宙戦艦ヤマト、銀河鉄道999、けものフレンズ、西遊記)
自由を得るために逃げ続ける。(脱獄もの)
長い時間をかけて大切な人に会いにゆく(人間になりたいロボットもの)
●ハイ・コンセプト
災いをもたらす指輪を捨てに行く(ロード・オブ・ザ・リング)
●考察
「取りに行く・会いにゆく」というタイトルですが、逆に捨てに行くとか、家に帰る、も含みます。特定の目的のために長い旅をするというところが本質です。「ロード・オブ・ザ・リング」が「捨てに行く」の代表例ですね。
旅行と関係が深い「面白さ」です。「ロードムービー」と呼ばれるジャンルを含みます。いろいろな場所を訪れ、そこでしかできないような体験をします。「知識を得る」(後述)「面白さ」を伴うことが多いです。旅行すること自体が困難であった時代は「知識を得る」ことをメインとした道中記が多く作られました。西遊記や東海道中膝栗毛などが代表的です。
快適な旅行が可能になった現代、旅を題材にする物語を作るなら、何らかの困難さを意図して取り入れる必要があります。例えば子供の一人旅(母をたずねて三千里)、警察に追われながらの旅(逃亡者、テルマ&ルイーズ)、宇宙の旅(宇宙戦艦ヤマト、銀河鉄道999)などです。
現代は情報化時代なので、よっぽど詳細に記述しない限り「異国」の知識をただ披露するだけでは物足りなく感じます。主人公に困難な旅に出発するだけのやむにやまれぬ理由を与えましょう。主人公の強い動機の有無が「知識を得る」パターンとの違いです。例えば、地球を救うため、不老不死になるため、真犯人を暴くため。他人に強制されるというシチュエーション、例えば課せられた試練を乗り越えるため、罪を償うため、という理由も考えられます。
次に主人公の行く手に立ちはだかる障害を考えます。障害は主人公の訪れる場所にできるだけ特有なものであることが望ましいです。例えば言葉が通じない、治安が悪く、持ち物を盗まれる、風習の違いから誤解を受ける、など。障害だけではなく、現地の人々との交流やその社会背景の描写を通して、「知識を得る」「面白さ」を深めることもできます。それぞれの場所で人々が抱えている問題を解決するというサブストーリーあるいはサブクエストを用意すれば、いくらでもエピソードを増やすことができます。
主人公的にも、作者的にも一人旅はつらいものです。体験を共有したり思わぬ化学反応を起こす、対照的なパートナーを用意すべきです。「東海道中膝栗毛」の弥次喜多、「レインマン」のチャーリーとレイモンド、「銀河鉄道999」の鉄郎とメーテル、「けものフレンズ」のかばんちゃんとサーバルなど、枚挙に暇がありません。
「異国」での出来事を読者に伝えるという方向に加え、その出来事が主人公に影響を与えるという方向、つまり主人公の成長や心情の変化を描かないと、この「面白さ」は成立しません。これこそが「遠くまで旅をした」と読者に実感させる源泉になるので、手を抜いてはいけません。
成長によってパートナーとの関係が変化することがよくあります。「レインマン」のチャーリーは最初、サヴァン症候群のレイモンドのことを金儲けの道具にしか考えていませんでしたが、レイモンドの優しさを知ると心から世話をしたいと考えるようになりました。「銀河鉄道999」の鉄郎は最初、機械の体をもらうという、自分の目的だけに集中していましたが、メーテルの使命や親との関係を知ると、彼女を思いやるようになりました。また、成長の結果、自分の旅の目的を再検討したり、変えたりすることもあります。自分の旅の目的は本当にこれでいいのか、と悩んだり葛藤させる描写も有効でしょう。
旅は場所の移動だけではありません。SFで人間とロボットの関係を描いた作品には時間の移動を扱うものがよくあります。例えばアンドリューNDR114やA.I.です。どちらの作品でも、ロボットが自分が人間ではないことを悩み、数百年から数千年の長い時間をかけて、自分に欠けているものを補い、目標とするものに近づいてゆく過程が描かれます。ロボットならではの「旅」ですが、冷凍睡眠やタイムマシンなどのテクノロジーを用いれば人間にも可能でしょう。
成長を描くのに旅は効果的で、成長することが旅の感覚を強めるという、相乗効果によってかなり強力な効果を発揮することのできるパターンです。
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