関係を維持する

 様々な障害を乗り越えて関係を維持することです。


●コンセプト


 パートナーの病気を乗り越えて愛を貫く。(不治の病・記憶関連の病気もの)


 家族の反対を押し切って愛を貫く。(ロメオとジュリエット)


 社会的タブーを無視して愛を貫く。(心中もの)


 破滅的な状況にもかかわらず、愛を貫く。(最終兵器彼女、セカイ系)


 何らかの理由で恋人を演じることになった。(ラブコメなど)


●考察


 この「面白さ」は関係を際限なく維持することが目的ですが、どんな物語にも終わりが訪れるのが定めです。なんの工夫もしないと「打ち切りエンド」になってしまいます。これを解決する方法の一つは結婚です。法的権威によって関係を維持する努力の必要性を取り除いてしまえば、自然に物語を終わらせることができるでしょう。結婚式に向けて、今までの出来事の回想や家族や友人の反応とかを詳細に描写することによって物語を盛り上げてゆく、というのがよくある流れです。


 もう一つの方法は二人の環境に大きな変化を起こすことです。二人を取り巻く環境はこんなにも変わってしまった。、二人の関係はいつまでも続いてゆく。そのようなエンディングなら、関係を維持したまま物語を終わらせることができます。「それにもかかわらず」という部分が感動を呼ぶ要素になります。極端な話、二人の内の一方、または両方とも死んでしまっても、最期まで関係を維持できた、という事実さえ残せればこの「面白さ」は達成できます。コンセプトの一覧にもこれに当てはまるのが多くあります。


 世界が滅亡する物語のほとんどがこの「面白さ」を取り入れているのではないでしょうか。「ひとめあなたに…」にも入っているし、「塩の街」にも入っていますね。一方ハードSF作品、「渚にて」、「幼年期の終わり」、「猫のゆりかご」には入っていないですね。


 もちろん環境の変化はビターエンドだけでなく、結婚によるハッピーエンドでも取り入れることができます。両親の反対とか、マリッジブルーを乗り越えるとか。このような変化を描く際に他の「面白さ」を取り入れることが可能です。例えば不治の病の相手を治療する薬を取りに行く、二人の仲を引き裂こうとする親たちなどを和解させる、恋人に危害を加えようとする敵を倒す、など。


 常識的には「パートナーを得る」が変化してこれになるのが自然なはずですが、「パートナーを得る」→「関係を維持する」とそれぞれ個別に力を入れて描いている作品は少ないです。「パートナーを得る」がメインの作品だったら、パートナーを得るのに成功したら、すぐに数年後とかにとんでしまったり、逆に「関係を維持する」のがメインなら、相手との出会いはしっかり描いても、パートナーを得ること自体には葛藤や障害があまりなかったりします。両方ともに力を入れるとストーリーのバランスが悪くなってしまうのでしょう。


 逆順、「関係を維持する」→「パートナーを得る」ならかなり多くあります。人助けなど、何らかの理由で恋人を演じることになった二人が互いを知る内に本当のパートナーになる、あるいはそうなりかけたがやはり別れる、というパターンはラブコメに多くあります。この場合は「関係を維持する」と「パートナーを得る」を同時に行っているようにも解釈でき、ストーリーのバランスが崩れにくいのでしょう。


 ここまでほとんど恋愛関係を前提として解説しましたが、それ以外の人間関係ももちろん可能です。血縁関係だと強力すぎて描きにくいので、友情などが良いでしょう。「博士の愛した数式」では老数学者とお手伝いの親子の友情が丁寧に描かれています。その友情は子が長い時間がたって大人になり、不変でした。


 他とは違い、この「面白さ」は悲しみを伴った感動をもたらすものであるところが特色です。この感動はかなり強いので、可能な限り取り入れたい「面白さ」です。

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