やり過ごす

 対立や脅威から何かを守ることです。


●コンセプト


 要塞・防壁などにこもってやり過ごす。(進撃の巨人、ALIEN)


 守りたいもののそばでしか使えない、強力な力を使って脅威を排除する。(新世紀エヴァンゲリオン、不思議の海のナディア)


 災害や怪獣などから街を守る。(ゴジラ、隕石落下もの)


 狙われている誰かを守る。(シティハンター、3×3 EYES)


 生き残る(ゾンビもの)


●考察


 次々襲ってくる敵から大切なものを守り抜く「面白さ」です。なぜ、どこから敵が襲ってくるのか、はじめは不明なことが多く、中盤以降でその正体が明らかになると、「敵を倒す」という「面白さ」に変化することもあります。


 襲ってくるものが大噴火や津波などの災害であることもあります。この場合は「敵を倒す」=「災害を防ぐ」ということにはなりにくく(例外は隕石落下)、災害が起きた後のサバイバルがテーマになります。

 また、何らかの聖域などが冒されると大災害が起こって人類が滅亡するというパターンもあります。たいていの場合は守り切れません(無慈悲)。この場合は後述の「取り戻す」という「面白さ」に変化することもあります。


 逃げることは許されないような設定を考えないといけません。守りたいものは特定の場所であって移動できないとか、守りたいものと主人公が一蓮托生であるとか、敵の群れや生存不可能空間によって包囲されているとか、契約や誰かとの約束や愛情によって見捨てることができないなどの設定が必要です。


 襲ってくる敵は次第に手強くなり、それによって様々な問題が発生します。負傷者(感染者)や奪われた地区や施設を切り捨てるかどうか(トリアージ)の問題。食料や弾薬などのリソースが不足してくる問題。敵に寝返ったり、脅威を呼び寄せる「裏切り者」がいるなど、内部分裂の問題。戦況が悪化するに従って、非人道的な、あるいは成功の確率が低い手段を用いることを強いられる問題。


 戦争やサバイバルが膠着状態に陥ったときの人々の反応を描写すべきです。強力なリーダーシップを発揮し、従わないものを罰しようとする者。起死回生の武器や魔法などを手に入れ、一発逆転をねらう者。戦争が終わったら、とか生き延びたら、などと現実逃避する者。失ったものの重みに耐えきれず、自暴自棄になる者。


 敵を倒し、大切なものを守るのと並行して、敵に関する謎や根本的な解決への模索を少しずつ積み重ねてゆきます。この努力が成功すれば、「敵を倒す」という「面白さ」に移行します。失敗すれば全滅など、最悪の結果になります。成功・失敗に関係なく全滅するように仕組まれていることもあります。近年は全滅パターンの方が多いような気がします。


 試みが失敗し、主人公が死に、守りたいものが破壊されたり殺されたりした場合、そこでストーリーを終結させるか、「奇跡」を起こすか決めなくてはなりません。しかし行き当たりばったりで奇跡を起こすと、ご都合主義とか機械仕掛けの神とかの非難を受けます。伏線を張っておきましょう。よく使われるのが、「予言」です。「その者青き衣をまといて金色の野に降り立つべし」など、謎めいた言葉を賢人キャラに言わせておけば、奇跡が起きたときにその予言が成就した、と読者は納得することができます。他にも○○文書とか、アカシックレコード的なものや、コンピューターのシミュレーション結果とか、未来の記憶とか、いろいろ考えられると思います。SFが得意な人は量子力学、平行宇宙、時空連続体、ブラックホールやワームホールなどの知識を駆使して奇跡を科学的に「説明」してもよいでしょう。

 なお敵側が「奇跡」を使う場合もあります。倒したはずのモンスターなどが実は生き延びていた、というのはホラーもののラストによくあります。


 このパターンは主人公の試行錯誤や倫理的な葛藤を描くのに最適です。次々と敵を出すことによっていくらでもストーリーを引き延ばすことができるので、長期連載に向いています。じっくりと話を盛り上げてゆきたい場合に使うとよいでしょう。

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