和解させる

和解させることによって対立を解消することです。


●コンセプト


 情熱や誠意によって対立勢力を説得する。(君の名は。)


 共通の敵を設定することによって(一時的に)和解する。(映画版風の谷のナウシカ、平成狸合戦ぽんぽこ)


●考察


 和解させることが面白さになるためには、対立勢力それぞれが固い意志を持っているということが必要です。そのためには強権的なリーダーや受け継がれた伝統、組織の巨大化によって硬直化した思考のような要素を十分に描写します。それらの勢力が互いに攻撃し合うことによって消耗し、誰もが不幸になっている、という状況を作り出すことによって、主人公がそれを絡み合った糸をほどくように解決してゆくところに面白さが発生します。


 「ロメオとジュリエット」が一番有名な例でしょう。確執のある二つの家に生まれた恋する男女が両家の抗争に巻き込まれ、和解させようとするが、手違いで死ぬ。その後両家は二人の悲劇を悔いて和解する。単にスーパーな主人公が上から目線で両家ともフルボッコにして仲直りさせる、とはしないところが、さすがシェイクスピア、ですね。


 主人公は異質な存在でなくてはなりません。「ロメオとジュリエット」なら両家の伝統や格式よりも愛を重んじる恋人。「君の名は。」や「ひぐらしのなく頃に」なら都会から来たよそ者。あるいは最初はどちらかの陣営に属していたが、真の問題意識に目覚め、第三の道を歩み始める者。「タクティクス・オウガ」の真EDなんかはこれかもしれませんね。


 主人公を異質たらしめているのはイデオロギーです。これが軽薄だとある種の人を激怒させるので注意が必要です。愛。友情。勇気。これらはまだ安全に使えるでしょう。自由。これは今はちょっと危険ですね。主人公が利己主義者だと思われないように細心の注意を払うべきです。ちょっと前までは古い伝統なら何でもかまわずぶっ壊す主人公も受け入れられていましたが、今はどうでしょうね……。平等や人権。主語をでかくするとユートピアや共産主義に行き着いてしまい、変なレッテルを貼られてしまうかもしれません。○○の平等、のように限定した方が無難でしょう。例えば教室でのいじめ問題を解決するとか、性的嗜好の偏見を改めさせる、など。


 二つの対立する主張を考慮した上で、もっといい解決策を提案する主人公を造形するのはかなり難しいです。誰でも思いつくような解決策では、対立勢力がバカに見えてしまいます。主人公でしか持ち得ない要素、特殊な生い立ちや立場や人間関係などの描写を工夫しないといけません。以前は外国や外国文化を使えば安直に実現できましたが、情報化が進んだ現代では陳腐になりつつあります。携帯電話が使えるようになって現代ミステリーが作りにくくなったと言われますが、過去や異世界を舞台にするのも一つの手です。


 このように対立軸と止揚、またはアウフヘーベン、または脱構築をきっちり書くのは難しいのですが、それを避ける方法が一つあります。それは共通の敵を出現させることにより、そんなことで争っている場合じゃない、と説得する方法です。「平成狸合戦ぽんぽこ」では、はじめは狸の部族間で争っていたのが、人間の土地開発によって脅かされ、和解して人間に対抗します。和解には至らなくても、問題を一時的に棚上げして協力するというやり方もあります。例えば敵対する国同士が一時的に協力して敵性宇宙人と戦ううちに、少なくとも現場では、お前もいいところがあるじゃないか、とわかり合え、なんだか問題が解決したような気分になる、という風に。これは国VS国の対立を個人VS個人にすり替えてしまっているのですが、物語が面白ければ問題をすり替えるなと怒りだす人は(多分)いないでしょう。

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