第34話 土魔法の可能性と石ナイフ
自分が想像するナイフと言えば、銀色でステンレス、金属でできているもの、他には持つところが木でできているものがあるぐらいでやっぱり金属が必要だ。
金属は何処にもないし、あっても既に加工されているものでなければだめだ。インゴットぽんっと渡されてさぁ使ってと言われてもそれをナイフにするには加工する機械がいる。
加工。自分が今干渉して形を変えられるのは、火、水、土、風、雷、光、闇、氷、迷宮ぐらいか。並べると結構あるな。水が変えられて氷が変えられるように、干渉できるものに金属に準ずるものがあれば金属にも干渉にもできるかもしれないが、自分のレパートリーの中には金属はな~・・・うーん、否あるかもしれない。
土。土ってのは岩石が風化して砂とか粘土とかになったものに植物の養分や微生物が分解した有機物が溜まってできたもので、土に含まれている成分の中にはカリウムやケイ素、ナトリウムの他にマグネシウムや鉄、アルミニウムなどほとんどの元素が含まれているらしい。自分の手で土が作れているのなら、金属だって作り出しているに違いない。おぉ、なんか気づいてはいけないパンドラの箱の中身を知らずして知ってしまった感じだ。
否、気づいてはいけないなんてものは存在しない。気付いたもの勝ちだ。これを活用しない手は無い。
加工する前に生成しないと。実際に生成できなければこの想像も全てパーだ。
さぁできるか。右掌に向かって魔力を送る。全部手の中に溜めるのは無理だから、魔力を全部使えはしないと思うけど、今できる力をフルに使って土魔法の"鉄生成"を実行する。
うーー・・・・ハァハァ・・ハァ。どうだ。何か魔力も思いっきり使ったし、ナイフ一つ分くらいの鉄できただ・ろ・・・
何か一瞬意識が薄くなったみたいだ。飛びかけた。予想以上に一気に魔力が減ったから、一気に気圧が下がって気を失うのと同じ感じか、そんな急な減圧体験したことないから実際は知らんけど。さっきの壁画とか食べる時にも結構魔力は使ってたし、もともと魔力の残量が少なかったからそれで魔力思いっきり使ったことが要因か。魔力が減っているときの脱力感にも慣れてしまって自分の魔力が減っていることが急に大量の魔力使ったら意識レベルが下がることは頭に入れておこう。もし戦闘中に不意に意識失ったらただじゃ済まない。これも慣れでカバーできたらいいんだがどうなんだろう。
まぁーそんだけ魔力使ったんなら鉄もできたでしょう。どれぐらいの大きさかな~
自分の足元に落ちてるだろう鉄を探す。
あれ、どこだ。すぐ足元にあるのが見つかると思っていたのに。
あっ、あった。こんなところに。これか。でも何だこれ。ちっちゃいな~。ピンポン玉か。あんだけ魔力つぎ込んだのに結果はこれだけ。ハァー、なんかやってらんないな。
否、そうでもないぞ。これでも自分の血と汗、魔力の結晶。こんなピンポン玉くらいの鉄でも十分小さいナイフくらいにはなる。
問題は加工。干渉のしやすさだ。干渉が全然できなかったらナイフになんて使えない。精々、少々重いけどお手玉か、使い道は。このままだと本当に骨折り損になってしまうぞ。
さぁ干渉してナイフにしようといきたいところだが疲れた、少し休もう。食べてすぐ寝ることになるけどいいや、一人は気ままだ。
うーん。よく寝た、今は何時だ。案外あんまり経ってない気がする。一応外に出て確認してみよう。
あ~気持ちいい。こんなんだったら外で大の字、のびのび寝てた方が気持ちよかったかもしれない。ま、過ぎたことだな。でもまだ本当に、日の位置を確認するに午後三時にもなってないな。
それにしても、ナイフ、どうしよっかなー。これからやるのもなぁ。
よし、止めた!ナイフに関しては一日分はもうやっただろう。万全な時にやったほうが効率もいいし、今はいいや。
こんな感じで予定調和の先送りをした後、夜の御飯を考える。とは言っても結局肉と後は木の実、水くらいで変化がない。やっぱりナイフが欲しいなぁ。皮のこともそうだけど食べ方くらい変えてみたい。このままだと身体強化で手づかみちぎり喰いに慣れてこれが標準になってしまう。
そうだ。わざわざ自分で作らなくてもいいんだ。探そう。当たり前だけどここは山だから石くらいそこらにごろごろしている。そん中でも尖ったものをナイフとして使えばいいんだ。
二十分くらいすると迷宮前には様々な形の石が集まっていた。
いやーでも本当に楽しいな。石を拾うだけなのになぜか楽しかった。本当にいろんな形があるな。尖ったもの以外も要らないのにいくつか拾ってしまった。だけど石ならどこでも探せるしコレクションにも向いてるかもしれないな。うん、テレビも本もゲームもないこんな場所じゃ石ころ拾いも立派な娯楽だ。テレビゲームと違って終わりがないからいつまでも続けられる。石を眺めていると厳選した石をコレクションしたい欲求も自分の中にちょっぴりある気がした。
本題に戻って、集めた石の中から切れそうな石を二つ選んで、迷宮の中に持って帰る。他の石も持って帰ろうかと思ったが無くなりゃしないし外でいいだろう。
どれくらいの切れ味か。それを確かめてみようと石の刃の部分に指の腹を当てる。ちょんちょん。おぉ、尖ってる、尖ってる。これなら使えるか。
よし、やるぞ。"清浄"で消毒した石の刃を地面に置いた皮に押し付け、それを下にスライドさせる。あっ、取れてる。完全ではないけど結構取れてる感じだ。石の刃に油や肉が溜まったら手で刃をなぞり落とす。そしてまた押し付けてスライド、これを繰り返した。
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