第26話 雨対策と椅子作りとフンコロガシ
雨だから今日は迷宮籠りに決まりだな、といつもの自分なら言うだろう。だが今日は趣向を変えて雨降る中に出てみよう。
それにも理由が無い訳では無い。狩りの最中、旅の最中、移動の最中に雨が降る事はこれから先、確実にある。しかしながら自分、当然ながら傘は持っていないし、合羽も無論持ち合わせていない。びしょ濡れの未来が見ずとも透けて見えてしまう。だが、今、びしょ濡れにならぬように対策をこうじれば、そんな未来を回避することができる。自分個人としては雨に濡れる事はそんなに嫌いではないのだが、周囲に医療機関が無い状況で無駄に体調を悪くさせる危険を負うべきでない。こんな時こそ考えてみよう。
最初はやっぱり傘でしょうと片腕の掌を空を支えるように掲げてそこから魔力を上に伸ばしある程度の高さを持ったところで周囲に広げていくのだが、体に押しつけるようにして纏わせているのと違い、触れているところが少ないのと体から離して魔力を操っていることもあって大変だし、何より腕を掲げ続けているのが疲れるので腕を下ろし次の策を考える。
傘が無いなら合羽だと考えついたとき、自分は肩を落とした。合羽ができない訳では無い。これも結局、魔素同調なんだなぁと思っただけだ。うん。魔素同調って合羽にもなっちゃうんだなぁ。別に悪いことではないのだけどなんかあんなに考えてたのになんかなーと、それだけだ。
魔素同調って体中を魔素で覆ってる訳だから雨を防げる。実にシンプルな理屈である。それにしても、こうやって自分の存在を隠すために始めたのにいろいろな応用ができるもんだ。もし人と一緒な時は魔素で覆う必要もないし、魔力そのまんまでいいか。下手に怪しまれないようにも気をつけないとな。
雨びしょ濡れ問題は案外すぐ解決したとしてどうしようかこの時間。
よし、折角だしこの時間、家具作りに勤しみましょう。
まずは椅子。椅子と言っても凝った造形をするのは気が向いたらでいい。ただの円柱形で大雑把に作ってみよう。地面に手を当てて、そのままの状態で垂直に手を上げながら粘土質の土を出す。結構魔力を使うが、使うは使うだけで細かな制御なんてまったく無いので案外楽なのかも知れない。それを何回も繰り返して、全然綺麗な円柱じゃなくて見てくれは何も手を加えてはいないが大体はできた。まだ完成・・・ではない。ここから唯一自分が凝るポイント、座り心地に着手しよう。どう座り心地をよくするか。それはまだ固まっていないこの椅子に座る。それだけだ。立って椅子を見てみると椅子に自分のお尻の型くっきり残っていてその部分だけ綺麗にへこんでいる。そのままでは少し不恰好なのでその型の上に土を盛って跡を滑らかに整える。そしてそこから円柱の側面を運ぶ時に掴むところを手を突き刺して作った後、"脱水"、"硬土"、"帯火"して固める。座るとき直接触れる部分は"脱水"をある程度で止めて、そのままで"硬土"、"帯火"を軽くして柔らかさを残す。そうしてほとんどできあがった後はその椅子を持ち上げて横にして底面をまたまた"脱水"、"硬土"、"帯火"する。これで完成だ。
中々満足がいく出来だ。重くて持ち運びしにくいところが難点だが、運べるだけましだ。身体強化で何とでもなる。次は机!といきたいが疲れたので家具作りはこれで終了。サンプルでも見て覚え直しでもしておこうか。否、したいことがあった。トイレだ。今までは外だから土魔法使って穴掘って即席ぼっとん便所でやり過ごしていたが外でできない場合も出てくるかもしれない。迷宮内でお花摘みができる方法を考えよう。
迷宮は外と違ってなにか干渉しにくいし穴を作るのは大変だ。どうしよう。水洗トイレはまず無理だからぼっとん便所一択だ。かといってその穴も作れない。ここから自分が導けた方法は一つだけだった。誰か革新的な方法を教えてくれればいいがこの方法しか考えつかない。その方法の名はフンコロガシ。ばっちいとか引くわーとかは受け付けない。生きるすべの一つだ。内容としては名前の通り。土魔法で作った半球の殻で花を摘み、それを土魔法で上から土をかぶせて球状にして密閉、それを固める、それだけだ。利点としては転がせば運べるという運搬しやすいことと周囲の衛生を確保できることだ。そりゃあすぐに捨てられたらベスト何だろうが出来ない場合もある。想像としては、この小さな名ばかりの迷宮ではなく、小説でよく出てくる何階層もある迷宮に籠るときとかはこれは役立つだろう。今はすぐに外に出られるので外でするができないときはこの方法を使おう。使わなくて済むならあまりしようとは思わないが。
雨降ってからは考えてばっかで思えば椅子しか作らなかったが、もう夜御飯の時間だ。さっそく椅子に座って食べましょう。
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