第19話 剣術なのか杖術なのか
ひとまず、拠点開拓は保留にして、人と遭遇する前に言語スキルを取得しないといけないがそれはスキルポイントが必要で一朝一夕にはできない。明日狩りに出かけるとして今日は特訓しておこう。
魔力循環や魔素同調もやってもいいが他にやってみたいことがある。それは剣術。剣とは闘う為の武器。折角剣術スキルがあるならば成長させない手はない。しかし、悩みが無い訳では無い。それは自分が今までやってきたのは剣道であって剣術ではないということだ。剣道が無駄になるとは言ってない。だが敵を殺すためのものではない。鍔迫り合い中に相手の脚を引っ掛けたり、剣を押し通して首を掻き切ったりなんて技や薙刀みたいに脛!なんて技も無い。それに剣道は今までの例えも全て対人用だ。魔物みたいなあの世界にいない存在に対しての技なんて無いんだ。
なら、考えよう。戦い方を。普通に面や小手、胴の練習をしてもだめだ。自分より大きい存在や小さい存在に対しても通用する剣の使い方、体の動かし方を考えて、実践して、身に着けなければいけない。
第一段階は剣の使い方を考える。剣と言ったってそこらの落ちている木の枝だ、刃は無いから切ることはできない。叩くか突くかだ。切ることができないということは脚や首を落として相手を戦闘不能に陥れることは不可能だ。叩くか突いて相手の動きを止めたり殺さなければならない。どうしようか。簡単に考えられるのは急所を突くことだ。急所と言えば喉、目、耳の中、口の中、頭、顔ぐらいか。やはり全て頭部付近に集中していることになる。そこを効率的に叩くか突くんだ。だが頭部に剣で攻撃するためには接近する必要がある。接近するには当然危険があるのは分かっている。その危険をどう減らそうか。3つ考えた。1つは相手を動けなくする。それは土魔法や雷魔法でできる。そして拘束したと油断することも禁物だ。拘束すれば頭部を攻撃することはできる。だが、その状態でわざわざ剣で殺す意味があるのだろうか。その状態なら魔法で容易く殺せてしまう。それは剣で戦う方法ではなく、剣で最後のとどめを刺す方法に過ぎないんじゃないか。それではだめだ。剣だけで戦うことは不可能なんだろうか。うーん。
剣だけでは無理かもしれない。だけど剣というアドバンテージを自ら捨てるのは惜しい。少なくとも今の自分の剣術では無理なだけだ。魔法は魔力が尽きたら終わりだが、剣術は魔力なしでもできる。魔力を剣術に応用すれば尚よいかも知れないがそれはまた今度考えよう。そもそも木の枝で戦えるのか?戦えたとして戦っている最中に折れたら一巻の終わりじゃないか。はぁ、切るなんて贅沢言わないからせめて戦って一瞬で折れるかもしれない木の枝は嫌だ。かといって木の枝ぐらいしか棒状のものが無いし・・・。否、自分で作ればいいんだ。土鍋を作ったように。そのまんま土鍋を作るみたいな感じでは作れないがそのノウハウは活かそう。さすがに雷や風で棒は作れないから土魔法で作ろう。左手で右手の手首を握り、右手一点に魔力をありったけ注ぎ思いっきり魔力を込めた土の棒を右手から生やす。竹刀に近い長さになったところで止めて、棒を落とす。それを拾い、今度は"硬土"を全力で込め、がっちがちに固める。もはや鉄の棒のような硬さにしたところですぐ折れたり脆くならないように外側を硬い殻のように更に固める。ふぅ、脱力感半端ない。もう魔力はほぼ残っていないみたいだ。もっと強くなったらこの武器ももっと強くしたいな。この武器の名前何にしよう。黒い土で作ったから、全然杖には見えないけど棒って言うのなんか嫌だし"黒杖"という名前にしよう。よし竹刀の太さをイメージしたから握りやすい。結構重くて身体強化を使わないと振れないが身体強化のいい特訓にもなる。振ろう。まぁだからといって身体強化をしすぎて軽過ぎるぐらいになんてしてしまうと次の日の筋肉痛が恐ろしいので程々にして振っていく。振るだけじゃなくて突かないといけない。近くの木に向かって胴打ちをいろんな高さで打って逆胴も交互に打った後、木に向かって普通の剣道の突きをして、片手でも、いろいろな姿勢でも突けるように姿勢を変えながら突いていく。いろいろ試したら助走をつけたり姿勢を急に変えた後に振ったり突く。これで第二段階、体の動かし方も考えながら試していく。
よし、このらへんでやめておこう。やりすぎると明日筋肉痛で自滅してしまう。剣?いや棒、棒じゃない杖はここで止めて、この後は残った少ない魔力を少し回復するために休憩してから魔力循環と魔素同調を同時に特訓して夜を迎える。早めに起きれるように肉をさっと食べて、口や体、服全てを"清浄"で綺麗にした後は綺麗な星空を改めて見て感慨を覚えながら全く知っている星座がないことに今更気づきながら明日のことを考える。明日は狩りをするつもりだがそれ以上に植物分が必要かもしれない。肉だけだと健康に悪すぎる。採集もできたらいいな、というかこんなに特訓した後だが採集を優先すべきなのかもしれないなと思いながら少し寒いので寝る前に自分の魔力を使い果たして周りを土魔法で殻のように盛り上げて環境を整えてから吸い込まれるように眠りに落ちる。
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