第11話 狩りに立つ

 胡坐もいつの間にか解け、胎内の赤ちゃんのようにくるまって寝ているとブーンと耳元で蠅の音がして起きる。


 「あー、もう。うっさい!ってもう朝か。」


 起き上がりながら、手で耳の周りをブンブンと手を振り、その場しのぎに蠅を退散させる。起きたことで、あの時寝落ちしてしまったことに気づきながら、魔力が回復しきっていないこと由来の微かな脱力感をしっかりと感じながら徐々に頭を覚醒させる。迷宮核は、昨日魔素を纏って疲れて寝ようとしたときに近くに転がっていかないように作った小さい穴に見えるよう埋めているのでポッケに入れたまま寝ることは避けられた。


 「今のは蠅か。ということは・・・」


 言わずもがな、蠅は不潔の代名詞。ここ最近は肉をどう食うかしか考えていなかったが、自分でも分かるほど自分が臭い。服なんて結構汚れてるし、あぁ・・・。汚い、だが、自分は肉を食べて生きるか、肉を食べずに死ぬかの瀬戸際。余計なことに魔力や労力をとっていては早晩死んでしまう。どうせ、狩りの時は泥まみれで行くんだし今洗っても仕方ない。まぁまずはこれ以上汚れないように服を脱ぐ。昨日魔素を纏い続けて分かったことだが、魔素を纏っているとまだ少し肌寒いはずの夜でも寒さを感じなかった。もしかしたら断熱効果があるかもしれない。ためしに魔素で全身を覆ってみる。おお、全裸でもあんまり寒くない。それとまた、今度は今、発見することができた。自分の身体からあまり臭いがしないのだ。もしや、これは断熱効果だけでなく、断臭効果もあるのかもしれない。かといって汚いのが好きなわけではないし、狩りが終わったら自分の魔法で作った風呂に入ろう。というか、断臭効果があるなら泥をかぶる必要はないのではと泥かぶり回避に思考を巡らせるが一応やっといたほうがいいのか、それとも逆に泥をかぶったほうが泥臭くて目立つのではないかと対立意見を考え自分の頭の中で議論させるがなかなか決着がつかない。そこで別の意見、体を洗浄して体から大体の臭いを落とした上で魔素を纏うことを考え付いた。これなら体も洗えるし、わざわざ泥もかぶらない。と、自分に都合がいい考えを思いついたところで魔素を解除し、さっそく実践と洒落こみたいが、体を洗うときに出す水の量は結構な量必要ではないかとまた別の意見が頭の中から飛び出した。確かにそうだ。シャワーなんて体を洗うときなんか常時出さないといけないし、石鹸もシャンプーもないからその分汚れも臭いも落ちにくい。さぁどうしたことか。また考えこむと1分後、違う方法を考え付いた。魔力は干渉することもできるんだから水、物量で押し流すこともないだろうと、今度は魔素ではなく魔力で体を覆い、体中の汚れを全部吸い尽くすイメージで魔力を消費する。魔力が消費されて覆っている魔力が徐々に無くなっていき、見た目清潔な肌が姿を現す。


 「おおっ。すっご!汚れも臭いも取れてる。」


 自分の魔法に普通に感動したところで、この魔法に名前を付ける。"清浄"にしよう。そして半ば現実逃避気味に考えないようにしていたことも解決できるのではないかと思い、実践する。それは歯磨きだ。この世界に生まれてから一度たりとも歯磨きをしていない。歯ブラシも歯磨き粉も何も道具がなかったからだ。一応自分が作った水ですすぐぐらいはしていたが、それだけだ。だって無いんだもん。どうしようもなかったんだ。と自分を慰めつつ、口の中いっぱいに魔力をだし"清浄"をする。すると口が綺麗サッパリとして爽快感が口の中に広がった。ふぅ、これを続けていれば虫歯も大丈夫だろうと安心して、もう一度魔素を纏う。狩りに行く前に現状確認をしておこうと最近おろそかにしていたステータス確認を行う。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


名前  :尾崎友斗

レベル :1  

種族  :人

称号  :迷宮から生まれた男 迷宮とともにあるもの

年齢  :10歳

性別  :男

属職  :なし

状態  :空腹

加護  :なし


生命力 :26/33

魔力量 :27/38

攻撃力 :15

防御力 :15

筋力量 :22

体力量 :19/22

耐久  :20

敏捷  :15

魔法威力:15

魔法制御:40

精神強度:45

知力  :37


スキル :日本語

     剣術LV4

     大声LV6

     観察LV3

     暗算LV4

     早口LV8

     石頭LV5

     忍耐LV10

     魔力操作LV10

     魔力隠蔽LV4

     魔素同調LV5

     毒耐性LV1

     隠密LV1

     腹時計LV3

     脱兎LV2

     思考の渦LV3

     空腹耐性LV1


スキルポイント:0


魔法  :生活魔法

     土魔法

     光魔法

     水魔法

     風魔法


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ほおっ~~。めっちゃ魔力量と魔法制御と精神強度が上がってる。ありがたい。スキルもなんか結構増えてる。魔素同調は魔素を纏ってるから身についたんだろうなぁ。魔力隠蔽は一応魔素同調の時についででやっているときもあるけど、魔素同調を優先してたからレベルにも差が表れてるな。脱兎は絶対あの大鷹から逃げているときに取得したんやろう。忍耐もあの時のに違いない。ほんとに怖かったし。思考の渦は何かいろいろ考えてるから納得な感じもする。空腹耐性はぜひ欲しかった。そういえば腹時計は腹の音が鳴るときもあるけどスキルの影響は今のところ感じてないからよかった。忍耐も魔力操作もレベルが上がっていて成長を実感できる。この際、スキルの効果の説明もしっかり読んでおこう。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 日本語 :日本語が流暢に話せる。

 剣術  :現状の剣術の技能を最大限引き出すことができる。剣の技能を向上さ

      せる、剣を用いて戦闘するとレベルが上がる。

 大声  :大声を出しやすくなる。大声を出すとレベルが上がる。

 観察  :観察力が上がる。注意深く観察するとレベルが上がる

 暗算  :暗算が速くなる。暗算をするとレベルが上がる。

 早口  :早口が速くなる。早口で喋るとレベルが上がる。

 石頭  :頭の、外からの痛みに強くなる。頭の、外からの痛みを受けて耐える

      とレベルが上がる。

 忍耐  :精神強度が上がり、耐性スキルが得られやすくなる。耐え忍べばレベ

      ルが上がる。

 魔力操作:魔力制御が上がりやすくなる。魔力を操作すればレベルが上がる。

 魔力隠蔽:魔力を漏らしにくくなる。魔力を体の外に出さないように制御すれば

      レベルが上がる。

 魔素同調:体を周囲の魔素で覆い隠しやすくなる。魔力を周囲にある魔素と同じ

      魔素に変換して消費して体に纏えばレベルが上がる。

 毒耐性 :毒に強くなる。毒に接触、摂取するとレベルが上がる。

 隠密  :気配が消しやすくなる。気配を消すとレベルが上がる。

 腹時計 :腹の感覚で時間が分かる。規則正しく生活すればレベルが上がる。

 脱兎  :逃げ足が速くなる。必死に逃げて走るとレベルが上がる。

 思考の渦:体を動かさないとき集中が深くなる。体を動かしたり焦っていると効

      果はない。じっと集中するとレベルが上がる。

 空腹耐性:空腹に対する精神強度が上がる。空腹を耐えるとレベルが上がる。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 本当にいろいろあるなぁ。脱兎って逃げるとき限定なんなんだ。逃げるときありがたいけど。思考の渦の効果は戦闘中は働かないことに気をつけておかないといけない。後、今更なんだが日本語だけレベルがない。他の言語スキルと比較すれば比較すればこれが普通なのかどうかが分かるが今は置いとこう。っと忘れないようにあの青い葉の木に昨日の夜更かしの成果を実践するように魔力を右手から多めに出して先端から半分ほど水に変えて水やりをする。今は直接水と魔力を掌から同時に出すことはできないけど、魔法制御を日々上げていけばできるかもしれない。毎日続けていこう。夜眠れるのはこの木のおかげだ。


 じゃあ、狩りに行こう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る