第1話 現状確認part1
うん。この後、風が来てる方向、おそらく出口に向かうのは決めたとして、出来る限りの現状確認をしてみよう。
まずは、呼吸。
呼吸をしている。即ちこの世界、星には気体が満ちていてそれを吸ったり吐いたりしている。ということは肺呼吸。肺があるということだ。見た目は前世と変わらない10歳児の身体だが、中身は同じと限らない。胸に手を押し当てれば自らの心音が聞こえる。確認を続けよう。
次に髪の毛。前髪を目の前に引っ張ってみる。手をかざして確認。よし、黒髪。天然由来の金髪もきれいだと思うが自分は黒髪がいい。通っていた高専では髪の色に指定はなく、ピアスを開けてもよかったので2年ぐらいになると髪を染めるやつが出始め、3年になるとさらに少し増える。自分としては、髪を染めたら髪を傷めるし、ピアスも痛々しくてあまり好きではなかった。元から髪の色が赤とかだったらそれもまたおもしろかったが、それぐらいの興味だ。
では次に体力測定。握力は以前とあまりかわらない。うん?以前?自分は以前、19歳だった。なのにこの、前と遜色がない力。好都合だが、少し不安が増えた。10歳ぐらいの子供にこんな力が必要な世界って、危ないんじゃないんだろうか。それにしてもやることは変わらない。少し走ってみる。身軽だ。足の速さは以前より少し速いぐらいではないだろうか。筋力は前世並で体の重さが軽ければ当然の結果かもしれないがこれもうれしいことだ。腕立て伏せは3回やってやっぱりやめにした。ある程度はできるということが分かったということと、体力を無駄に消費すべきときじゃないからだ。腹筋は地面がざらざらしていて痛いからする選択肢はない。
その後は実は待ちに待った柔軟性を測る。立った状態で足のつま先に手を伸ばす。難なく指が当たる。
「よしっっ!!」
ガッツポーズを人知れず決める。人がいなくても嬉しいときは嬉しいと表現すべきだ。感情は表現しないと錆びそうな気がするからだ。まぁ、うっとうしいほど騒ぐ必要はないと思うが、大事だ。おそらく今の自分の顔は喜色満面とのことだろう。なぜそんなに嬉しいかと言えば、前世が身体がガッチガッチだった。それに尽きる。小学校高学年まではスイミングスクールに通っていて、プールに入る前に広い部屋で全員、柔軟運動をしていた。そのおかげでそれまではそこまで固くなかった。しかし、それからだ。身体はどんどん固くなる。中学校を卒業するころには既にガッチガッチだった。
しかし、今。180度開脚はさすがにできないが、小さい頃と同じくらいの柔軟性を手に入れた。これからはこの体を大事に、もう二度と柔軟性を失わないように生きよう。
よし、このぐらいで身体確認はひとまず終了だ。次は賭け金ゼロの賭けに出よう。この世界が自分がいつも読んでいる小説のような世界なら、もしもの希望にかけてみよう。言うだけならタダだ。
そして、口を呟くように動かした。
「ステータス。」
頭に直接文字が浮かぶようななんと言えばいいか、目に見えている景色の中にはないはずなのに確かに見えている。うーんややこしい。目を閉じてみればその文字の羅列がはっきりと見えた。
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名前 :尾崎友斗
レベル :1
種族 :人
称号 :迷宮から生まれた男
年齢 :10歳
性別 :男
職業 :なし
状態 :正常
加護 :なし
生命力 :30/30
魔力量 :10/10
攻撃力 :15
防御力 :15
筋力量 :20
体力量 :20/20
耐久 :20
敏捷 :15
魔法威力:10
魔法制御:10
精神強度:35
知力 :35
スキル :日本語
剣術LV4
大声LV6
観察LV2
暗算LV4
早口LV6
石頭LV5
スキルポイント:10
魔法 :なし
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「ひやっふぅーー♪♪」
うんうん。これは小躍り必至の大事件だ。ステータスと呼べば、ステータスが分かる。これは結構なチートではなかろうか。いきなり見知らぬ大富豪の遺産を相続したぐらい嬉しい。まぁ大富豪の遺産相続なんて厄介ごとのような気がするし、この
当然のようにあるレベルの欄。これはレベルの上昇条件が謎だ。テキトーに考えれば魔物的なものを倒せばいいのだろう。
そして種族の欄で人となっているということはほかにも種族なるものがあるということ。そもそも前世では生き物の分類は体系的にわけていたが、当たり前だが人間の勝手でやっていて、犬は図鑑を作らない。そして生物は時ともに進化し、絶滅する。RPGでは種族と分けてもゲームだからの一言で済むが、この世界ではだれが分類していてステータスなるものに表示させて今自分に見せているのだろう。分からない。
次に称号の欄だ。迷宮から生まれた男となっている。それを見てここは迷宮だったのかと知る。不意に湧いて出た疑問だが、人は迷宮から生まれるものだろうか。今まで読んできた小説が由来の証拠能力ゼロの情報からだが、迷宮で魔物は生まれても、人は生まれない。これが正しいと仮定すれば、自分の存在はこの世界の生き物から見ても変だろう。この情報はこの生まれが忌避されたり、色眼鏡で見られるかを知るまでは隠しておくほうが得策だ。生まれで人のすべてを判断する奴に知られたら危なそうだし。
と、よく考えてみれば、自分の生みの親はこの迷宮ということになる。父でも母でもないが生んでくれたことに感謝しよう。
その次に結構気になる欄は加護だ。小説とかでは神とか龍とか偉大な存在にもらっていたが、この世界にもそのような存在がいるかもしれない。面白そうだ。
そしてなんと言ってもこの次だろう。魔法とスキルがある。魔法は今のところゼロだが、スキルはたくさんある。結構地味なものばっかりだけど、数は大事だ。最初は日本語。日本語というスキルがあるということは他にも喋れる人がいるかもしれない。そして他の言語も存在するのかもしれない。というか他の世界なら全く違う言語が跋扈しているだろう。日本語以外も使えないと、この世界の人の社会では生きていけない。覚えたいがそもそも教わるには知り合いが必要だし、日本語が通じないと心が折れる自信がある。そうだ、日本語もスキルなら他の言語もスキルとして覚えられるかもしれない。まともな正攻法では英語も中途半端な自分にはこれまたできない自信がある。よし、次に剣術LV4と大声LV6だ。確かに剣道を小学校高学年ぐらいからやって今二段だ。そして大声は剣道で出しているからだろう。だからといって剣術より大声のスキルのほうがレベルが高いのは納得いかない。まぁ確かに、剣道と剣術は違うからそのままそっくりスキルには反映されないだろう。そういうことで納得しよう、うん。石頭っていうのも剣道の恩恵か。ありがたい。しかし、前世の身体の性質は受け継がれていないはずだが、うーん。精神面に影響するスキルということかな。観察のスキルがあるのは日頃の行いでしょう。ふふん。暗算は当然として、早口なのも自分本来の小さいころからの性分だ。スキルとして認められて得だと考えよう。
と、ここらへんでスキル確認は終了。こっから実は気になっていたスキルポイントの確認に着手する。スキルポイントはおそらく、スキル獲得か、スキル成長か何かスキルの欄に変化を及ぼすことができるのだろう。
というか、まず、スキルポイントってどう使えばいいんだ・・・?
一分考えたが、考えるだけでは変わらないだろう。ということで・・・
「スキルポイント!」
ふむ。直接口で唱えても反応なしか。まぁ予想の範囲内だ。ならば、
ステータスをパソコンの画面のように見立ててカーソルをイメージして、クリック!!!
音もなくステータスの文字が変化し、新たな文字を紡ぐ。
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スキルポイント:スキルポイントを使えば取得可能なスキルがあり、それを取得
するために使用する。レベルが上がる際にスキルポイントは獲
得できる。本人がスキルポイントで取得できるスキルは個人そ
れぞれの多様な要因によるものでおのずと決まる。スキルの取
得に必要なスキルポイントは相性、強大さなどで変わる。
取得可能スキル一覧
柔軟-必要スキルポイント5
投擲-必要スキルポイント7
歌唱-必要スキルポイント3
忍耐-必要スキルポイント10
健脚-必要スキルポイント6
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ビバ、成功!試すに損はない。まさかの説明まで・・・・・・、至れり尽くせりでありがとうございます。つまり、選択するように念じればその部分の説明などの画面に切り替わるということか。さらにその下には、取得可能なスキルの一覧がある。この中で私情としては柔軟や、年がら年中、いろんな歌を歌っている自分としては歌唱スキルを取得したいが、いざこの世界で生き残るために必要なスキルとしては、その他の三つのスキルのほうが大事かもしれない。うーーん。どうすればいいか分からない。今は取得しないほうがいいのだろうか。あっ、そういえば今スキルポイントの説明を見たように、スキルの説明を見てそれから決めるべきだろう。よし、ではでは・・・・・・。
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柔軟:体が柔らかくなる。柔軟運動をすればレベルが上がる。
投擲:物を投げる制御、威力が上がる。物を投げればレベルが上がる。
歌唱:歌が上手くなる。歌を歌えばレベルが上がる。
忍耐:精神強度が上がり、耐性スキルが得られやすくなる。耐え忍べばレベルが
上がる。
健脚:足が丈夫になり、長距離の歩行、走行が楽になる。長距離の歩行、走行で
レベルが上がる。
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ふむふむー。やっぱり迷う。それぞれにいいところがあって決められない。ならば、他の項目の説明を洗いざらい読んで考えよう。まぁ時間はかからないのでさっと終わらせよう。
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