第40話 すべてが焼き尽くされる瞬間… 下
「ドラゴンの目的は…この武器…」と言い、小さく笑みを見せた。
「これぇ…アポカプリスの何かが絡んでいるんでしょう…」と言うと、顎に右の人差し指を当てると、数回弾いてから…。
「…う、ろ、こ…あたりね…」と言うと、クラウトの眉が少し動いた。
その動きを見ると小さな笑みを見せて、「ほぉんと…分かりやすい…」と言い、アサトを見る。
「ドラゴンは、成獣になる為には、自分より格上のモノの何かを吸収しなければならないのよねぇ…」と言葉を発すると、クレアシアンの体が赤く、そして、黄色く染まる。
「それがぁ…アポカプリスとなれば…」と言うと、クラウトを見て、「…分かるでしょう?」と言葉にした。
「進化…」とクラウト。
その言葉に、「…そうねぇ…進化とはいかないけど、成獣に達する量を簡単にこなせる…って感じかな……フフフ…。」と小さく笑いドラゴンを見て、「あらぁ…これはオモシロぉ~い…」と言うと、セラを遠目で優しい瞳で見つめてから…。
「そうだ…」と言うとアサトを見た。
「おねぇ~さんから坊やたちに贈り物を2つあげるわぁ」と言いい、艶やかな笑みを見せた。
「2つ?」とクラウトが前に出て言葉にする。
その言葉に振り返り、クラウトを見て、妖艶な笑みを浮かべて頷くと…。
「1つは……。ドラゴン…わたしが討伐してあげるわぁ」と言葉にした。
その言葉に、一同が目を見開いた。
「討伐って…」とタイロンが言葉にする。
その言葉にタイロンを見てから、炎を吐き続けているドラゴンを見て、「…あらぁ?なにか疑問でもぉ?」と言いながら、再びタイロンを見て、艶やかな笑みを見せた。
その姿に言葉を失うタイロン。
それを見てからクラウトに視線を移し、そして…、セラへと視線を移した。
その視線を感じたシスティナが、再びセラを抱き寄せる。
「大丈夫よ、連れてはいかないから…」と言い笑みを見せ、「その子可愛いから…その子の為の贈り物を上げるわぁ」と言いクラウトを見た。
メガネのブリッジを上げるクラウト。
「ほんと…あなたは賢そうな人ね…」と言うと振り返り、アサトがいる方へと歩み始めた。
アサトは直立のままクレアシアンを見る。
クレアシアンはアサトを見ると、「あらぁ…ちょっと背が伸びたのねぇ~」と言うとアサトを通り過ぎた。
「それじゃ…」と言うと、ドラゴンの前に立つ。
ドラゴンは一度口を閉じ、ホバーリングしながら後方へと移動をはじめ、一度距離を取った。
クレアシアンは、ゆっくりと右手を水平にあげると、中指と人差し指をしなやかに上げて指を鳴らした。
「え?」とアサト。
そのそばのケイティが目を見開いて、「なに?何が起きたの?」と言うと、クラウトがそばに来て、「防御の魔法を解いたようだ」と言葉にする。
肩越しにその気配を感じると、小さく妖艶な笑みを浮かべながら、クレアシアンはドラゴンへと視線を移した。
遠くとは言えない距離にいたドラゴンは、再び、大地と空気を揺るがす咆哮を上げる。
その咆哮に、「あらぁ…おねぇ~さんは…下品なのは嫌いなのよねぇ~~」と言うと、目を細め。
「そういう子には…お仕置きをしなきゃ…反省するほどの…」と言うと…。
ドラゴンは大きく翼を羽ばたかせてホバーリングしながら、クレアシアンのほうへとゆっくり進んでくる。
クレアシアンは、ドラゴンを見ながら、「ガッセナ・ハデ・ウェルス」と呪文を唱えると、ゆっくり体が浮き上がり始める。
ドラゴンはゆっくり進み、そして、大きく息を吸い始める。
クレアシアンの下から風が舞い上がり、髪が上へと浮き出すと、「エル・エウ・ドラグア!」と言い…。
………一瞬、辺りの音が消えたと思った瞬間!
目を覆いたくなるような強い光が、へラベル緑地を覆ったと思った瞬間であった…。
シュパッと言う小気味いい空気を斬る音が辺りを駆け抜け、大きく重い風圧が、クレアシアンを中心に、外の方へと駆け抜け、林に茂っている木々の下から数メートル上部を見事な切れ口で切り落とし、その威力は、数キロ先に点在する木々の上部をも切り落とした。
…そして……。
忘れたように、空気が重い音を伴う音を発し始めると、細かな砂塵を巻き上げ始めた…。
一同が目を見開いてその景色に絶句をした。
ホバーリングしていたドラゴンの首と、その高さにあった翼の一部が浮き上がると同時に…、大量の血が吹き上がり始めた。
ゆっくり翼を羽ばたかせながら下へと落ち始める首下、そして、斬り放された頭部は、口に残っていた炎を少し立ち上がらせながら、落下を始める。
それは、圧倒的であり、一瞬の出来事であった。
涼しい目で、落ちて行くドラゴンを見下ろしているクレアシアン。
大きな音と共に大量の砂塵を巻き上げながら、ドラゴンの体が大地に落下すると、下にいたものが一斉にクレアシアンを見た。
「あらぁ…注目されてしまったわぁ…」と言うと、再び、「アル・エナ・ホゼッピア」と呪文を唱える。
目を見開いた状態のドラゴンの顏が宙に浮く、それに向かって、「アル・エナ・クワッセナ」と呪文を唱えると、ドラゴンの頭が割れ始めた。
眉間の辺りまで裂けると、なかから白く輝く物が浮いて出て来る。
そのモノを見て妖艶な微笑を浮べると、ゆっくり降りてきて地面に着地をした。
そして「アル・エナ・ブラッケア」と言葉にすると、ドラゴンの首は、重力を得たように落下をはじめ、大きな音と共に地面にたたきつけられた。
クレアシアンは、水平に上げていた手の掌を上に向けた。
光る物体は、ゆらゆらと進み、クレアシアンの掌の上に来るとゆっくりとその場に落ち着く。
それを見て笑みをみせると振り返り、クラウトの元に進んだ。
「これは…その子……。狐の子にプレゼント…」と言い手渡す。
クラウトはその物体を見ると、「…これは!」と声を上げる。
アサトとケイティも覗き込むと、そこには、真っ白のひし形の石があった。
それを見て「これは…?」とアサトが問うと、「うふっ……、……そおぉ、召喚石よ…、……ドラゴンの召喚石は、成獣の場合は変化は無いけどぉ……。」とクレアシアン。
「未成獣のドラゴンは、成長する…そして…進化する…」とクラウトが言葉にする。
その言葉に、「…あらぁ…やっぱりあなたは、賢いのね。お勉強…しているわぁ…」といい妖艶に微笑み。
「その子が、それをどう育てるか楽しみぃ…特に…アポカプリスと戦うならね…」と言うと振り返る。
「今日はほんと楽しかったわぁ~~、坊やにも会えたしぃ~~」と言い、少し間を置くと、「そうだ、坊や…」と言葉にすると、その言葉にアサトはクレアシアンを見る。
アサトに向かいクレアシアンは妖艶に微笑みながら……。
「ナガミチは生きてるわよ…」と言葉にした。
その言葉に「え?」と驚きながら言葉にする。
その表情を見ながら…、「ここに…」と自分の腹を指さした。
そこには、少しだけ大きくなった女性の下腹部があった。
その行動を見たクラウトが、「…妊娠しているのか!」と問う。
その問いに、妖艶な笑みを見せ、「アイゼンさんによろしくねぇ~」と言いながら、ゆっくり…、そしてやんわりとした煙を纏いながらその場から姿を消した。
アサトの背中から大きな歓喜の声が聞こえ始めていた…。
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