第37話 紅きドラゴン……再臨! 上

 午前2時に少し前…、馬車からシスティナが出てきてアサトらのテントに入り、アサトらを起こす。


 ジェンスがタイロンを起こしに行くと、その音にグンガとガリレオが起きて来た。

 馬車の下で寝ているフレディを見つけて、ちょっかいを出し始めると、半目を開けてケイティが出てくる、その後に、人形の片手を持ち、ケイティと同じ表情でセラが出て来た。


 ケイティは、馬車を降りて、その下で尻だけを外に向けているグンガとガリレオを見おろす。

 その隣にセラも来ると…。


 大きく息を吸い!

 「っチェぇぇぇぇぇぇぇぇスト!」と言う掛け声でグンガの尻を蹴り上げる。

 その隣で、「っちぇぇぇぇぇぇぇぇシト!」とセラも真似してガリレオの尻を蹴り上げた。


 「いっでぇぇぇぇぇ」と叫びながら馬車の下でのたうち回るグンガとガリレオ。

 ケイティとセラは何故かハイタッチをすると、テントを仕舞っているアサトらへと向かって進んできた。


 門の方からランタンを持って人影が近付いてくる。

 ミーシャとレディGだ。

 見送りと、とりあえずおバカさんたちの回収に来たようである。


 「門の中なら、とりあえず安心だから」と、言っていたけど…


 …とりあえずねぇ~。


 荷作りをして、出発の準備が整うと、「気を付けて」とミーシャが言葉にした。

 「それじゃ、俺たちは、とりあえずポッドさんの手紙の通りデルヘルムに一度戻る。その時に、また…」とフレディが髪を耳に掛けながら言うと、ケイティを見て、「会えたらいいが…」と言い、ニカっと笑みを見せた。

 その笑みに引くケイティ。


 「まぁ~ここで終わりじゃねぇ~からな。元気でな!」とグンガ。

 ガリレオが前に進み出て、アリッサの前に立つと、「ここで…終わりかもしれねぇ~から…生チチ揉ましてくれても…」と言いかけた時。


 「っちぇぇぇぇぇぇスト!」とミーシャのロッドがガリレオの頭を捉え、ガリレオは横に倒れた。

 その姿を見て、「まったく!朝からエロさ全開だな!エロモヒカン!だぁはははははは」とグンガが爆笑をしていた。


 「みんな元気でね」とレディGが手を大きく振ると、何処からともなくもっそりとグラッパがあくびをして現れた。


 「それじゃ…僕ら行ってきます。また…『デルヘルム』で!」と言うと、「そうね…多分そっちの方が早いかも」とミーシャ。

 「あぁ、そうだな。俺たちは、これから温泉行ってから行くから」とグンガ。

 そのグンガをロットで殴打して、「あなたは、修行でしょう!」と言う。

 その言葉に口を尖らせて、「…ったく。暴力反対だ!っつぅ~~の!」と頭を擦りながら言葉にしたグンガ。

 その姿を見て笑う一同。


 「じゃ…行きますか」とアサトが声をかける。

 システィナ、ケイティとサラ、アリッサが荷馬車後方から乗り込み、タイロンが手綱を持って乗る。

 「気をつけてな」とフレディが手を差し伸べると、「お前らこそ」とクラウトがその手を握り言葉を返した。

 アサトとジェンスは準備運動をしてから、「行きましょう!」と声をかけ走り始める。

 クラウトが馬車に乗るとタイロンが進ませた。


 グンガら一行が手を振って見送っている。

 そう言えば…、修行って何するんだろう…とアサトは思っていた。


 見送るグンガ一行。

 姿が小さくなると、「さぁグンガ、ガリレオ!今日からあなた達を…あの人の元に連れて行くからね!」とミーシャが言葉を発した。

 その言葉に大きく目を見開くグンガとガリレオ。

 「そうか…」とフレディが鼻で笑うと、そのフレディを見て。

 「あなたもよ…これ、あなたの得意分野でしょう…」と流し目を送る。

 「み…ミーシャさん?」とグンガ。

 「ナニ?グンガさん?」。

 「あの人って…もしかして?」とグンガ。

 「あの女はマズいぞ、マジ殺されるぞ!」とガリレオが言葉にする。


 「そうだな…巨乳でも貧乳でもないくせに偉そうに…しているあのアマぁ…」とフレディが言うと、ニコニコした顔で、「とにかく行くわよ!『レッテウ山』の頂まで!」とミーシャは言い、『グルヘルム』の街に向かって進み始めた…。


 3人は顔を見合わせるとため息をつき、その後をトボトボ追う、グンガ、ガリレオ…そして、フレディ…。


 その3人を追い抜いてレディGがミーシャに並ぶ、グラッパは…一番後ろをもっさりと進んだ。


 列の先頭で、「♪やまぁ~の上に行こうぉ~よ!ころぉされぇぇにぃ~ぃ~~ハイ!」とミーシャが歌う。

 その歌声が『グルヘルム』の壁外に響き渡り、力ない歌声がその後についって発されていた…。


 さてはて…『レッテウ山』の頂にいる、グンガらが恐怖する女性とは…。


 朝焼けが大地に色を取り戻し始めた時間…大きな爆発音が、一つ二つとアサトらの向かう先から聞こえ始めた。

 クラウトは馬車の上から、その方向を目を細めて見ている。

 アサトとジェンスも立ち止まり、その方向を凝視した。

 クラウトの予想通りである。

 お供の数が多いなら、気を抜いている時に奇襲をするのが最適…これは戦の常套手段である。


 アサトはジェンスを見て頷くと、二人は駆けだし始めた。

 その二人をクラウトが制止させ、タイロンに馬車を止めさせると、一同を馬車から降ろす。


 アサトらの手前には林がある、その向こうが戦場のようだ。

 大きな雄叫びが聞こえると、多くの声が走り出す、その走り出した音が地響きのように聞こえてくる。

 空気を裂くような小気味いい音が、弦を弾いた音の後に何度も聞こえて来た。

 しばらくすると剣と剣であろうか、それとも盾と盾…とにかく、何かがぶつかり合う音が聞こえて来た。


 「今日は見るだけだ!」とクラウト。

 その言葉にタイロンとシスティナ、アリッサとケイティがアサトを見る。

 その視線に小さく頷く。


 「だが、装備はしておく」とクラウトが言葉にした。

 その言葉に、「装備して観戦か?」とタイロンが聞くと、その言葉に空を見上げる。

 「…ドラゴン…」とアサトがクラウトに向って言うと、クラウトは視線を降ろし、一同を見て、「…あいつは、必ず来る!」と言葉にした。


 その言葉にシスティナの傍にいたセラが、システィナの服を握った。

 クラウトの声が、セラにも、そのモノの恐ろしさを語っているように感じたのだろう。

 小さく息を飲むと、それがわかったシスティナがセラの手を握りセラを見た。

 視線があうセラとシスティナ。

 不安の表情を見せているセラにシスティナが微笑む。


 「とりあえず、用心しておいても損はない。もし巻き込まれる事があったらの場合だ。」と言うとアサトを見て、「今日は、長太刀を持て!」と言葉にした。

 その言葉に頷く。


 「セラとジェンスは後方に下がる準備をして観戦をする。そばにはシスティナさんと僕。巻き込まれたら、手前がジャンボとアリッサ、アサト、ケイティの布陣で、セラとジェンスを優先的に逃がす!」と言うと、タイロンが立ち上がり。


 「セラ、ちゃんと守ってやるからな!」と指を立てて馬車に向かう。

 アリッサも小さく微笑みその後ろを追った、ケイティはセラの近くに来て、「おねぇちゃん達が守るからね!」と言うと馬車に乗り込む。

 アサトはジェンスに近づいて、「セラを頼むよ!」と声をかけて馬車に向かった。

 システィナは、先頭布陣の4名が出て来るのを待っている。

 クラウトは、戦場からあがる煙を見つめていた。

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