第32話 おバカトリオと生まれる命 下
アサトとクラウトはグラッパの傍に座り、その時間が来るのを待った。
グラッパはいびきをかきながら熟睡をしている。
しばらくするとケイティが出てきて、「お湯沸かしてって言ってる!」というと、「おバカ3人の罪は許すから、至急お湯を沸かしなさい。…ですって!」と言い中に入って行った。
その言葉にグンガとガリレオが薪を集め始め、集めた薪にフレディが火をつける。
馬車にある鍋などをアサトが出してきて、その鍋にフレディが氷を注ぐ、それをグンガとガリレオが沸かすと、クラウトとアサトが中に持ってゆく。
グラッパは寝ている…。
そして…。数時間後…。
「おぎゃぁ~~、おぎゃぁ~~」と赤ん坊の泣き声が聞こえると、男らはその場にへたり込んだ。
そして、間もなくげっそりとしたレディGとケイティが出てきて、宝の山の前で大の字をかいて横になる。
それから少ししてミーシャが出てくると、「よかった…、女の子…生まれたわ」と言いながらケイティ達のそばに腰を降ろした。
そのミーシャを見て、「産まれるなら、産まれるって言えばよかったのに!」とグンガ。
「でも、あいつが産むわけじゃないから……」とガリレオ。
その言葉に「だよな…」とグンガ。
すると、「おバカコンビ!お座り!」とミーシャ。
その言葉に正座をするおバカコンビ。
洞窟の奥から巨大な影とそれから少し小さな影が現れた。
その影を見てグンガが立ち上がり、「来たなオーガ、お前を」と言うと、「お座り!」とミーシャ。
その言葉にグンガがまた正座をする。
「大将、助かったと言っている」とミーシャらに向かって頭を下げた。
その行動に、「頭を下げるのは、こちらの方ですよ、ほんと、うちのおバカコンビが迷惑かけました。」と言い頭を下げた。
「これ、お礼…」と通訳オーガが宝の山を指さす。
ミーシャは、フレディを見てから、「ここで育てるのにはいろいろと必要になるわ」と言葉にすると、フレディが宝の山に近づいて、「君たちはどうしたいんだ?」と質問をした。
すると、オーガはここへ来た経緯を話し始めた。
オーガの話しでは、父親オーガと母親オーガは南の方出身で、リベルについて来たが、数か月前に妊娠がわかり、戻ろうと思ったが、故郷までは遠く、やむなくここに居ついたようである。
ここに居るオーガは幼馴染で、彼らの護衛をしていたようであった。
人間に危害を加える事はする気が無く、出来る事ならここで子供を育て、子供が大きくなったら故郷へ帰りたいと言う事である。
ここにいるオーガは8体、うち女性が1体で男が7体…そして、赤ちゃんが1体である。
「なら…君たちに安住を約束しよう」と言うと、フレディは、巨大オーガと通訳オーガを伴い、セラの村に行く事にした。
アサトらもフレディについて行く。
セラの村に着き、事情を説明すると、ポドメアが隣の村の村長が知人なので、仲介を申し出てくれた。
オーガと近辺の村で友好条約みたいなのを結ぶ。
オーガは近辺の村の護衛や労働力として仕事をし、村からは、作物の生産方法を聞き、畑を耕し、畑で収穫できない食料は分けてもらう。
共存共栄をして生きる事を約束させた。
その夜は、オーガの誕生とセラ、ジェンスの送別会を兼ねた大宴会が執り行われ、出発は翌日となった。
ポドメアとジェンスの父親が、オーガに家を建てる事にしたようである。
その場所はパラボラアンテナと太陽光パネルの傍であり、これで、情報漏洩の危険は無くなるとの事であった。
その場所に小さいがオーガの村を作り、畑も耕せる広さがある土地もあったので、そこで畑を耕すことにしたようだった。
オーガは喜んでいるようだったが、グンガとガリレオは、ちょっと意気消沈していた。
宝の山から数点頂いて、これからの生活の足しにするようにと、ミーシャがいっていたようである。
子供にはなにかとお金がかかると言う事だ、人間とオーガは同じなのだろうか…。
最後に、協定を守らなければ、どんなに離れていても、おバカコンビを送り込むとミーシャが脅していたのが、ちょっと可笑しかった。
焚火の前で奇妙に踊るグンガ、その向こうにはアリッサを挟んでジェンスとガリレオがちょっかいを出している。
クラウトのそばから離れないセラに、ケイティはフレディに追い回されていた。
レディGとタイロン、そして、ミーシャは話をしているし、グラッパは…寝ていた。
アサトは、そんなみんなを見ている。
そのそばにシスティナが来て話かけて来た。
「セラさんは…大丈夫かな…」
その言葉に、「今回は、卑怯かもしれないけど、クラウトさんに任せた。」と言うとジュースを口に含む。
「卑怯なのかな…」とシスティナ。
「どうだろう…少なくとも僕は卑怯な奴と思っている。この旅は、生死が係る旅…でも、その事をお父さんもお爺さんも了解していた…。旅には必ず付いて回るモノだと…。僕は、その責任をクラウトさんに託してしまったんだ…リーダー失格だよね」と小さく苦笑いを浮かべる。
システィナは首を横に振り、「失格じゃないよ、クラウトさんだって思っていると思う。すべてがすべて、アサト君が背負う事は無いって…だから、わたしも頑張って、セラさんやみんなを守れる強さを身につける」と言うと、「ありがとう…うれしいよ」と答える。
すると、「私だけでないよ、ケイティさんも小さな妹が出来たみたいって言ってたし、アリッサさんもお姉さんとして守らなきゃって言ってた。だから、アサト君が全部背負わなくても、私たちはアサト君らが決めた事は、ちゃんとカバーするから…」と言うと小さく微笑み、「行きましょう…『アブスゲルグ』まで…」と言葉にした。
その言葉に頷いて、「ありがとう…」と言うと再び焚火の場所にいる一同を見る。
…システィナさんは、僕らを見ていてくれているんだ、ほんとにありがとう。
…もしかしたら、この中で、一番状況を理解して、行動しているのは、システィナさんなのかもしれない、その気配りには、本当に頭が上がらない。
これも…強さなのかな…
旅にあるものに対しての覚悟…、それを受け入れ行動をする覚悟…。
…そうだね。一人も欠けずに…行こう!『アブスゲルグ』まで…。
翌日。
朝食を終えると荷造りをする。
ポドメアから長太刀と太刀2本を受け取り、エルドアからタイロン、アリッサ、そしてケイティが以前使っていた武器を受け取った。
そばでは、セラの父親からレディGとグラッパが武器を受け取っている。
母親に付き添われてセラ、その後ろには、ジェンスが両親に付き添われて歩いていた。
アサトは笑みを見せながら手を差し伸べる、「さぁ行こう!」と…。
その手を見たセラは、アサトを一度見ると駆け出し、クラウトの腕に抱き着いた。
その姿を見ていた、ジェンスが苦笑いを見せている。
アサトは出した手で頭を掻いて、「それじゃ…お嬢さん。お預かりします。」と言い、頭を下げると、セラの母は涙を流し、父親は大きな手をアサトに向けた。
そして……。
「君に任せた。」と言葉にした。
その言葉に頷いて手を握り笑みを見せ……。
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