第28話 ハイテク機器とイリアナワニの肉 下

 門の傍に来ると、イモゴリラが興味を示す。

 そのイモゴリラに、「やんねぇ~よ!ゴリラ!悔しかったらチンパンジーにでもなって見ろ!」とグンガらは言い捨て、村へと入って来た。

 「おぉい、ミーシャ。これ捌く前に、治癒してくれ!何か所か噛みつかれたから!」と言い、一同の前にくるとワニを頬り投げた。


 グンガは、至る所から血が出ている、そしてガリレオも同じようであった。

 「いいわぁ。今日はご褒美に体力アップの魔法もかけて挙げる」と言いロッドを向ける。


 グンガとガリレオは、ミーシャの言葉に、ハイテンションでハイタッチをして、歓喜の声をあげて喜んでいる。


 ワニは全長5メートルほどで、この騒ぎに村の者が集まりだした。

 そこに来たセラの父親は、このワニを『イリアナワニ』と言っていた。

 このワニは、古の時代のワニ『イリエワニ』の子孫のようである。

 昔は海岸線に生息していたが、この地に適応して、このような奥地にまで生存範囲を広げて来たようであり、人はもちろんの事、獣人の亜人やゴブリン、体長が大きいモノはオーガまで襲うと言う。

 オーガを襲う種が現れてから、奥地へと生存範囲を広げたと言う説もあるようだ。

 とにかく、ここらでは珍しくもない種類である。

 ただ、生身の人間が狩ったと言う話を聞いた事が無かったので、少し驚いていた。


 「すっげぇ~だろう!」とグンガ。

 元気になったグンガが、仰向けで寝転ばしているワニの腹をポンポンと叩いていた。

 「こいつ、忍術使うんだぜ!」とグンガ。

 「忍術ですか?」とアサトが聞くと、「おめぇ~だれだ?」と首をかしげてアサトを見た。

 「さっきまで一緒だったろう、アサト君だ!」とフレディが言うと、少し考えて、 「まっ、いいや。そうだアサト!忍術だぞ!こいつ、術を使うんだ!!」と言い、腹をポンポンと叩いた。

 「へへへへ…」とアサト。


 「どんな術を使うか教えてやる!」と言い、腹の上に飛び乗ると腕組みをして。

 「こいつな、水面から目だけ出して近づいて来るんだ、そして、すぐそこまで来ると…ブクブクと口から空気を吐き出すんだ!」と言うと、ガリレオがミーシャからの治癒が終わり、すくっと立ち上がるとワニの側面に立ち、一同に向き合って。

 「そうなんだよ、ブクブク…あれは…なんだ?魔法か?呪文唱えてたな!」とグンガを見ると

 「おぉ!そうだそうだ!呪文だ!呪文唱えてたんだ…!!」とニカっと笑みを見せて言葉にする。


 その言葉にクラウトが頭を押さえる。

 フレディが小さく鼻で笑うと、ミーシャが冷ややかな視線を2人に送った…。


 「そしたら!、次々とこいつの分身が現れてな!」とガリレオに賛同を求める。

 その言葉に、「そうそう、すっげ~数いたんだよ!でもな…」といいながら、ワニの横腹に肘をあてて寄りかかると、流し目でアリッサをみながら

 「…俺が、ぶった叩いた!」と言い、ちょっと格好をつけて言葉にすると、


 「あぁ?何言ってんだ!俺がぶっ飛ばしたんだろう!」とワニの上でグンガが叫ぶ。

 その声に腹から離れて上を見て、「なに言ってんだ、俺がこいつのド頭叩いてなかったらやっつけてなかったろう!」とガリレオ。

 その言葉に、「はぁ?俺がこいつの鼻先登って眉間にパンチ食らわしたからやっつけたんだよ!」とグンガ。


 すると…。

 「ねぇ…あんたたち?」とミーシャが少し引きつりながら、後ずさりを始め。

 「これ…死んでるんだよね…」と聞く。

 腹の上で「…んなもん知らねぇ~、動かなくなったから持ってきただけだ!」とグンガ。

 その言葉に、一同が目を見開いて後ずさりを始めた。


 「なんだよ…どうしたんだよ~」とガリレオ…。

 すると、ガリレオの上から

 「お…おぉ?なんか…おもしれ~ぞ!」と言いながらグンガが跳ね始めた。

 ガリレオはグンガを見ると腹を見る、そして…。


 近くに何かが近付いたので、その方向を見ると…。


 さっきまで閉じていたはずの目が開いてガリレオを見ていた。

 ゆっくり…青ざめながら一同の方を見ると、一同も目を見開いてガリレオを見ている。

 「あぁ…あぁぁぁぁ…ど…どうしよう…」とガリレオ…。


 腹の上ではグンガが飛び跳ね、歓喜の声を上げている。

 「が…ガリレオ…。残念だ…面白く食われろ」とフレディが背をむけて肩を小さく揺らしながら言葉にする。

 「ふぇ…フレディ…?」


 するとワニは尾を大きく上げて地面をたたき始めた。

 さすがのグンガも異常な事に気付き、「なんだこれ?生きてんじゃね~か!」と言いながら腹の上をぴょんぴょんと跳ねている。

 とおもったら、大きく尾で地面をたたき横になったワニ。


 振り落とされたグンガは、立ち上がると「やっべぇ~」と言いながら一同を見て…。

 「これ…どうしよう…」と指さした。

 横になって体勢を立て直そうとしているワニを背にしているグンガ。


 一同の前にフレディが立つと

 「絶好のシチュエーションだな。」と言いながらロッドを構え、「焼くか?感電か?それとも…冷やすか?」とにやけながら言葉にした。

 その言葉に、「そうね…」とミーシャ。

 少し考えると、「凍らせましょ」と不敵な笑みを浮かべて言葉にして、「それじゃ…グンガ、ガリレオ…。さよなら…」と言い、笑みを見せた。


 「…ま…待て待て…。フレディ…」とグンガ。

 その近くのガリレオは逃走の準備に入る。

 それを見て…。


 フレディーは…、「往生しろよ!」と言いながら…。


 大きな焚火の周りに、大きく切り分けた肉が刺さった棒を刺し、その焚火をアサトらと村の住人が囲んで晩御飯を食べている。

 その中に、毛布に体を包み込んで鼻水を流しているグンガとガリレオ…。


 タイロンとグラッパ、そして、セラの父親とアルドラの4人でワニを捌くと、捌いた肉をミーシャとシスティナ、ポドメアの3人で調理を始めた。

 セラの家の中では、ケイティとアリッサがセラの母親に手伝い。

 レディQとアサトとジェンスの3人でワニの革を洗った。

 フレディとクラウトは火の準備をしながら、グンガとガリレオの解凍をして、今に至っている。


 クラウトは、システィナとケイティに挟まれてワニ肉を頬張るセラを見ている。

 ケイティの隣のアリッサがセラに飲み物を渡す。

 その行為に笑みを見せながら受け取るセラ…。


 「アサト…食事が終わったら相談がある」と言うと、アサトはクラウトを見る。

 その隣のフレディは耳に髪をかけながら、「俺も同席していいか?」と聞いた。

 その言葉に頷くクラウト。


 その視線の向こうには…。

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