第23話 その考えこそ…強き者の考え…。 上

 「少年の話しを…」とクラウト。


 「あぁ…あの子か…あの子はとにかく尖った子であった。この地でも一人でいなくなったと思ったら、傷だらけで帰って来た…。たぶん、この呪いをうやんでいたのだろう…。死ぬつもりだったのかもな…。それを見かねたポドリアンの姪が、ポドリアンに相談し、強くなりたいのなら強いモノから学べ、その呪いを解きたいのなら、呪われた者の下で解決を見いだせ。と言ったような、言わないような…とにかく説得をして、彼を『デルヘルム』にいる、ポドリアンが知る中で一番強いと思われる者の所に連れて行ったようだ…」と言い、パイプを吸い、そして煙を吐き出すと…。


 「最近は、てんで見ないが。ポドリアンの連絡によると、その少年にも弟弟子が出来、その師匠の遺言でその者を強くしていると聞いていた。その者がどのような者かはわからないが…少年は、色々な修羅場を生き、そして、呪われている状況でも強く生きている…」と言うと、パイプの灰を床に落とす。


 そして「…わしは託したのだ…少年に…」と言い、上を向き。

 「少年に託した、ポドリアンの親父の短剣…わしは歳だ。彼は、まだまだ生き、そして、その呪いを解くカギを見つけることが出来る。だから…、『夜の王』が復活した時に討伐戦に参加するのなら、ヴェラリア鋼の短剣を託すと…。少年は、約束した…。これは北の国だけの話ではない。『夜の王』の配下は、死者…、灰になっていない屍すべては『夜の王』の配下になりえる…。この世界、全てのモノが死ねば、全てのモノが配下になる…だから、選ばれた者が討伐しなければならない…。」


 「思い出しました…」とアサト、その言葉にアサトを一同が見る。

 「アルさん…言っていました。『』って」と言うと…、ロッキングチェアーから覗き込むように狐の老人がアサトを見た。

 そして、「おまえさんが…少年の弟弟子か?」と聞くと、小さく頷き。


 「…アサト…といいます。アルさんの弟弟子です」と言葉にする。

 「アルさん…か…」と銀狐の老人が言葉にする。


 「おぬしが…少年の弟弟子か…、なら…」と言うと、大きく息を吐き出して、「太刀と言う代物の所持にも合点が行くな…」と言うと、一同を見た。

 「わしが気になったのは、太刀の事だけだ…、年寄りの興味。その太刀とやらは使い物になる武器なのか?」と言うと、「はい」とアサトが答える。


 「そうか…ポドメアからは聞いていた。わしも見た事のない武器。彼女も鍛えると言う言葉を理解するのに時間がかかり、その鍛える事を理解して、形に出来るまでの工程などにその武器の強さを感じたと言っていた。よかったら見せてもらえるか?」と言うと、アサトは小さく頷いて立ち上がり、脇に備えていた太刀を抜いた。


 その刃は、天井にあるLEDの光をしっかりと映し出し、緩やかに反っている刃の峯、その先端の鋭さを見出していた。


 「…なんだ…この武器…」とフレディが声を上げると、グンガの一行がその刃に釘付けとなった。

 「…まぁ…美しい武器ってこの事かもね…」とミーシャが言うと、タイロンの横に座っていたグラッパが小さく、引くい声で唸っている。

 レディGもケイティの肩を小突いていた。


 「さすがに…ポドメアが所持しているモノとは違うな…」と笑い、「もう仕舞いなさい」と言うとロッキングチェアーに身をゆだねた。


 「時は経つな…、そのような武器を見ても、心がはしゃぐが体が動かぬ…。」と言うと小さく頷いた。


 「あの…」とミーシャ。

 その言葉に目を開けたのか、光に瞳が反応したように見える。

 「ここの部屋のモノは…」と聞くと、「これは、古の技術…。この技術が無ければこの地下で、このように快適には生きてはいけない。」


 「古の技術?」とアサト。

 「うむ、その原理は分からないが…パネルが太陽の光エネルギーを受け、太陽電池が発電したなんとかを、パワーなんとか…と言うモノでなんとか電力にかえ、…はははは…。色々説明されたが…わしもさっぱりわからんのじゃよ…。」

 「…それは…誰が言っていたのですか?」とクラウト。


 「うむ?ふぉふぉふぉ…、その詳しい事か?、…ポドメアの所に居候しているモノに聞け!」と言い小さく笑い声をあげた。

 そして、「もしかしたら…ぬしらの誰かが、その存在を疑問視している…モノに出会えるかも…」と意味深な言葉を発した。


 その言葉に、クラウトがメガネのブリッジを上げて、「…錬金術師…」と言葉にすると、その言葉に、「…やはりな…。」と言い、「ここに居る者は、その錬金術師の弟子だ!」と言う。


 アサトはクラウトを見ると、「驚いた、こんなところでピースを埋める為の答えが見つかるとは…」と言い、アサトを見た。

 そのクラウトに向って頷く。


 「アポカプリスの鱗は…」とアサト。

 その言葉に「…あぁ…ポドメアも言っていたな…。だが、その存在自体、わしは知らぬし、見た事も関わった事も無い…」と言うと、「そうですか」と小さく言葉にする。

 「わしの興味は、その太刀だけだ。ぬしらの興味は、ポドメアに移ったのではないか?」と言うと、クラウトは立ち上がり。

 「興味と言うか、色々教えていただいた事に感謝しております。また、来ても?」と言葉にすると、ロッキングチェアーを止めて、小さく息を吐き出すと。


 「…その相談は…、わしらを納得できるような説明が出来たら…聞こう」と強く言葉にした。

 その言葉にクラウトの表情は真剣になり、「確かに…。なら、しっかりと説明させていただきます…」と言うと、ミーシャとフレディを見る。

 二人もクラウトの考えている事が解ったのか、小さく頷く。


 その行動を見て、アサトを見ると、「それじゃ…、行こうか」と言い、その場を後にし始めた。


 アサトは鉄格子の向こうにいる影を見ている。

 その影は、ゆっくりロッキングチェアーに揺られながら、パイプに火をともす。

 その火に映し出された顔には、先ほどの石化が無かった。

 最後に動き出したアサトに、「少年は、何を求めて旅をしている…」と言葉をかけた、その言葉に一同が止まりアサトを見る。


 アサトは、小さくうつむくと、「…何を求めて…。求めている事はわかりません。ただ、知りたいだけなんです。この世界がどういう世界であるのか…。」と言うと、「この世界を知りたいか…」と言葉にする。


 パイプを大きく吸って、煙を鼻先と口から大量に出して、「知りたいから旅をしている。知ったら…?」と聞くと。

 「そこに、僕がこの世界でどう生きるか…を決めたいと思います。」と答える。


 「狩猟者でない道を選ぶのか?」と聞くと。

 「狩猟者である事がその道の最後にあるのなら、その道を選びますが、選択肢は、それ以外にもあると思います。」とアサト。

 その言葉に、「戦わない世界、戦う必要のない世界…」と呟くように老人が言葉にした。


 「それが、なぜか…僕の心の中に大きくあるような気がします…」と老人を見て言うと、「ふぉふぉふぉふぉ…。かつて古の時代には、そのような時代も存在したと言っていた、だがそれはうわべだけだ。深部には必ず争いがある。その争いは、大なり小なり存在していた。」と言うと、煙を吐き出し…。


 「わしら生あるものは、いつでもどこかで争っている。それは、生きる為の…原動力なのではないか…とわしは思っている。」と言い…。

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