第21話 『夜の王』と戦った、銀色の召喚士 上

 クラウトはLEDと言う電光を発する筒を見る、そして、天井に這わさっている四角い筒を見ると、その筒が下りて行っている2層を見た。

 そこから聞こえる低い唸り音…。


 「…とにかく…フレディの言う通り危険な案件だ。バカなグンガだから成立しているようなもので、少しでも賢ければ…」といい、「もっともな判断だ」と付け加えた。

 その言葉にフレディはグンガを見る、そのグンガをクラウトも見た。


 グンガはガリレオの頬を叩いて起こしている。


 すると、「ガリレオも…少しあるみたい…」とミーシャが言葉にする。

 クラウトとフレディはミーシャを見る。

 その視線を見ながら、「グンガとは違うけど…ガリレオは、グンガの親友だったみたいなのよ…、誘われた時…グンガの話しでは、ガリレオが消えて行くのを見て、グンガが抱きついたみたいなの…するとね…」と言葉にすると、グンガを見ながら、「グンガが拾った宝石が、反応したみたいなの…首にネックレスのトップで着けていたようだけど…」と言い、クラウトを見る。


 「宝石…」とクラウト。

 「誘われる何日か前だって、グンガの話しでは、世界が10年以上前からドラゴンとかマモノの被害が出ていたみたい、そのドラゴンがその世界に現れた場所が、グンガが住んでいた場所の近くで…そこでたまたま見つけた宝石…って言っていた」とミーシャ。


 「帰還のオーブの破片か?」とクラウト。

 「…それはなんだ?」とフレディ。

 「ポドリアンさんから連絡は無かったか?」と聞くと、「おまえ…なんでポッドさんを知っているんだ?」と、目を丸くしてフレディが聞いて来た。

 その問いに、「それは…」と言い始めると。


 「おぃ!先進めよ!」とグンガが後ろから声をかけて来た。

 「こっちはガリレオ背負っていて疲れるんだから…」と…。

 その言葉に、「この件は、あとから…」とクラウト。

 フレディとミーシャは、クラウトを見て頷いた。


 それを見ていたアサトは、3人の会話を聞いていた…。


 地下2層は奥行き5メートル、幅も5メートルほどの空間となっており、部屋の奥にはおおきな箱型のモノがあり、その物が重低音で動いていた。


 部屋の天井、1/3にLED蛍光管が数本規則正しく並べてあり、LED蛍光管の設置されていない場所は、暗くなっているが、ぼんやりとした、LED蛍光管とは違う光があった。

 その暗い空間には、スローな音楽が小さなノイズを伴って響いている。


 その音がする方向を見てみると、そこには大きなラッパ状の口があり、その下には、黒い円盤状のモノが回っている箱状のモノがあった。


 セラが立ち止まると振り返り、「ここから先には行けないから、」と言う。


 その先には鉄格子があった。


 音楽を奏でていると思われる、大きなラッパの口が付いている箱状のモノは、その鉄格子のなかにあり、その近くには、まっすぐに立った柱状のモノの上に、うっすらとした光を放っている小さな傘がついているモノがある。

 ぼんやりと見えた光は、その光であり、そのようなモノが4本、その場に不規則に佇んでいた。


 そのそばにロッキングチェアーに揺られ、20センチ程の長さがあるマウスピースに、小さなボールトップがついているパイプをくわえた、耳が立って鼻先が長く伸びている影が見えた。


 動物の横顔…。


 流れている音楽を、ひじ掛けの上で指を小さく動かしてリズムを取っていた。

 そこにある空間は、音楽のせいかもしれないが、ゆっくりと流れている感じがあった…。


 「じっちゃん!」とセラが言うと、ゆっくりこちらを見る。

 「連れて来た」と言うと、「座りな…」と少しかすれた声で言葉をかけて来た。


 アサトらは辺りを見渡し、近くにあった長椅子らを手にすると、鉄格子の前に持ってきて腰を降ろした。


 「よく来たな、太刀を持つ男、そして、その仲間達」と言葉にする、アサトはクラウトを見ると、クラウトは頷き、「なぜ…太刀を…」と言うと、「コッサ…ははは、そうじゃな…わしの使い魔。サルのコッサが、ぬしらの者が携えている武器を拝見させてもらったのじゃ」と小さく笑い言葉にした。


 「コッサ?」とケイティ、その言葉に「これじゃ!!」とセラが先ほど抱えたサルの使い魔を見せた。

 「その太刀は…、ポドメアも持っておる」と暗闇から言葉が聞こえた。


 「ポドメア?」とクラウトが言うと、「おぉ…そうか、まだポドメアには会ってないか…、この近くの工房で旦那のエルトアと鍛冶仕事をしている」と言葉にした。

 その言葉に、「…その方が、太刀を…」とクラウト。


 「あぁ、彼女も2本もっており、使い物にはならないが、彼女の自慢の作品だから持ってきたと言っていた」と言うと、「…それって…」とアサト。

 その言葉に、「…あぁ、一つの疑問がここで払拭されそうだ」とクラウト。


 すると、ロッキングチェアーを止め、ゆっくりと立ち上がり、「エラ・フィッツジェラルドでも聴くか…」と言い、大きなラッパがついている箱状のモノのそばに行き、今回っている円盤から棒状のモノを外した。


 すると音楽が途切れる…そして…。


 その円盤状のモノを近くにあった袋みたいなものに仕舞い、その近くにある棚から同じような物を一枚ずつちらちらと半分ほどだし、なにかを探し、見つけたのか、その袋状のモノを取りだすと、中から円盤状のモノを取りだし、箱の上に置くと、箱状のモノについているなにかを押す。

 と円盤状のモノが動き出し、先ほどの棒状のモノをその円盤状のモノの上まで持ってきた。


 すると…音楽が鳴りだす。


 小さなノイズがまぎれるスローな音楽。

 その音楽には、優しく、そして艶やかで色っぽくあるが、いやらしくない声質の歌声が音楽に乗せて奏でられた。


 「エラ・フィッツジェラルド…1960年代を代表するJAZZシンガー…わしは、この歌声が好きじゃ…」と言うと、パイプをくわえ、小さく腰を降りながらロッキングチェアーへと進んだ。


 「それは、何ですか?」とアリッサが言葉にする。

 その言葉にアリッサを見て。

 「これか…、これは古の遺物…、蓄音機だよ、お嬢さん。電気では動かないが…味がある」と言うと目を細め、ロッキングチェアーに腰を沈めた。


 「…蓄音機…」とフレディ。


 「先ほどの女性は…と言うか、ここの状況…、そして、なぜ私たちをここへ呼んだのか…まったく理解が出来ません」とクラウトが聞くと、「理解できないか…そうだな。」と言い、長い鼻の下あたりにある口から、大きな煙を上げて上を向く姿が見え、その影が、「まずは…何が聞きたい?」と言葉にした。


 「…じゃ、じいさん!」とグンガが立ち上がり、「便所!どこだ?」と言葉にすると、「…グンガぁぁぁ…」とミーシャ。

 「おれ、ションベンしてぇ~」と言うと、鉄格子の奥の影が笑い声を出し。

 「はははは、そうか、しょんべんか、セラ連れて行ってあげなさい」と言う、すると、セラは立ち上がり、ガリレオを背負っているグンガを連れて上へと向かった。


 その後ろ姿を見て、「おじいさん」とミーシャ。

 ミーシャは鉄格子の向こうにある影に向かって、「すみません…ほんとうにうちのグンガは、場をわきまえないと言うか…」と少し頭を垂れると…。


 「構わんよ、別に大切な話をしようと思っている訳ではないからな…」と言い、音楽に合わせてチェアーをゆっくり動かす。


 「…それでは…、色々聞きたい事がありますが…」とクラウト。

 「僕の推測では…」と言うと、その言葉にロッキングチェアーを止め、一同へと顔を向けた。

 「推測…?」

 「ハイ…あなたは…夜の王と戦った、銀色の召喚士…」と言葉にする。

 「…夜の王?」とアサト。


 その言葉に小さく頷いて、チェアーのモノの反応を見た。

 「うん…そして?」とそのモノ。

 「…何かから逃れてここに来た。その何かは分かりませんが…」と言葉にする。

 その言葉に、パイプを銜えて吸うと、口から煙を吐き出して、「昔の話だ…」と言葉にした。


 上からセラが降りてきて、システィナとアリッサの間に座る。


 「2年ほど前に、この地に若者がやって来た…。」と話を始めた。

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