第16話 グンガとガリレオ。そして、時々オーガ 下

 「グンガ!新記録じゃね?」とガリレオ。

 「あぁ?うっせぇ!チキショウ…俺が小さいからって…。あんなに飛ばしやがって!ぶっ飛ばすのは俺なんだよ!」と言いながらガリレオを通り過ぎた、すると、「グンガ…おまえすっげぇ血出てるそ!」と言葉をかける、その言葉に立ち止まり。

 肩越し、脇下…反対の肩越し、脇下…そして…股下から背中を確認すると、血が流れ落ちている事がわかり、その血を手に付けて、「あぁ~~ミーシャ!死ぬ、死ぬ!早く止めてくれ!!」とその場であたふたし始めた。


 その姿を見てグンガ一行が大声で笑う。っていうか…このパーティーって…。


 「まだよ…」とミーシャ。

 「おめぇ~、このままだと死ぬって!」と少し涙目で嘆願するグンガ。

 でもニヤニヤしながら、「まだよ…まだまだ…」とミーシャ。


 その隣で「グンガ…おめぇ~死ぬんじゃね?」と笑いながらガリレオが言う。

 「ガリレオ!おれ…ミーシャに殺される!」と言いながらガリレオに抱き着く、すると、「おまえ!きったねぇ。抱きつくな」と振り払うと、ミーシャを見て、「お願いします。血…止めて下さい」と膝を折って座り、土下座をした。


 そのそばにミーシャが進み出て、「…そう?、気分は?」と言うと、「あぁ…なんか、ちょっとクラクラしてきた…」と頭を上げてミーシャを見上げる。

 「…ちょっと?」とミーシャ。

 その言葉に瞼が落ち始め、「…うん…ちょっと…って言うか…ほわほわしてきた…」と言うと、ミーシャはニコっと笑い。

 「そろそろね…」と言うと、「光の神よ私に力を…神の手」と言い、グンガにロッドを向けた。


 光がグンガを包み込むと、傷がみるみるうちに塞がってゆく、そして、グンガがその場に倒れ込んだ…と思ったら。

 いきなり立ち上がり、「よぉ~し!治った!」と言うとオーガを見た。


 「なんか、まだクラクラしてほわほわしているけど…戦えるぞ」と言いながらオーガに向かって進み始める。

 ミーシャは小さく微笑みながら、「大丈夫よ。時間の問題」とアサトに向かって言い、馬車に乗り込み始めた。


 向かってくるグンガに、「グンガ!俺がやるから見てろ!」とガリレオが言い、グンガの前に立ってオーガと対峙をした…が…。

 1体足りない。

 剣を構えたまま辺りを見渡すガリレオ、そのそばにグンガが来ると、「…あれ?デカいのがいないぞ?」と言葉にする。


 すると、通訳のオーガが、「…どうすれば来なくなる!」とグンガに向けて言葉にした。

 その言葉に、「あぁ?何言ってんだ、どうすればって…きまってんじゃねぇ~か。俺がオーガプリンスをぶっ飛ばして、オーガプリンスが、参りました!って言ったら…この喧嘩は終わりなんだよ!」と言う。


 すると通訳オーガは頷きながら、「わかった!」と言い、洞穴の中に入ってゆく。

 その光景を見ていると、中から巨大オーガが出てきて、グンガの前に立って見下ろした、そして、「…お…お…れ…か…かって…こい!」としどろもどろで言葉にする。

 その言葉にニヤリと笑うグンガはガリレオの前に立つと、「何言ってるかわかんないけど、やる気になったな。行くぞ!」と構えた。

 洞穴から通訳オーガがなにやら持って見ている。


 グンガは、再び、「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」と叫びながら力を込めると、「オーガ!ぶっ飛べぇぇぇぇぇぇ」と叫びながら突っ込み、オーガのみぞおちを拳で力いっぱい殴った!…が…。


 オーガはグンガを見下ろす…。

 ニカっと笑ってグンガが見上げる…と…。


 いきなり巨大オーガが後ろによろけて片膝をつき…、なにやら言葉を発していた。

 すると、「く…わぁ~~~まいった~~~と言ってます」と洞穴から通訳オーガが言葉にする。


 その言葉に…拳を突き出した格好のままのグンガ、そして、呆然としているガリレオ…。

 一同もその姿を見ていた。

 少し間が開き…。


 「…って言うか…」とグンガが腕を降ろして、棒立ちになり、「…違うだろう…」と言うと、オーガを見る。

 「…違うだろう!それ…違うだろう!」と言葉にした。


 その光景を見て、ミーシャがため息をつき、フレディがおでこに手をあてた、盾持ちの男はもっさりと立つと大きく深呼吸をする。


 「違うんだよ…そうじゃないんだよぉ!」と言うと、グンガは目つきを変えて、「真剣に来い!」と声を荒げた。


 すると、通訳のオーガが片膝をついていたオーガに何やら話すと、目をゆっくりと閉じて立ち上がり、もっさりと洞窟の中に入り、通訳オーガから何かを受け取った。


 構えをとったままでその行動を見ていたグンガ、そのそばに剣を持ちながらガリレオが来ると、「今度は俺だ!」とにんまりしてグンガの前に立つ。


 「ガリレオ!何言ってんだ、まだ勝負がついたわけぢゃない!」

 「あぁ?何言ってんだ、俺にも戦わせろ!今日は、金髪ボインが見てるんだ!」

 「はぁ?うっせぇ~、金髪ボインより、俺はぶっ飛ばされたままで終われねぇんだよ!」

 「あぁ?何言ってんだ、もうぶっ飛ばされてんだから、終わりなんだよ、交代なんだよ!俺にいい所見させろや!」

 「あ、あぁ?…あ……あ………あああ…。」と何かを言おうとしていたグンガが洞穴の中を見ながら目を見開いた。


 その表情を見たガリレオが、「よし!分かったみたいだな。俺の番だ!今日は金髪ボインの力で、俺は無敵モード突入だ!こいつぶった切って、揉ませてもらうぞ!」と笑みを浮かべながら振り返ると…。


 洞穴から巨大オーガが現れ始める。

 それも…何かを引きずって…。


 「お…おい…それは…汚くないか?」とグンガ。

 「…待て待て待て待て…そんなの振り回されたら…確実に死ぬぞ!」とガリレオ。


 馬車からその光景を見ていたミーシャが、タイロンから手綱をとり、「さぁ~逃げるわよ!」と叫ぶと馬車を進め始めた。

 その言葉を聞いていた盾持ちがもっさりと来た方向へと進み始める。

 クラウトもアサトの肩に手を当て「行こう!」と言葉にすると、その向こうには、すでに逃げ始めているフレディの姿があった。

 ジェンスも生つばを飲むと、来た方向へと向かい始める。


 アサトは、「でも…グンガさんが…」と言うと、クラウトの後ろを、「おぉ~~逃げんぞ!」とガリレオが駆けて行き、そのすぐ後を、「クラウト!ありゃダメだ。おめぇらも逃げるぞ!」とグンガが一目散で来た道を戻り始めていた。


 その光景を見て。


 …へ?とアサト。


 洞穴を見ると、オーガの体くらいに大きな…。

 円周100センチ程ある鉄で出来たトップを備えているハンマーを、肩に掲げて居るオーガが仁王立ちしていた。


 え…とおもっていると、「行くぞ!」と言い、クラウトも来た道を駆けだした。


 …あれ…やばいです…と思いながらアサトも追随する。


 バカみたいな笑い声が2つ…、アサトの先から聞こえて来た。


 その声に導かれるようにオーガの居城とする森を、グンガとアサトの一行は後にした…。

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