第11話 謎の2人と謎の叫ぶ男たち! 上

 『アウラ』を出た一行は、次の中継地『ソルス』へと向かった。


 その6日後には『ソルス』に着き、1日のんびりと過ごした後、いよいよ『ゲルヘルム』へと向かう事になった。

 もう6日後には『ゲルヘルム』である。


 ここまで戦闘と言う戦闘は、『アウラ』を出た日の午後に、ケイティが湖イタチを見つけて追い回した事と、翌々日に穴蛇に襲われた事。

 スカンルと言う、お尻を上げておならをするけったいな獣の群れに目をつけられ、2日間逃げ回って『ソルス』に着き、その後は…何事もなく穏やかに過ぎていた、と言うか、時々スコールにあってずぶぬれになり、その時に出来た川に流されていたゴブリンを何体か助けたくらいであった。


 アサトは順調に修行をしている、たまにシスティナやケイティ、アリッサがランニングに付き合い、修行…腕立て伏せや腹筋などをしていた。

 そうそう、レヂューの群れを見つけて狩りを挑んだが、捕獲できずに疲れだけが残った。そして、行く先々の村で情報を得たくらいである。


 まっ、遠征では無く、旅行気分になりそうな感じであった。


 聞いた話では、6日後に、いよいよ『第3次幻獣討伐戦』が行われるようであり、その地は、『グルヘルム』より東に10kほど行った場所のようである。

 そこに、移動式の大型弩砲を20機移動させているところのようであり、幻獣『リベル』の誘導も4日後に開始されるようであった。

 作戦の概要は分からないが、国王軍兵士8000人、他有志軍として、狩猟者や傭兵などを集め、先日10000名になったところで、作戦の遂行に至ったようである。


 その傭兵も、海を隔てた傭兵の国から金で招集したようである。

 この作戦は、過去2戦よりも意気込みが感じられるようであり、『リベル』が向っている場所が、黒鉄山脈でも標高が低くなる海岸線を目指している事に気付いたと言う事もあったようであり、ここで討伐をすると言う意気込みになっていたようである。


 「リベル…か…」とアサト、「あぁ…まだこの地にいたんだな…」とクラウトが言葉にした。


 アサトらが『ソルス』を出て、5日目に『へナス』の村に着いた、だが、もう既にあたりが暗くなり、これから村に入るのは失礼と思い、村に入るのは翌日にして、今夜は村の近くで野営をする事にした。


 夕食を食べると火を囲んで、6人がゆっくりしている。

 「…みたいか?」とタイロン。

 その言葉に「…そうですね…『リベル』…見てみたいですね…」とアサトが言うと、「見るだけだぞ」とニカっと笑みを見せてタイロンが言う。

「…あははは」とアサト。


 そう言えば、あの夜も…そうだったな。クラウトさんに『見るだけだからな』って言われて…そして…、『狩りましょう!』って言った…。


 「今回は、アサトも動けないだろう…僕らだけでなんとかできるような相手じゃないよ」とクラウト、すると、「でも…どっかの国に幻獣倒した、最強のパーティーがいるって言ってたじゃん」とケイティ、その言葉に、「あぁ…聞いた事あるぞ…たしか…チーム、ランラン」とタイロン、すると「チーム、ラクツアよ」とアリッサが訂正をして言葉にした。


 「でも、あの時は、ゴリラ型の幻獣だったみたいだし…」とアリッサ。

 その言葉に、「でも、傷一つってか、負傷者も無く、楽勝で狩ったみたいだって言ってたよ」とケイティが付け加えた。

 「…その力は…多分…」とクラウト。

 その言葉に「…オーブか…」とタイロンが言う。


 そのタイロンを見て、「知ってたんですか?」とアサト。

 「…当たり前だろ!と言うか、盾持ちなら欲しいアイテムだよ」と言いながら笑みを見せた。

 「…わたしらでは無理なんでしょうね…」とシスティナが言う。

 「あぁ…どんなに頑張っても無理だな」とクラウトが、メガネのブリッジを上げて言葉にした。


 ここは小高い丘。

 辺りが月に照らされて明るく見えている。

 今夜は満月。


 「とにかく…見るだけだからな…」とクラウトが言うと、アサトは全員を見てから笑顔で頷いた。…そして…。


 翌日、夜が明けようとしている時間。


 アサトらがいる小高い丘の下から、2人の影が丘の頂点を目指して進んでいると、その一人、銀色の長い外套を引きずり、その外套に付いているフードを、目深にかぶった背の小さなものが、フードの中で鼻を動かし…、”この匂いは…”と思い立ち止まった。


 「おい!セラ!よだれ…たれてんぞ!」と、隣を歩いていたツンツンヘアーの少年が立ち止まり、セラと呼んだモノを見て言葉をかけた。

 「…うむ。私をよぶ…悪しきかおり…」と言うと、その方向へと向かい、足早に歩み始める。

 「…ったく…毎日毎日…」と言いながら、頭の後ろで指を絡めた姿で、頭を支えた格好でついて行く。


 丘の上で、見張りをしながらシスティナが朝食の準備をしていた。

 6時には早いが、アリッサが起きてきて手伝いを始める。

 そのそばで本を読んでいたクラウト。


 小さなテーブルをアリッサが設置しはじめると、クラウトも手伝い始める、そのテーブルにスープとサラダ、焼き立てのパンと卵料理、そしてソーセージが並ばれ始めたら、匂いに誘われてケイティが馬車から飛び出してくる。

 その音に気付いたアサト、そして遠くに寝ていたタイロンがテントから出てきて席につき始める。


 ケイティが席に着くと、パンに手を伸ばす。

 向かいの席にアサトが着くと、パンに手を伸ばす。


 アサトの席から一つ置いた席に、タイロンが眠い目をこすりながら席に着くと肩をほぐし始める。

 その向かいにアリッサが席に着くと手を合わせる。

 そして、クラウトは、「……」。


 システィナがみんなにスープを運んでいると、立っていたクラウトが邪魔でちょっと避け、「…え?」とクラウトを見てから、その後ろ姿を見る。

 ケイティは…パン越しにアサトの手が邪魔で、アサトの手を弾くとパンが転がった、そのパンを掴む手…を見て「…だれ?」と言う。


 ケイティの横を凝視しているアサトは「…だ…だれ?」。

 祈りが終わったアリッサはテーブルに手を置き、食事の香りを楽しむように香りを吸い込むと、その手を誰かが握った。

 その手を見ると、腕伝いに上がって行き、顔を見て…「…あ…」と声を漏らす。


 タイロンは首のマッサージをやめて、クラウトの席の前にあるソーセージに手を付けた時に、その手にホークが刺さった。

 そのホークを見て「…あぁ?」と声を上げて睨むと…。


 そこには…………。


 「お…おまえら…誰だよ!」と一斉に声を上げた。


 そこには…。

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