第4話 足りない物と不確かな者 下
「足りない?」とアサト、その言葉に頷き「まだ…鱗は残っている。誰が保有しているのか分からないが…あと5枚は残っているはず。『アズサ』さんの武器と試作品に12枚、アサトの武器と『試作品』に23枚、そして、アルベルトとインシュアさんの武器に12枚、計47枚。4枚は、錬金の失敗になったと記されていた。手にしてきた数は、56枚。となれば…どこかに5枚は残している。あと…一つ、『不死族のモノ』が、どこにいるかという事である。」
「あっ…そう言えば…」とアサト、システィナも小さくうつむきながら、何かを考えていた。
システィナから視線をアサトに移し、「ギルドを立ち上げた時にはもういないようであったが、この地から出て行ったとは思えない、」と言うと、「その根拠は?」とタイロン。
タイロンに視線を移すと、「その根拠は…、ナガミチさんの書には、その者がこの地で、遺跡と遺物を見つけたと記されてあった。僕がこの地を離れていないと思っているのは、この記された言葉があったからだ。」と言い、アサトを見る、「その事を考えると、鱗は必ずどこかにあり、そして、『不死族のモノ』もこの地のどこかにいる、高度な錬金術を持たなければ、ドラゴンの鱗の錬金は不可能のようである、となれば…。鱗と『不死族のモノ』は関係していると思っている。…これが僕の仮説だ…」と言いながら一同を見て。
「その仮説を立証する為に、その者の足跡も捜さなければならないと思う…」と言葉にした。
すると、「そう言えば…」とシスティナ。
一同がシスティナを見ると、小さく肩を竦めながら「…ポドリアンさんの…姪御さんは…」と言葉にする、その言葉に「…そう言えば…」とアサト。
クラウトも顎に手を当て「…言われれば…、太刀を鍛えたのは、ポドリアンさんとその姪御さん…、ポドリアンさんは、かなり遠くからこの地に来たようだし、姪御さんも来たのなら…一人で帰ったと言う事は考えられない…となれば、その『不死族のモノ』と一緒か…それとも…」と言葉にした。
「…死んではいないと思いますから…」とアサト、その言葉にクラウトとシスティナが頷いていると…、「…ねぇ!」とケイティ。
一同がケイティを見ると、ケイティは頬をくらませながら唇を尖らせていた。
一同の視線を確認すると「そこだけで話をしない!あたし、何言ってるのか分からないし、分からない事があるなら見つければいいじゃん!」と言うと、手にしている短剣を見ながら「…行こうよ!」と言う。
その言葉に一同が小さく笑い、「そうだね。今、何かが出来る訳じゃないし、とりあえず、僕らの目的地は『グルヘルム』だしね、そこに行って、戻ったら色々聞いてみてもいいんじゃないかな?」とアサトは言いクラウトを見ると、小さく頷き、「あぁ、アサトの言う通りだな、戻ってからでも遅くはないな…」と言いながら、タイロン、アリッサ、そして、ケイティを見て、「…じゃ、今まで使った武器は、ここに仕舞ってくれ」と言葉にした。
その言葉に3人は顔を見合わせてから、各々の武器を取りに行き引き出しにしまう。
その後、引き出しを閉じるとカギをかけ、身支度を整えると、全員で村長に挨拶をして村から出発をした。
昨日と同様、アサトは走る、少し行くと長太刀を振り、基礎トレーニングを行う。
今日も穏やかな一日になりそうだ。
午後…夕刻近くに商人の一行に出会うと、クラウトがその一行を止めて、商品を見せてもらっていた。
遠くからアサトが見ている。
何かを買ったのだろう、布の袋からお金を出して商品と交換をしていた。
そして、荷馬車がアサトに近づき、再び先を進んだ。
陽も落ちかけたころに村が見えてきて、今夜はそこに泊めてもらう事にした。
話を聞いたら、この村にも駐屯兵はいないようであり、昨夜のように見張りをしなければならないようである。
村の近くに野営地があるとの事で、そこに向かい、先日と同じように、野営の跡を見つけ、そこに野営をすることにした。
いやな…予感がする…。
長に挨拶をして、晩飯を食うと、男だけで見張りをする事になった、順番は昨日とおなじである。
そして…。
夕食の片付けも終わり、明日の出発の準備を整えると、女性陣が荷馬車に向かう、するとクラウトがケイティを呼ぶ、不思議そうな顔でケイティがくると「これを…」と何かをケイティに手渡した。
ケイティはその物を手に取ると広げる。
そこには、ヘアーバンドのようなものがあった。
「…なにこれ?」とケイティ、「それと…」とクラウトが、小さなコルクで出来ている耳栓を手渡した。
「…これで、ゆっくり眠れるだろう…」と言うと、「…眠れる?」とケイティ。
…もしかして、昨日の事…覚えてない?
アサトはケイティを見ている。
ケイティは、耳栓をするとヘアーバンドを頭にセットする。
クラウトが、「これは、ヘアーバンドじゃない。イヤーウォーマーだ」と言いながら、耳へとそのバンドを下ろした。不思議そうな顔で見ている。
「…聞こえるか?」とクラウト、ケイティは、「?」と首を傾げる、そして、タイロンが前に来て、「…聞こえるか?貧乳!」と言いニカっと笑うと、ケイティは、「?」と傾げた後に、瞼を閉じて俯くと…「!」と一同!。
ケイティは、いきなりタイロンに向かって、回し蹴りをみぞおちに繰り出した!
タイロンは腹を抱えてその場に崩れ込む、それを見下ろしながらイヤーウォーマーを外し耳栓をとった。
「…聞こえてた?」とアサトが聞くと、アサトを見て「…いや、ぜんぜん聞こえなかった」と言う。
「じゃぁ~なんで?」と再び聞くと。
タイロンを見下ろして「…なんか…悪意を感じた、そして…、なんか……むかついた」と言う。
…それって…。と思っていると、
「…とりあえず、今夜からそれをつけて寝てくれ」とクラウト、そのクラウトを冷ややかな目で見るケイティ、そして、「…なんで?」と聞く、
「…そ、それは…」と答えに困るクラウト、アサトも何をどう言ったらいいかわからず、システィナとアリッサを見た。
二人も訳の分からない表情でタイロンを見ていた。
しばらく沈黙していると、「…まっ、とりあえず、使うよ。」と言い、耳栓をしてイヤーウォーマーをつけると、荷馬車に向かった。
その姿を見て、「…とりあえず…よかった。」とクラウト、「どうしたの?」とアリッサが聞いて来たので、昨夜の事を教えると、二人は爆笑をしていた。
まっ、死人が出る前になんとかなりそうだ…。
そして…。
アサトは、タイロンと入れ替わり、見張りに行こうと思った時、荷馬車の扉が開いた。
ま…まさか…と思っていると、案の定、瞼を半分だけおろした表情のケイティが外を見ていた。
そして、ゆっくり、もっさりとテントに向かってゆく…と……。
「ちぇ~~~スト!」と言う掛け声で、聞いてはいけない音がまた聞こえて来た。
駆け足でテントに向かうと、テントの中では、タイロンが正座をし、クラウトが気を失っていた。
その間にケイティが立っている、そして…「…こんなの付けていると、耳がかぶれてしまうわ!」とクラウトにイヤーウォーマーを叩きつけていた。
…さてはて…この子はどうしたらいいのでしょう…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます