第35話 作戦会議


~空音・聡・怜菜チーム~


 2番目に入ったこのチームは、現在1Fにきていた。

「とりあえず最初はこの1Fを探索していこう思うが、適当にやっていても他のチームとの差は埋まらない。そこで、最初に重要なことを決めたいと思う。それは何だと思う?」

 聡が空音と怜菜に問う。

「どうした?いきなり仕切り出して」

「藤沼さん、時間も限られているので、もったいぶらずに要点だけお願いしますわ」

「少しは考えてくれよ・・・まぁ時間が限られているのは事実だし、結果から話そう」

 聡は一つ咳払いをし、続けて話す。

「今回のゲームはチーム戦・・・つまりそれぞれのチームワークが試されているわけだ。そこで最初にやらなければならいことと言えば、そう!役割分担だ!」

「なんか溜めた割に普通のことで私はがっかりだよ」

「そうですわね」

「落胆はええよ!」

 聡の提案に二人がしらけた様子を見せる。


「わかったわかった、それで藤沼はどう分けるつもり?」

「よくぞ聞いてくれた!」

 聡はそれを待っていたと言わんばかりに声を張る。

「俺は3人の役割を、リーダー役、アクション役、サポート役に分担すべきだと思っている」

「リーダーは理解できますが、他の役割がよくわかりませんわね」

 怜菜の疑問は空音も同様であり、聡はそれに答える。


「説明しよう。まずリーダーだが、一つしかないこのスマホを持ち、それを使って行先を指示する役になる。この役割の働き具合でゲームの勝敗に大きく影響するから、一番責任重大な役になるな。スマホを持つもの=リーダーの認識でいい。次にアクション役は、入れ物の確認役だ。最初のゲーム説明で彰人が言っていたけど、目的の入れ物にはアタリとハズレがある。その入れ物からアタリかハズレの確認することになる。まぁどんなハズレがあるか分からない以上、この役はハズレ役になるが、だれかがやらなきゃならない。最後にサポート役だ。これは入れ物がある場所の周囲や、その入れ物自体に注意を向け、アクション役への被害が最小限になるようにする役割、要は進行の補助ってことだな。これで役割の説明は以上だけど何かあるか?」

 聡が一通り説明し終え、二人に尋ねる。

「ふむ、私は特に」

「私も異論はございませんわ」


 2人からの承認を得た聡が本題を話す。

「よし!それじゃあさっそく役割を決めていくぞ!じゃあまずリーダーはお」

「それだけはない」

「それだけはないですわ」

「まだ言い切ってねぇ!」

 二人の間髪入れない拒絶に聡のメンタルへのダメージがまた一つ増える。

「一番重要な役割を藤沼に任せられるはずないだろう?」

「さらっとひでーこと言うな」

「ごめん、私素直だからつい本音がぽろりと」

「自分で素直とかいうやつに真の素直なやつはいねぇ。矢那瀬、特にお前はそうだ」

「ほう、言ってくれるな」

「まぁまぁ矢那瀬さんも、藤沼さんも落ち着いて」

 怜菜が熱くなってきた二人を止める。

「藤沼、今回は西園寺さんに免じて勘弁してあげる」

「そうして一番傷ついている俺が許される話の流れになってんだ・・・」

 不服そうな聡を無視して話を続ける。


「とりあえず脱線した話を戻すけど、リーダーが藤沼じゃないとしたら、私か西園寺さんになるけど」

「私はリーダーという柄でもないので、矢那瀬さんにお願いしたいのですがいかがでしょう」

「そういわれても、私も柄っていうわけでもないんだけどね」

「そんなことありませんわ。私なんかよりずっと適任です、それに私、あまりスマートフォンの操作は不慣れでして・・・なのでお任せしたいにですが、やっぱり駄目でしょうか」

「・・・そこまでお願いされたら断れないよ。わかりました。今回はリーダー役任されましょう」

「ありがとうございます。矢那瀬さん」

「いえいえ。・・・それと西園寺さん、今更かもしれないけど」

「はい、なんでしょうか」

「私のことは空音でいいよ」

「えっ」

「だから私も怜菜って呼んでいい?」

「わ、わかりました・・・!あまりこのような呼び方は慣れておりませんが、お望みでしたらそのように呼ばせて頂きます。か・・・空音も・・・!私のことは好きに呼んで頂いて構いません」

「わかったよ。でも嫌だったら言ってね」

「嫌なんてことございません!むしろ私は嬉しいですよ」

「それならよかった。それじゃあ怜菜には今回サポート役お願いしてもいい?」

「はい、任されました」

 聡を抜いて、たんたんと役割が決まっていく。


 そしてそれを聞いていた聡が、ここで話に割って入る。

「ちょっと待てーーーーい!」

「どうしたアクション、騒がしいぞ」

「すでに決まったかのように役名で呼ぶな!俺は反対だ!」

 聡は空音に猛抗議の姿勢を見せ、それに空音が答える。

「藤沼・・・お前はこんなお嬢様に何が起こるか分からない箱を開けさせるつもりなの?」

「それは・・・」

 聡は空音の主張に一歩引きながらも、反論を続ける。

「わかった。俺も鬼じゃないし、矢那瀬の言うことも理解できるから、西園寺さんにサポート役をやってもらうことに反対は無い・・・だがな!矢那瀬は違う!」

「そんな!藤沼くん怖いわ!」

「今更かわいこぶっても遅いわ!」

「ちぇっ、わかったよ。でも藤沼はこのスマホでリーダーするつもり?」

「何言ってんだ?そんなの誰が持っても・・・・」

 空音は聡にスマホを渡し、受け取った聡は画面を見て固まる。


《認証番号を入力してください》


「すまないな、話している間に認証番号の設定をさせてもらったよ」

「お前っ・・・!!」

「それで、藤沼はリーダーをやりたいようだけど、そのスマホはもう私にしか使えない。このままだと罰ゲームは免れないが、藤沼が諦めてアクション役になるなら、どうなるかわからないね。さぁ選ぶ権利をあげよう」

「ぐ・・・・」


(選択肢は2つ・・・1つは俺がリーダーになることで実質ゲーム放棄による罰ゲーム確定ルート。もう一つは俺がアクション役になるが、ゲームの結果はわからない。これが、絶対勝てるのならアクション役になるのも仕方ないが、最悪なのはアクション役になって且つ、チームが負けること。それが一番のBADENDだ。いっそ前者を選んで、矢那瀬を巻き込・・・)


 聡が考えを巡らせると、思考を読んでいるかのように、空音が口をはさむ。

「因みに、藤沼がリーダーになってゲームに負けた場合、罰ゲームは藤沼一人で受けてもらうからね」

「なんでそうなるんだよ!ここはチーム全員の連帯責任だろ!」

「何のために今選択肢を与えている。ここでむざむざ罰ゲームを受け入れるような選択肢をして、私たちに責任があると思う?それがなくても、リーダーは一番責任が重い役、そう言ったのは藤沼だろう」

「それは・・・」


 聡の中で選択肢が一つ消えた瞬間だった。

「だああああ!分かったよ!俺がアクション役で矢那瀬がリーダー役、それでいいよ!」

「まったく、ようやく折れたか」

「だがな、これだけは言わせてもらう!矢那瀬がリーダーでもし負けた場合、さっき言った事忘れるなよ」

「あぁ二言はないよ。全てリーダーが被ろう」


 チームの役割がここに決まる。

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