幕間1

第33話 チームメンバー全員集合

 窓から外を覗く。そこにはまだ寝静まる町があった。

 

時計を確認すると、時刻は午前1時前だった。

 家の中から物音はせず、俺だけが起きているようだった。


 俺はあらかじめ準備していた服に着替え、既に荷造りを終えていたリュックの中身を再確認する。

 約束の時間まであと30分程度、俺は少し小腹が空いてしまったので、足音を立てないように1階のリビングに下りて飲食物を漁る。


 「とりあえず少し空腹が紛れればいいか。あっちでも食べるしな」

 小声でぼやきながら、適当な菓子パン2つとお茶を持って部屋に戻ろうとしたその時、

「あれぇ、なんで蒼太も起きてるのー?」

「!?」

 後ろから急に話しかけられたことで心臓が跳ねる。


 俺はとっさに持っていたものを後ろに隠して答える。

「あー・・・トイレに行く次いでに喉が渇いてお茶を飲もうと思ったんだ。母さんは?」

「蒼太もトイレだったんだね。そしたら夜更かししないですぐ寝るんだよ」

「うん、わかったよ」

 そう言い残し、トイレに向かう母さんの姿にほっと胸を下ろそうとすると、

「そういえば、そんな服のパジャマなんてあったっけ?」

 母さんが問いかけた質問に、再び背中がじわりと湿る。

「あったよ!母さんが寝ぼけてるからそう見えるだけ!」

「そう・・・?まぁいっかぁ」

 どこかしっくり来ていない様子だったが、寝起きの鈍い判断力に助けられた。


 急ぎ足で部屋に戻り、持ってきた菓子パンを食べて、お茶を流しこみ腹を満たす。

「ふぅ・・・一時はどうなることかと思ったけど、ばれずに済んだな。あそこでばれてたら今夜の計画は中止になるところだった。今度からはもっと気を付けよう」

 俺は汗ばんだ服をはためかせながら時計を確認する。


「そろそろだな」

 つぶやきと同時にポケットに入れていたスマホが鳴る。

『着いた』

 メールを確認して窓から外を覗くと、玄関の前に自転車に乗る二人がいた。

『今行く』

 そう返信した後、さき程以上に慎重に歩いて行き、玄関の扉に手を掛ける。

 俺はこれから待つものに期待に胸を膨らませ、扉を開けた瞬間、


 視界が暗く沈んだ。




 「はぁ・・・」

 深いため息から始まった、決して清々しくはない朝を迎える。


 今日は5月2日金曜日、時刻は6時55分だった。

「最近見ないと思ってたけど、ほんと謎だな。意味がわからん」

 俺はもやもやした気持ちで汗ばんだシャツから着替えた後、学校に行く支度をした。


 日中の授業特に変わったことはなく、放課後を迎え彰人とみんなに鳳城さんの加入及びチームが完成したことを伝える。

「そういうわけでこれでメンバーはこれで揃った。みんな協力してくれてありがとう。ここから本腰いれて、チームエスケア頑張ってこー!!」

「「「「「「おー!!!」」」」」」

 皆の気合い高まる返事が揃う。

「それじゃあチーム完成したところで、まずは」

 基礎練習をしよう。と言おうとしたのを彰人が遮った。

「ゲームをしよう」

「はぁ?ゲームって試合のことか?それは前に瀧宮が入った時6人でやってぐだぐだだったろ」

 聡が珍しく正論を言っているのに多少の驚きつつ、今回は俺もそれに乗っかる。

「俺もまずは基礎を固めたほうがいいと思うぞ」


 しかし、彰人はその反論を想定していたと言わんばかりに答える。

「違う違う。俺がいっているのは本当に遊ぶ方のゲームのこと。ようやくチームが出来たんだからお互いの親睦を深めるレクリエーションでもやろうってことよ」

「それはわかったけど、ゲームって何するんだ」

「それはだな」

 彰人はそこで言い留めると、ポケットからスマホを出して画面を皆に見せる。


「宝探しゲームをする」

「へ?」

 俺を含め、他の皆も同様に複雑な表情を浮かべる。

 彰人は質問がどこかから来る前に説明を始めた。

「今見せているのは、俺が作ったアプリの画面だ。このアプリは特定の電子チップの電波を感じ取り、距離に応じて反応が強弱する仕組みになっている。この電子チップが入った入れ物を既に校内に散らしてあり、それぞれの入れ物にはアタリとハズレの何かがある」

「その何かを教えろよ・・・」

 俺のつっこみも虚しくスルーして彰人は続ける。

「これからくじで3チームに分かれた後、チームに一つずつこのアプリが入った携帯を渡す。アタリは2つで、ハズレは・・・・何個だっけか。まぁ数はいいとして。そのアタリを見つけるのが目的で、アタリを見つけられなかったチームはもれなく罰ゲームがあるからよろしくー!」

「覚ええていない程の数ってどんだけだよ・・・てか景品みたいに罰ゲーム入れんな!」

「やっぱり罰ゲームがないと燃えないよなぁ!?」

 彰人は一人楽しそうに言った。


 いろいろとつっこみたいところはあったが、彰人がくじを差し伸べて淡々と事を進める。

「それじゃあお前ら引いてけー。それと言うまでないと思うが、俺はアタリの位置を知っているから不参加。その分優未がやるし人数は問題ないな」

「わらわがでるのか!?てか罰ゲームとか嫌じゃー!」

 反応から察するに優未は知らされていなかったらしい。

「はいはい、つべこべ言わずにとっとと引け。お前らもアタリは2つあるって言ったけど、ちんたらやってもらっても困るから時間制限を設ける。今が大体16時半だから、1時間後の17時半をリミットにする。アタリが一つも見つけられなくて全員罰ゲームってオチも俺は好きだぞ。」

 彰人は不適な笑みを浮かべて言う。

「それじゃあ時間ももったいないから、今からスタートするぞー」

「って私たちまだくじ引いてないんだけどー!!!」

「よーい、スタート!」

 美桜の制止も虚しく、慌ただしくゲームが始まった。




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