第10話 クモの巣を攻略しよう
公園には四脚型のASが三機、一定の距離を置き砲撃を行っていた。
「護衛機はいないのか?」
砲撃機の周りに近接機がいないことを錬は不審に思った。砲撃機は接近戦に弱い、それをカバーするために、通常、砲撃機の近くに近接機を配置するのが定石になっている。
『よく見て、ビルの壁面にスナイパー機が張り付いてるわ』
雪乃に言われて、錬は周りのビルに視線を移す。この公園はビルに囲まれており、そのビルにクモのごとく四脚型ASが張り付いていた。
砲撃機が隙だらけだと思って突撃すると、ビルに張り付いているスナイパー機に狙い撃ちにされるということだ。
ビルに張り付いて獲物を待ち伏せている四脚型ASは合計八機。真ん中にいる砲撃機を合わせると全部で十一機という数になる。
「さながら、クモの巣だな。こりゃ」
責めづらい敵の配置に錬はため息を漏らした。
「とりあえず、将吾。一発ぶちこんでくれ」
『オーケー。一発いわずに、二発ぶち込むッスよ』
錬が将吾に砲撃支援を要請する。将吾の二門の大砲が火を噴いて、敵ASの砲撃部隊を狙う。
ビルに張り付いている敵のスナイパー部隊の内、四機が砲門を移動させ、空に向けた。
そして一斉に射撃。将吾の放った砲弾二つが空中で大爆発を起こす。
将吾の砲撃は敵のスナイパーによって、無効化されてしまった。
『砲撃は無駄みたいね』
雪乃がぼそりと呟く。たしかに敵のスナイパー部隊がいる限り、将吾の砲撃は打ち落とされてしまうだろう。しかし、錬は無駄だと思わなかった。
「いや、無駄じゃない。将吾、もう一度頼む」
『どうせまた打ち落とされるわ』
「確かに打ち落とされる。だが、スナイパー八機の内、四機の気をそらせせることは出来るだろ?」
『あっ!?』
雪乃が錬の意図に気付いて声を漏らした。
「このまま無策に突っ込んでも、八機のスナイパーに蜂の巣にされる。だが、将吾の砲撃で半分の気をそらして、四機になればまだ勝機はある。そうじゃないか?」
『そうね。その作戦なら行けると思うわ』
雪乃が錬の作戦に賛同する。
「良し、じゃ決まりだ。砲撃の隙をついて、周りのスナイパーをまずは倒す。将吾、できる限り連続で砲撃をし続けてくれ」
『了解ッス』
再び、将吾の放った砲撃が飛んできた。四機のスナイパーが砲弾の迎撃態勢に入る。
「今だ!」
錬は公園の反対側にいる雪乃に合図を送り、自らも飛び出した。
まず倒すべき敵は、迎撃態勢をとっていない方の四機だ。
錬はビルの壁面を蹴って、一番近い敵四脚に接近する。錬に近いAS二機は雪乃を狙い、雪乃に近いAS二機は錬に狙いを定める。
錬が壁を蹴った瞬間に、元いた場所に弾丸が直撃した。
「やらせるかよ!」
雪乃に狙いを定めている敵四脚の砲身をブレードで切る、連続してボディを突き、錬は一機目を倒した。
『遅いわよ』
雪乃はすでに一機を倒し、飛行形態で二機目に向かっていた。
「神無城、いったん隠れて、将吾の砲撃を待て!」
将吾の砲弾が打ち落とされ、少しのインターバルが出来る。砲弾を迎撃していた残りの四機が錬と雪乃に照準を向けた。
先程は錬と雪乃を敵ASが二機づつで狙っていたが、今度は三機づつで狙うことになる。回避行動を取らなければ、かなり危険だ。
錬は敵の射線上に出ないように身を潜めた。
雪乃は飛行形態で次の標的に向かってしまっていたが、途中で人型に戻り、ビルの影に隠れた。
『危なかったわ』
雪乃はほっと肩を撫で下ろす。あのまま敵に向かっていたら、打ち落とされていた可能性が高かった。
しばらくして将吾の砲弾が飛来してくる。錬達を狙っていた四機は再び、照準を空に向けた。
「良し、今だ!」
錬と雪乃は再び、飛び出し攻勢にでる。
そして二人は、ほぼ同時に敵のAS二機目を撃破した。これで二人合わせて四機を撃破したことになる。
「良し、いったん待機して将吾の砲撃と同時に、残りの四機を叩く。また飛び出すなよ?」
『分かってるわよっ』
雪乃は錬に釘を刺されて、少しだけむっとした。
敵のスナイパー機が錬と雪乃に砲身を向けていた。錬と雪乃は敵の射線に気をつけて身を隠している。そして再び、将吾の砲弾が飛んできて、錬達に向いていた照準が外れた。
雪乃は飛行形態になり、一気に敵へ接近する。一方、錬は敵の方に向かわず、ビルの屋上に上った。
錬は先程、倒した敵機からスナイパーキャノンを奪っていた。それをひらけた視界の屋上で、向いにいる敵に向けた。接近してブレードで倒すよりも、スナイパーキャノンで倒した方が早いと錬は考えたのだ。
素早く敵を照準に捉える。そして引き金を引く。
反撃もなく、動かない敵をスナイパーキャノンで狙い撃つことは錬にとって造作もないことだった。
雪乃が一機を倒す間に、錬が三機を狙撃して撃破していた。
将吾の砲撃を迎撃するスナイパー部隊が全滅したことで、砲弾が公園に着弾する。
爆炎が敵の砲撃部隊三機を無力化した。
「敵砲撃部隊の殲滅を確認。これより十七夜、神無城の両名は帰投する」
敵の亡骸を見ながら、錬が作戦終了の言葉を告げた。
これで錬達、殲滅チームの作戦行動は終了だ。
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