お姉ちゃんと毛蟹(前編)
波乱含みの名門
時刻は午後1時半を過ぎたところ。本来はお昼を外で食べてくる予定だったのだけれど、ボクは一刻も早く家に帰って入試予想問題がバッチリ当たったことを姉に伝えてお礼を言いたいんだ!
玄関の扉を勢いよく開けて、元気よく叫ぶ。
「お姉ちゃん、ただい――ええっ!?」
「お帰りなさいませ、
ボクは大きな声で姉を呼ぶ必要は無かった。
扉のすぐ近く、上がり
そしてどういう訳か、黒いドレスにヒラヒラのついたエプロンを着ている姉。
「試験お疲れ様でした、
「あっ、うん……えっと……」
「ささっ、お荷物をこちらへ」
「あっ、うん……ありがと……」
「お風呂になさいます? それとも先にお食事を? それとも、毛・ガ・二?」
「ええっ、もうお風呂!? まだお昼なのに?」
「もうーっ!
姉はぷくっと頬を膨らませて拗ねているけれど、ヒラヒラのついたエプロンだと思っていた姉の服がメイド服なんだと気付いたボクは――
「えっ、なに
「ご、ごめんなさいお姉ちゃん、ボクどうしてもその服が気になっちゃって」
「あ、服…… そう、
「あっ、ちが……、うん、お姉ちゃんは外見も中身も全てにおいて完璧なお姉ちゃんだよ! その事実は世界があべこべにひっくり返ったとしても未来永劫変わることはないんだ!」
なぜ家政婦の
「あっ、そんなことより、お姉ちゃん! すごかったよ!」
「えっ? ええっ!?
「……えっと」
姉は時々ボクの理解を超えた発言をするけれど、きっとそれはボクの理解力が足らないだけなんだ。
「そうじゃなくって、星高の入試問題がお姉ちゃんにもらった予想問題とものすごく似ていたんだよ! ボク……もしかしたら、星高に受かるかもしれないよ?」
ボクはそう言ってはにかみながらにっこりと笑う。
ボクよりも身長が少し高い姉をやや上目遣いに見つめながら。
姉はしばらくボクの顔をじっと見つめていたけれど、やがてハッと息を飲み込み、わなわな口元を震わせ始め、かばっとボクを抱きしめ……
「
と、ボクの名前を連呼しながらぴょんぴょんと飛び跳ねるものだから、ボクは何度も何度も姉のやわらかいところに顔が押し付けられて息ができないのだ。
「お姉ちゃん落ち着いて、落ち着いてよ、ボク死んじゃうよぉー!」
「はっ、ふはっ、あわっ!?
「あっ、大丈夫だよ、うん。お姉ちゃんが落ち着いてくれたらボクは大丈夫なんだ」
「……そう。ならよかった! で、改めてお姉ちゃんは
あっ、やっぱりさっきのアレ、ボクの聞き間違いじゃなかったんだ……
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