第2話

街を走っていると、何も変わっていない風景に気づいた。

街の人は、変わったと言えば変わったけれど、元々そうだったのかもしれないと思ったら、今じゃあ違和感を覚える事もなくなった。


あのトンネルの向こうの街……


あれは 何だったんだろう。

年寄りの警官が言うとおり、長い夢でも、見ていたのかな。

見回りを終え、僕は交番の前に、自転車を置いた。


「ナウム。」

声のする方へ向くと、そこにはエレナが立っていた。

「エレナ…もう、外に出ても平気なの?」

「ええ…おかげさまでね。」

ニコッと笑ったエレナの笑顔は、小さい頃の笑顔と同じだった。


そしてどこからか、聞こえてくる異国の言葉と、異国の音楽。

それを聞いていると、トンネルの中の事はあながち現実だったんじゃないかって、思えてくる。


だってさ。

前の街だったら、異国の人なんて堂々と歩いていなかった。


うん。

その方が面白いから、そういう事にしておこう。

はい!

僕のお話はこれでおしまい。

また聞きたくなったら、おいで。

いつでも話してあげるからさ。


ああ、一つ言い忘れていたことがあった。

実はあのトンネルが気になって、あの後何度も、その場所の前を通ったんだけど


―――……

やっぱりあのトンネルは、行き止まりで、

二度とあの街を見る事はなかった。


End

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トンネルの向こう側 日下奈緒 @nao-kusaka

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