第2話
見つけた。
僕が一歩、また一歩ユーリイに近づくと、彼は瞬く間に、どこかへ走っていく。
「待て!ユーリイ!!」
僕の顔を見て逃げるユーリイは、この街の事を知っているかもしれない。
「待て!待ってくれ!!ユーリイ!!!」
足がちぎれそうになるくらいに、僕は走った。
「ユーリイイイイイ!!」
叫んでも叫んでも、ユーリイは止まらなかった。
やがてユーリイは、ある曲がり角で、右側に曲った。
僕もそこで、右に曲った。
「ハァハァハァ…」
息も吸えなくなって、僕はその場に、崩れかけた。
「どうした?ユーリイ。」
「ごめんなさい。実はナウムに見つかって…」
「ナウムに?」
先ほどの黒づくめのマントを羽織った男が、そこにはいた。
「嘘だ…」
いるはずのない人だった。
「ナウム…」
ゆっくりと、僕に近づく黒づくめのマントの男。
「涙を拭け。顔を上げろ、ナウム。」
知らない間に、流れていた涙。
その涙を拭いても拭いても、止まることはなかった。
「生きてたんだね…?」
「ああ…」
「どうして、知らせてくれなかったんだ。」
「…ごめんな。ナウム。」
男はそっと、僕の頬を撫でてくれた。
懐かしい感触。
温かい温もり。
その黒づくめのマントの男は――――
死んだはずの、ボリスだった。
ボリスの温もりを感じて、ようやく僕の涙も、終わりを迎えた。
「ところでボリス、なぜここに?」
「なぜ?…」
ボリスの目が、一瞬細くなるのを、僕は見逃していた。
「あのトンネルは、行き止まりなんだ。ここは、あるはずのない街なんだよ。そこに消えてしまったみんながいる。死んだはずのボリスが、ここにいるのと、何か関係があるんじゃないか?」
僕は助けを求める気持ちで、ボリスに尋ねた。
「あるはずのない…街か…」
「ボリス?」
ボリスは、僕を遮るように、横を通り過ぎて行った。
「なぜここにいる?その答えはこうだ。この街を作った者こそ、この僕だからだ。」
「えっ?」
僕は頭が真っ白になった。
「ついでに、街の人間をここに連れて来たのも、この僕だ。」
もう僕には、ボリスの言っている事が、理解不可能だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます