Chapter5
第1話
「なんだ?ここは…」
いつの間に?
こんな街が?
街の中央には、川が流れていて、コンクリートで水路が作られている。
その両端に広がる、7階建てのアパート。
そこには人がひしめき合うように住んでいて、不思議に活気さえも、感じられた。
でも、なぜだろう。
普通の街と、違うような気がしたんだ。
僕は、ごくんと息を飲むと、一歩ずつ歩き始めた。
すれ違う人は、皆、目が虚ろだった。
まるで、魂を抜きとられたように。
この街は、普通の街とは違う。
その思いは、歩く程鮮明に感じられた。
そして僕は、よく知った顔を見つけた。
「エレナ!」
いなくなったはずのエレナが、街を歩いていた。
「エレナ!エレナ!!僕がわかるか?エレナ!!」
駆け寄って、エレナの肩を掴んだ。
「ナウム?」
「そうだ!ナウムだ!!」
だがエレナの目も、虚ろで遠くを見ていた。
「エレナ?しっかりしろ!エレナ!!」
そして、反対側からはオリガおばさんが、歩いてくる
「おばさん!」
エレナを道路の端に座らせると、僕は急いで、オリガおばさんの元へ走った。
「おばさん!オリガおばさん、僕だよ!ナウムだよ!!」
「ナ…ウ…ム…!?」
あんなに僕を可愛がってくれたオリガおばさんは、僕の事を忘れていた。
「どうしてなんだ!!なんなんだ!!この街は!!」
生きていてくれた。
何よりも、遠くへ行っていなかった。
そんな嬉しさと、あまりにも変わり果ててしまったみんなの様子に、僕は頭の中がグチャグチャになった。
「くそっっ!!」
僕が近くの石を蹴り上げた。
そして、石が転がって行った先に、一人の人間が立っていた。
「ん?」
振り返ったその顔は…
「ユーリイ!!」
「げっ!ナウム!?」
間違いない。
さっき、自転車に乗って消えたユーリイだ。
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