第3話
―――……
それから数日後だった。
僕はまだ、人が少なくなった街を、自転車で見回っていた。
「ナウム。パン、食べる?」
「有難う、サーシャ。」
サーシャは相変わらず、交番の目の前の店でパンを焼いていて、僕の空腹を満たしてくれていた。
「じゃあ、またね。ナウム。」
「ああ、また後で。」
僕はサーシャのところで昼食を摂ると、そのまま自転車に乗って、街の見周りに出かけた。
どれくらい走っただろう。
突然、僕の目の前に、知った顔が現れた。
ユーリイだ。
「ユーリイ!!!!」
大声で呼びかけたものの、ユーリイは気付かない。
そして、黒いマントを羽織った男が、ユーリイの傍に、自転車を止めた。
見かけない姿。
だがユーリイは、その黒いマントを羽織った男の、自転車の後ろに乗った。
まるで人に見られないようにしながら、ゆっくりと自転車を走らせる二人。
何なんだ?
誰なんだ、あの黒いマントの男は。
僕も静かに自転車を走らせて、あの黒いマントの、自転車の後を追いかけた。
だが黒いマントの男は、この街の地形を知り尽くしたかのように、自転車をスイスイと走って行く。
毎日、自転車を走らせている僕でさえ、追いかけるのがやっとだ。
そして、長い緩やかなカーブを描く、坂道を抜けたところだった。
僕は、あの二人を見失ってしまった。
変だ。
この先を行った形跡もない。
確かにこの辺りで消えた。
僕は自転車を降りて、辺りを見回した。
2、3歩、進んだだろうか。
僕は信じられない光景を見つける。
「嘘だ…」
そこはもう、何十年も使われていないトンネルだった。
コンクリートも土も落ちていて、行き止まりになっているはずだった。
「そんな…馬鹿な…」
僕は息を飲み込んだ。
行き止まりのトンネルの中に、
あるはずのない”街”が広がっていたんだ。
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