第2話
エレナが、いなくなった?
クラッと来て、僕は後ろによろめいた。
まさかエレナまで、黙っていなくなるなんて。
どうして?
でも涙ぐむサーシャを見て、それ以上は聞けなかった。
「サーシャ。また後で来る。」
サーシャは泣きながら、頷いた。
無理もない。
身近な人が、突然消えてしまったんだから。
その後も、エレナがいなくなった事が、頭から離れなかった。
たった一人の妹のサーシャを置いて、エレナがいなくなったなんて、僕には信じられなかった。
ボリスが死んだと聞かされた時、僕は最悪、命を絶ってしまうんじゃないかと思った。
それでもサーシャの為に、死なずにいたエレナが!?
「ナウム!」
「イリヤ。」
杖をついたイリヤが、向い側の道にいた。
僕はサーッとイリヤの横に、自転車を停めた。
「イリヤ。少し聞いてもいいかな。」
「何だい?」
「最近、街の人たちが少しずつ、消えているとは思わないか?」
「街の人達?」
「ああ。」
イリヤは無表情で、僕の顔を見ている。
「イリヤ?」
「ああ、ごめんごめん。」
イリヤが一瞬、杖をギュッと握った事を、僕は見逃さなかった。
「…みんな、嫌になったんだよ。」
「嫌になった?何を?」
「この街を…」
僕とイリヤは、しばらくの間、見つめ合った。
「ごめん。忘れてくれ。」
「あっ、イリヤ。」
イリヤは、また杖をつきながら、家とは別な方向に、歩いて行った。
イリヤが姿を消したのは、その次の日だ。
おかしい、腑に落ちない。
この街が、嫌になったって?
だからと言って、何も言わずに、みんな他の街へと行くか?
「くそっっ!!!」
僕は、見るからに人が少なくなった街の一本道を、これでもかと言うくらいのスピードで、走り抜けた。
「みんな、どこに行ってしまったんだ!!!!」
叫びに叫んでも、今や聞いてくれる人は、残りわずかになっていた。
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