第3話
「あっ、ナウム!」
「サーシャ!」
まだ15歳だというのに、両親が死んで、一家を支える為に向かいのパン屋で働くサーシャ。
「今日もオリガおばさんが、帰りに寄ってだって。」
「ああ、ありがとう。」
オリガおばさんは、毎晩僕とサーシャの夕食を作ってくれていた。
そんなおばさんも、息子二人を、戦争で亡くしていた。
「あっ、おばさん!」
オリガおばさんの姿を見つけて、サーシャは駆け寄って行く。
「ご苦労様、サーシャ。パンは無事、売れたかい?」
「はい、全部売れました。」
「いい子だね、サーシャ。」
サーシャは天真爛漫のせいか、街の人にすぐ可愛がってもらっていた。
「あら!ナウムじゃないか。」
「こんにちは、オリガおばさん。」
「しばらく会わないうちに、またいい男になったんじゃないのかい?」
「しばらくって、一昨日会いましたよ。」
「はははっ!これくらいの男の子は、日に日に顔つきが変わっていくものだからね。」
まるで死んだ息子の変わりに、僕の成長を楽しみにしているようだった。
そんなパン屋のオリガおばさんと、サーシャを後にして、僕はまた見周りを始めた。
「おっ!ナウム!」
「イリヤ。」
手を挙げたイリヤの傍に、僕は自転車を止めた。
「今日はどこまで?」
「灯台までさ。」
イリヤは、戦争で片足を失くしていたが、器用な腕を生かして、修理屋を生業にしていた。
「気をつけて。」
「ナウムも。」
そして僕はまた、自転車を走らせた。
「ナウム!」
理容師の、サマドと会う。
「やあ!今日の客足はどう?」
「いつも通りさ。髪はみんな一律に伸びるからな。」
そして、また自転車を走らせる。
「あっ、ナウム!」
「今日も綺麗だね、踊り子さん達。」
「やだぁ、ナウムったら!」
観光客相手に踊るダンサー達にも、声を掛ける。
僕はこうして、自転車で街を見回るようになってから、街中の人と、知り合いになっていったんだ。
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