アルフ・ライラ・ワ・ライラ!二人の語る作中作は西アジアの香の漂うおとぎ話ともちょっと違った物語。砂漠の夜、ミナレットと玉ねぎ屋根のモスク、スルタンとマハラジャ……その風景が浮かび上がってきて恍惚。それを語らう二人もまた物語の世界の住人で、作品は入れ子構造になっていて、ラシードが出会った女はいったい何だったのかとラストは一瞬彼と一緒にしばし呆然とします。すべてはきっと砂嵐の見せた幻影です。おそらく彼の旅はこれからも何事もなかったかのように続いていくのでしょう。