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《ちゅうに探偵 赤名メイ②′》


俺たちが呼ばれて藤堂警部に付いて行った先は、とある路地だった。大通りから一本入ったところで昼でも人通りが少なく、上を見上げれば街灯も少なく、恐らく夜になると大した明るさではないだろう。


「一体どうしたんですか?こんなところで・・・おっ?」


ジャスティスこと白井は、あちこち見渡した。地面にも目をやり、何かを見付けてニヤリと笑っていた。


「赤名なら、君たちを派遣してくれると思っていたよ。まったく、仕事があるには良いが、こんな事件じゃなくても良いだろうに・・・」


「何があったんですか?」


俺が問いかけると、藤堂警部は手書きの紙を渡してきた。恐らく捜査資料だ。


「連続通り魔だ」


通り魔・・・!?


「それを捕まえるのは、警察の仕事なのでは?」


明らかなジャスティスこと白井の正論に、藤堂警部はタバコに火を点け、フゥー・・・、と長く煙を吐いた。


「証拠も手掛かりも掴めぬまま3夜連続で起きているんだよ。ちなみにここは最初の現場だ」


なるほどね・・・。それで俺たちを呼んだって訳か。ってあれ、これって、俺たち期待されてる・・・?


俺がそんな事を思っていると、手書きの捜査資料を見ていたジャスティスこと白井は口を開いた。


「被害者3人に共通点は今のところなし、凶器は毎回現場に落ちているレンガやコンクリートブロックなどによるもので、犯行は物陰からいきなり現れ頭部を殴打。犯人は大きめのマスクとフードを被っていて誰も素顔を見ていない。後ろから殴られた者もいる。いずれも死人は出ていないが3人とも怪我を負わされている、か・・・」


ふむ・・・。物陰から現れて殴られたんじゃ犯人を見ていないのは当たり前か。


「被害者一人一人に当たってみませんか?何か分かるかも」


「いや、それは警察が既にやっているだろう。僕たちがやる事は、それ以外で犯人を特定する証拠を探すことだよ」


鑑識官の方でも見付けられなかった物を見付けるのか・・・。これは骨が折れそうだな。


「ん、何か勘違いしてるよね?」


「え?」


「僕たちの長所ってなーんだ?」


「え、目が良いことと、耳が良いこと・・・ですよね?」


「分かってるんなら、そういう こ・と」


男の俺にも甘い言い草で、思わず惚れてしまいそうな白井。一瞬訳がわからなかったが、少し考えると理解できた。


「なるほど。それを活かして捜査しろ、という事ですね」


「正解!じゃ、それが分かったところで僕はコレを警察に提出してくるから、君も頼むよ、ブルーマウンテン?」


と、ジャスティスこと白井は手に何かを持って歩いて行ってしまった。


「・・・また俺1人かよぉ・・・」


俺は最初に捜査を任された時、ブラックサンダーこと黒柳が自分を置いてどこかへ行ってしまった事を思い出してしまった。あの時は無責任にも程があると思っていたが、結果的に捜査に役に立つ仕事をしてくれた事には感謝していた。呆気にとられる俺の肩にポンッと手を置いた藤堂警部は、相変わらずタバコを吸っていた。


「ま、そう落ち込むな。アイツは自分のやれる事をしただけだ。お前さんも、それをして手柄をあげれば良い」


・・・そうだよな、もう子供じゃないんだし・・・。


「藤堂警部、俺を犯行現場全てに連れて行ってください!」


「あぁ、もちろんだ。じゃあ、とっとと行くか!」


藤堂が向かった先は大通りだ。


あれ、確かあそこには・・・。


「さぁ、急いで行くぞ!」


乗り込んだモノは誰がどう見てもパトカーだった。


やっぱりぃ!!


「パ、パトカーですか!?」


「おう、サイレン鳴らしていくか?」


「いや、ダメでしょ・・・」


思わずタメ口になって突っ込みながら、俺は藤堂警部が運転席に座るパトカーの助手席へと乗り込んだ。


一度乗ってみたかったんだよな〜・・・。


と車内を見渡しているうちに、パトカーは第2の現場へと向かい始めた。


《ちゅうに探偵 赤名メイ③′》へ続く。

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