番外編 王女の休日
小鳥の鳴き声が響いている。茶色い体で、くちばしが太くて短い小さな鳥の地鳴き。ポケットに入れているビスケットを欲しがり、愛想よく足元に近づいてくるこの幼気な鳥が好きだった。1人ぼっちで紅茶を飲んでいるときも、よく話し相手になってくれる。その友人の朝に私を起こしてくれる時間は、私にとってはちょっと早くて融通がきかないように思う。けれど、このぐらいの時間に起きると1日のはじまりに余裕を持てることを知っていた。
両手をついて、シーツの上でおしりを滑らせ、ベッドの上に座った。両手を頭の上で組んでぐっと背中を伸ばし、腕を上に突き上げた。冷たい空気を、お腹が膨らむまで吸い込んだ。
「んんっーーー。はーっ」
今度はお腹がへこむまで、空気を吐き出した。眠気も一緒に吐き出せるように、ちょっと大きな声を出しながら息を吐いた。今日も寝るまで頑張れ、私。そう心の中で魔法を唱えた。
違う。いつもの朝じゃない。
起きる場所が違う。寝ているベッドが違う。
小さいときの夢を見ていたからか、迷子になった気分だった。おかげで見知らぬこの部屋が蕭然としたものに思えた。
幼い私が迷子になったときがあった。たしかアンジェルクの街で父親に同行していたときに暇を持て余した私は建物の探検に出た。中庭を走り回り、秘密の抜け穴を見つけてしまった。壁にぽっかり穴があいていた。小さい私の身体なら、入れちゃうぐらいに。その中に入ると、広い広い世界が待っていた。広い世界を歩くのに私は小さすぎた。好奇心と勇気を武器に、私は広い世界に出たけれど、その広さと大きさに襲われて不安になった私は路地でうずくまり歩けなくなってしまった。それに雨が降って、私は寂しくて、こわくて、どうしていいかわからなくて泣いていた。泣いても泣いてもどうしようもなくて、わからなくて、また泣いた。そんなとき、白いワンピースを来た天使みたいなお姉ちゃんが私に声を掛けてくれた。なんていってくれたんだっけ。そうだ。すごく困ったように言ってくれた言葉を思い出した。
「すみません、大丈夫ですか?」
子供で言葉が通じないとでも思われたのかもしれない。それでも声を掛けてくれたのはその端麗なお姉ちゃんだけだった。そのときも涙がでた。随喜の涙だった。
そのお姉ちゃんは魔法使いのように私の気持ちをわかってくれた。私が手を伸ばしたら手を取ってくれて、怖くないよって抱っこしてくれて、言ってもないのに元いた場所に帰してくれた。
それが私の最初で最後の冒険だった。
いや、ちょっと違った。最後の冒険は、いまも冒険中だ。
知らない外国の人と付き添いも無く、あてもない旅をしている。黒髪で黒目の男は、私の事を知らない。だからこそ気兼ねなく居られるし、好きな事を言える。はしたないことだって言い合える。どれだけその男をバカにしても、そいつだけは必ず言い返してくる。だから、バカにされたら必ず言い返す。そんな関係がはじめてで、どうしようもなく楽しかった。
それでも浮かれすぎたと思う。
まだ夢心地だった頭が急に現実を思い出す。
本当に、浮かれすぎた。でも、はじめて青春を謳歌している実感がある。
そうだ。急に体調が悪くなって、昨日は一日中ずっと寝こんでいた。夜は泊まっている宿のひとに野菜のスープとそのなかに浸して柔らかくなったパンを食べた。朝と昼を兼ねた食事は、はちみつとチーズのトースト。トーストの上にチーズがのったパンに、はちみつをいっぱいかけて食べるのが好きだった。チーズが溶けていたら、さらに幸せになる。けれど、昨日のは記憶に残らない味だった。
私は弱っていた。そう、きっとそう。熱に浮かされて弱っていた。そこを付け込まれただけよ。
そうして自分を弁護するけれど、なぜだか顔がポッポと熱くなる。とくに唇が熱い。事故はカウントしない自分ルールだと、昨日はじめて男の子と唇を合わせた。はちみつの味がした。しかも、溶けたチーズよりもふにゃふにゃになっちゃいそうで、それでもそれをもう一度味わいたくて、自分から2度目のキスをした。胸がどきどきして体が溶けるかと思った。理性が溶けた男の子を相手に、なんて冒険をしたんだろう。それこそ、熱に浮かされたように、襲われるかもしれなかったのに。
ボスンと音を立てて顔から火を噴いたかもしれない。白いシーツにくるまれた枕に顔をつけた。
「うーーーーーーーっ。あああーーーっっ!?」
嫌悪感と恥ずかしさと吐息すら熱くなるほど火照った体の熱を吐き出そうとした。それでもボーッとしてしまうほど、胸が熱を帯びていた。
うざい男のへらへらして鼻のしたを伸ばす顔が脳裏に焼き付いていて、熱さが怒りに変わりそうだった。
冒険者さんたちが集まるギルドの受付にいる女の子。目を引くはっきりとしたピンクの綺麗な髪を白いリボンでまとめた髪型の、発色の良い赤い唇が魅力的で、女性らしいふくよかな胸を見せつけている艶美な女の子にはへらへらと誑かされ、色香に惑っている姿を見せた。それに、2日前の夕食のときもだ。明るく燃えるような赤い髪を肩口まで伸ばしていて、耳に薔薇色の赤い宝石のイヤリングをしている華麗な女の冒険者さんには、年上のお姉さんの雰囲気に酔い、あまつさえキスをねだっていた。
それにもう1人。とても自分では敵わない女性がいる。星の海のように明るく煌めく銀の長い髪を腰まで流し、目元が涼しく思わず息を飲んでしまうほどの麗人。強い意志を持った瞳はずっと自分の主を追い、耳と笑みと尻尾を振って、自然に喜びを表現する姿はかわいらしくも美しい。それに、とんでもない身体能力を有している流麗な獣人だった。
2日前の事件だ。私は暗い洞窟のなかで、光を見た。全身が深い朱色の鱗に覆われたドラゴンが、大きな体を煌々と、明るい赤に光らせるほどの炎を口から吐き出すのを見た。そのすぐ後に、炎の海を正面から突っ切り、龍の鱗と肉を易々と素手で切り裂き、心臓を抜き取る獣人の妙義を見ている。悪魔に魅了されてしまったかと思うぐらい見惚れた。実際は、お互いに「えっ?」って声をあげちゃうぐらいビックリしたシーンだったけれど、そのとき息が止まったのを覚えている。心臓が止まってこのまま死ぬんじゃないかと思うぐらい、息ができなかった。次に心臓が動いたときには、彗星のごとく現れた白銀の英雄に、心が揺らされ高鳴っていた。
いろんな意味で、敵わないな。だから、あいつはいまもレインさんと……。
やめよう、他人の事情に首を突っ込むのは。それでも、あいつは言う必要なんてこれっぽっちもないのに、私に理由を全部説明していった。聞いていたとき、心の中で「へんなやつ」と10回は唱えていた。すこしだけ恥ずかしくて、それよりちょっと悔しかったんだと思う。
「自信、なくすわね」
下を向いて体の凹凸を確かめた。メリハリはあるけれど、すこし足りないかなと思った。おしりはドレスを脱ぐときによく引っかかるから、小さいこともないと思うけれど。
やめよう。他人と比較しても意味なんてない。
さっきから何度もやめようと思っても思考がループする。やめよう、やめようと思えば思うほど深みにはまっていく気がする。底なし沼に落ちていくみたいに。
ドン、ドン、ドンッ。
強い力で扉がノックされた。
「きゃっ。は、はいっ」
思わず悲鳴をあげたけど、すぐに整えて返事をした。考えも無い行動だったけれど、シーツを胸元まで持ち上げて、体を隠している。びっくりしすぎだ。しっかりしろ、私。
「エクレアさーん、ちょっと入れてーっ。おみず、ほしい」
喉が渇いているのか、いつもよりちょっとハスキーな声だった。
砂漠を歩いてきた商人のようなセリフに、思わず口元を押さえた。枕もとの机の上に置かれている水差しから、水をグラスに注ぐ。お水を両手で抱えながら、扉に備え付けてある鉄の棒を差し込むタイプのカギを外した。
そっと音を立てて、扉が開いた。
「どうしたのよ?具合が悪そうよ」
銀髪はしっとりと水分を含み、顔や額に張り付いている。尻尾の毛も濡れていて、ところどころ逆立っていた。
銀狼の獣人さんは、眠そうな目を両手でこすりながら、そろりと部屋に入って来た。
グラスを渡すと、レインさんは両手で受け取って口いっぱいに水を含み、喉から音を立てて一息で飲み干した。
「干からびて死んじゃうかと思った」
そう言うとレインさんは急に腰から力が抜けたように足から崩れ落ちた。ちょうど、私に寄りかかって来るように倒れ込んだ。
「わぁっ。エクレアさん、ごめぇーん」
活気の無い尻尾と耳をするレインさんを受け止めた。私より背の高い彼女を、私が支えるにはちょっと役不足だった。よろよろと支えになりながら引っ張って、一緒にベッドに倒れ込んだ。
レインさんの顔がすぐ近くにある。押し倒されたような恰好になった。私の腕がレインさんの胸に当たっている。みずみずしくてハリのある、すべすべした肌の感触が伝わって来た。
「はぁ……エクレアさんの臭い好きー」
「もう、レインさんったら。大丈夫?」
「だめー、もうちょっとこうしてる。レインでいーよ。好きな人には名前で呼んでほしい。知らないひとにはテキトーに名前教えちゃうけど」
私は適当な名前?と聞いた。場合によっては、フェンリルとか名乗るときがあるのかもしれない。
「ファーストとか。天界にいたころの序列が1位だったから、ファーストで通ってた。戦争のときの戦績で決まる序列だから、誇れるものじゃないのにね」
おとぎ話に出てくるような伝説の神殺しは、私の髪に鼻をくっつけて、強く息を吸っていた。甘えてるんだと思うと、忌避感は無かった。そっと、澄明な空に浮かぶ月の光のように輝く髪を撫でた。レインを月に例えるのは、もしかしたら好ましくない美名かもしれないと思った。くすぐったそうに、銀色の耳が動いた。私の足に当たっているイタズラっ子な尻尾が、足の裏をくすぐって来た。私がくすぐったそうに体を動かすと、獲物を見つけた狼は尻尾で私の足を追いかけてきた。それがわざとだと気づくと笑い声を上げながら、尻尾を足で捕まえてやろうと反撃した。私の足を避けるイタズラなふさふさした尾は、意志を持って今度はおへその横をくすぐってくる。たまらず口から高い声が漏れた。私の上に覆いかぶさる獣人は意地悪そうに笑っていて、くすぐるのをやめてくれなかった。
「くすっ、うふふっ。もうっ、あはっ、ごめんなさい参りました」
「わふふっ」
笑い声が遠ざかる。覆いかぶさっていた重さが無くなった。ベッドの上に2人が並んで、仰向けになって転がっていた。隣人の横顔を見た。朝起きて一番最初にこの光景を見る事ができるひとは、きっと幸せだ。そう思えるぐらい端正な横顔があった。
隣人は何を思い出したのか。憂うように右の腕を上げて、目を覆い隠すように顔に置いた。泣くような仕草だった。白くて長い指が力無く顔を隠すように垂れ下がっていた。
「ご主人、泣いてたなぁ。俺はお前に救われてるって、どんな意味なんだろう。あたしのほうがご主人にいっぱい、いっぱい助けられてるのに。うぅー、はぁーッ」
こんな綺麗で心が純粋なひとを悩ませる男に怒りが湧きそうだった。
ちょうど良い機会だと気づいた。レインと一緒に、街中に買い物に行きたい。悩める乙女は気分転換になる。私も胸中の情意を整理できて、ついでに洋服の買い物までできる。
私は提案を持ち掛けた。
「ねえ、レイン。気分転換に外に遊びにいかない?私、いろんな店を見に行きたいわ」
「行くーっ!!美味しいもの食べたい!」
レインが即刻元気に溢れた。ベッドが揺れるほど勢いよく体を起こし、立ち上がり、両手でバンザイをしながら行くーっと叫んでいた。私もベッドから立ち上がった。比べると頭1つ分ぐらいの身長差がある。レインが私の肩に抱き着いてきた。姉妹の様には見えないだろうけれど、姉妹のように仲睦まじく、私たちは出かけた。
街の中心にある噴水についた。貿易が盛んなアンジェルクの街中は荷台を引く馬車が多い。うっかり舗装された道の真ん中を歩こうものならば、交通渋滞を起こしてしまう。そのぐらい歩きにくい街中だった。
不思議な光景が起こっていた。馬や魔物が道を譲ってくれる。馬車を操る御者がいくら馬に言うことを聞かせようとしても、馬が動かなかった。頭を下げ、私たちが通るまで道を譲り続ける。通り過ぎると何事もなかったように走り出した。
それが2度、3度を続いた。偶然とは思えない。動物や魔物のほうが、よっぽど勘が良いのだ。銀髪を揺らしながら歩く女性は、馬が停まるたびに優し気に笑みを投げかける。馬が誉れとばかりに声を上げていた。柔らかい笑みは、馬や魔物だけではなく、御者までも虜にしていた。
その様子を見た冒険者の風格をした若い男性の2人組が足を止めた。視線を交互に私たち2人にやるのがわかった。遠慮のない視線がまとわりついた。けれど、それを気にする私たちじゃなかった。奇異の目でみられることも、好奇の目に晒されることなんて日常の1部でしかなかった。気にしていたら頭の上にプリンセスティアラなんて、載せられはしない。
となりで欠伸を噛み殺しながら赤い瞳を涙で濡らす獣人さんは、他人に見られることをどうでも良いと思う節があると感じていた。けれど、ときどき髪を触りながら自然に後ろを振り向いたり、目だけを辺りに走らせているような雰囲気を感じ取った。なんでだろうと思っていたら、見つめていた横顔がのぞき込むように私の目を見つめてきた。
「ガウッ。食べないよー、安心して。あたし元々傭兵とかボディガードとかやってたから、そこらへんのスキル思い出してるの。変なひとに追跡かけられてないかなーとか、不自然な奴いないかなーとか見ながら歩くのがクセなんだ。そのうち、住み込みで家事してたときとか、ブッチャーしてた経験も思い出さなきゃなー」
ツンと尖った形の良い顎のラインを、伸ばした人差し指で触り、恥ずかしそうに言う。
私といるときに笑いながらも目を光らせる様子が、白翼の騎士団の団長を務める女性と重なった。一緒にいるときの距離感の近さが自然体そのもののレインとは反対な気がするけれど、小さいころから騎士を目指していた姿を知っている彼女にも信頼を置いていた。
エンジェル・ストリートについた。アンジェルクはもともと天使のいる街と名がつけられている。古くは天使様がつくったと言い伝えられているからだけれど、ずっと前のお話だ。そのお話にあやかってか、アンジェルクの買い物スポットはエンジェル・ストリートと呼ばれている通りに沿っている。道を挟んだ左右が様々なお店に囲まれた道だ。白い石造りの似たような建物がびっしりと並んでいる。1つ1つのお店の前を、ゆっくり横切り、雰囲気が気に入ったらお店に入って、商品を手に取る。そんなショッピングをずっとしたかった。
自分の心になにが欲しい?って聞いてみた。鏡のように正直な私の心は「洋服が欲しい。ドレスじゃない洋服が欲しい」と言っていた。
普段は好んでAラインのドレスを着ている。肩から足元に向かっていくにつれてシルエットが広くなるスタイルのドレス。プリンセスドレスほど動きにくいわけじゃ無くて、お尻のラインが目立つことも無いから、とっても重宝している。けれど、それ以外の選択肢はあまり持っていなかった。私生活も宮殿の中で過ごし、プライベートな居住空間から廊下一本でつながる隣の棟へ行くと私は王女で居なければならない。社交界にいくのもドレス、宮殿内での生活もドレス、私室では唯一ルームウェア。私室の使い道は寝るのが主な使い道。プライベートな、誰に見られても気にしなくて良い魔法の時間がずっと欲しかった。そこを私の居場所にしたいと思っていた。私は今が楽しくて仕方がない。クローゼットどころか広いドレスルームが色とりどりのドレスで埋め尽くされているのは、もうこりごりよ。
レインに頼んで、まずはエンジェル・ストリートを端から端まで練り歩いた。気に入ったお店を見つけては記憶する。端まで到着したとき、私の記憶するお店の数は5つになっていた。
気が付いたら、私はレインの腕を引いて走り出していた。自分でもびっくりした。これではまるで、ふつうの少女のようだ。
足取りは軽い。心も軽く晴れ晴れしている。こんな気持ちになるきっかけをくれたのは間違いない。黒髪の変な男だった。その点だけは感謝してもいいかなって思うけれど、素直じゃない私は決して伝えることはないんだとも思う。
1件目のお店で、唐突に黒いスカートが目に入った。アサガオみたいに広がった形をした優雅なスカートだった。なんでだろう。さっきまで黒髪の男を心に浮かべていたことが関係あるんだろうか。これが欲しいと思っていた。これを着た私を、黒髪の男は何て言うだろう。そこまで考えて、気づきもしない可能性のほうが高いなと思った。
ため息をついた。
最近、気が付いたら心の中の住民が増えている。図々しく私の心に入って来た住民には心当たりしかない。鬱陶しくて、うるさくて、バカなことばっかり言って、しかもエッチで、そのくせチェリーボーイな冴えない彼だ。レインと一緒にいるだけのラッキーボーイだ。思い浮かべて1つも良いところが無い。たった1つだけ褒めるところを、必死に、頑張って探して見つけた。一緒に居てすごく安心する。
「わフフッ、エクレアさんどうしたの?ずっとその黒いの見つめて喜んだり、怒ったり忙しそう。お店の人、どうすればいいのか困ってるよ?」
そういわれて気が付いた。きっと私は今笑ってた。なんで笑っていたかはわからないけれど、笑っていた。
気のゆるみが恥ずかしさになって、顔に熱を持つのが自分でもわかった。私は下を向きながら口元を押さえながら言った。
「あのっ、そ、その黒いスカート、ください」
笑っているレインさんが、私の頭を撫でながら隣を通った。
油断したと心の中で20回は唱えた。恥ずかしいことなんて何もないのに、なぜか恥ずかしさで心がいっぱいになる。怒って心が制御できないことはあったけれど、それ以外の理由で惑わされるのは初めてだった。これって、きっと……。
「はいっ、エクレアさん」
「は、はいっ。あら、ごめんなさいレイン」
レインがお金を払って買った商品を私にくれた。
「んーんっ。ご主人からお金貰ってたから、ご主人からプレゼントだよ。しまった。これ言っちゃいけないんだった」
不思議とまた足取りが軽くなった。自分の財布を傷めずにお買い物できるって、なんて心浮くプレゼントだろうと思うことにした。
また借りができちゃった。なにで返そうかな。そう思いながら、私はレインを連れまわし、借りを作り続けることになった。黒いスカートに合うような、白いパールのボタンがついた清楚なブラウス。シルクの青いスカーフ。それに膝上まである長いソックスと、ついでに青色で銀の模様が入った品のある下着を買った。
気が付いたら夕方になっていて、両手に荷物を抱えてくれているレインと私はご飯を食べに宿に帰った。
ようやくひとつわかったことがある。
私は、旅を共にする2人の友人のことを、大好きになってしまったらしい。
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