第17話

扉をノックする余裕なんてなかった。

一気にドアノブを下ろして肩で扉を開けて、勢いよく借りている部屋に滑り込んだ。

ベットの上にはレインがいた。シーツを腰までかけて、半身になって寝ている。

シーツの上からでもわかる。腰からお尻にかけての滑らかなラインが美しい。シーツの端からは、雪のように白く肉付きの良いふとももが見えていた。

レインの背中が美しい。真っ白で肩甲骨が透けるように浮き出ており、銀の髪が綺麗な絹糸のようにかかっている。

レインの耳が動き、尻尾が力無く揺れた。

僕が来たことに気が付いたんだろう。

僕はTシャツを脱ぎ捨てた。戦わずして勝つという文字のTシャツが床に落ちた。たまには、戦ってやる。城攻めだ。

ベットの上でぐったりしているレインに近づいた。

僕はベットの上に乗った。

鳥の羽でできているベットのマットが沈んだ。

ぴったりとくっつくようにレインの背中に身体を寄せた。

「ごしゅ、じん? どうしたの?」

「もう、我慢しなくていいぞ。レインを縛っている鎖は俺が引きちぎるし、呪いは俺が治めてやる」

レインは体の向きを変えた。ベットの上で僕はレインと向き合った。

「ご主人?あたし、もう我慢しなくていいの? ……つらいよ、もう我慢したくない」

「辛いときは辛い。困ったときは困った。レインが大変なときは俺が助ける。だから、言ってくれ。俺はレインの主人なんだから。言ってくれないとバカな真似して素直になれる距離まで寄り添ってやる。ちなみに、俺もいま発情してる。Sランクの発情。とてもつらい」

「なんでご主人まで!?あたしの影響!?」

レインは目に涙を貯めながら、僕を気遣った。

「自分で発情かけてきた。レインが素直になんないから」

「だって、あたし……どうしたらいいか、わかんなくて。ご主人が欲しくて、欲しくて……好きなの。ご主人のことしか、考えられないの」

とろけた目で、泣きながらレインがそう言う。僕の首にレインはキスしてきた。やわらかくて温かい舌が僕をなぞる。

ぞくぞくとした。

「んはっむ、っちゅ……すき、ちゅむっ、んっ」

レインの口から吐息が漏れる。敏感になった肌はそれらを快楽として受け止めていた。

俺の身体に腕が絡みつく。すこしでも、すこしでも俺と体を近づけようとレインがぎゅっと体を押し付ける。やわかい胸の感触が心地良い。足も絡み合わせた。

「恰好いいご主人が好き。甘やかしてくれるご主人が好き。優しい匂いのご主人が好き。低くてよく響くご主人の声が好き。欲しい言葉をくれるご主人が好き。大事にしてくれるご主人が好き。こんな気持ち、はじめてで、どうしたら良いかわかんないの。すき、すき、すきぃ」

さきに我慢できなくなったのは俺のほうだった。

レインの肩を抱いて、体制を入れ替えた。

両手を重ね合い、俺はレインに覆いかぶさった。そのまま鼻と鼻を合わせる。

「切ないな、レイン」

「切ないね、ごしゅじん」

僕たちはキスをした。唇を割られて、自然に舌が口の中に侵入してくる。レインの温かい舌が俺の舌を絡め、口の外へと引き出した。

頭の中に直接水音が響いているようだった。

口を離した僕とレインの間に、光の糸が結ばれた。

「気持ちいいね、ごしゅじん」

「気持ちいいな、レイン」

僕たちはまた、キスをした。

感覚も考えも感じ方も、1つになりたいと相手を求めていた。

「レイン、ごめん俺限界」

「うん、いいよ。一緒に、もっと気持ちよくなろう。だいしゅき、ごしゅじん」

俺とレインは発情が解けるまで、お互いに依存しあった。

Sランクの発情が解けても、僕とレインは理性が溶けたように狂った。

僕が次に冷静になるのは2日後の朝だった。

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